と、玄関先におじさんの影が2つ。
おじさんたち:こんにちは!ひとつ、萬歳はいかがですか?
おばあちゃんは困ったような顔をしましたが、それはほんの一瞬のことですぐにニコニコ顔に戻り、こたつから出て、玄関の上がり框にお座りをしました。
おじさんたちは変な格好をしています。
チエちゃんは、前にテレビで見た越後獅子の人が着るような衣装だと思いました。なぜなら、おじさんの一人が大きな獅子頭を抱えていたからです。もう一人は大黒様のような帽子を被り鼓太鼓を持っています。
チエちゃんは興味津々でおばあちゃんの隣に正座しました。
すると、おじさんたちは鼓をたたいて口上を述べ(何をいっているのか幼いチエちゃんには理解できなかった)、獅子頭を被ったおじさんが踊り始めたのです。
びっくりして見ていると、お獅子がおばあちゃんの頭に噛みついたのです。
おばあちゃんは自分から頭を差し出したように見えました。
お獅子が離れた後のおばあちゃんはニコニコしています。
それから、お獅子はチエちゃんめがけて襲ってくるではありませんか!
チエちゃんは怖くなって、おばあちゃんにしがみ付き、とうとう泣き出してしまいました。
お獅子はチエちゃんの頭をかじるマネだけをして、おじさんが顔を出しました。
おじさん:泣かせちゃって、ごめんなさいね。
おばあちゃん:チエ、お獅子に頭を噛んでもらうといいことがあるんだよ。
なあんだ、そうなのか。でも、やっぱり怖いものは怖い。
いつの間にか、上がり框には山盛りのお米を乗せたお盆が置いてありました。
お母さんが用意したものでしょう。
おじさんたちは、袋にお米を入れると立ち去っていきました。
このおじさんたちは、萬歳師と呼ばれる角付け芸人です。
お正月に家々を巡り、新年を言祝ぐ口上を述べ、金銭やお米をもらっていくという職業でした。おそらく、普段は別の仕事をしていて、この時期だけ萬歳をやっていたと思います。
チエちゃん家には小正月から節分あたりに来ていたように思います。
まあ、体のいい物もらいですから、一瞬おばあちゃんが困った顔をしたのも解りますね。(自分で言うのもなんだけど、子どもってよく見ているものです)でも、縁起物でもあるので、無下に断ることもできなかったということでしょう。
このおじさんたちが来ていたのは昭和40年頃までだったように記憶しています。今では無くなってしまった職業ですね。
チエちゃんのお話しが書けてよかった~😄
イメージが湧かない方はこちらをご覧ください→萬歳-Wikipedia
やっぱり頭にかぷってやってました。
公民館の押し入れに今もお獅子は居りますが、もう何十年も出番が無くなって久しいですな。
今はたくさん楽しめるものがありますからね。
獅子舞も、最近ではお目にかかってないです。
いつもコメントありがとうございます。