ワースト記録を更新したレースだったが、いつもと異なる感慨があった。設定ペースを維持出来たのは、10㎞までで(40分/5㎞に対し、39分29秒、39分50秒)、その後、徐々にペースダウンし、25㎞地点で、5㎞のラップが42分30秒かかった時、「途中棄権」の四文字が頭をかすめた。
「ここで止めたら楽になれる」、「どうしてそんなに無理をするんだ」と、悪魔がささやいた。一旦、弱気になると、その声が際限なく大きくなり、抗しきれなくなるのだが、いつもと違い、「耐えろ、耐えろ」と、別の声がした。
さて、マラソンの特質は「集団の中の孤独を楽しむ」ことにある。私がマラソンを好む理由でもあるが、最近、もっと高次元で考えるようになった。
人間は本来、孤独な存在で、どれだけ仲の良い夫婦であろうと、友人・グループであろうと、人生の終末は一人で乗り越えるしかない。その宿命に備えるために、老齢者は、日頃から孤独に耐える修練を積むべきで、マラソンは、その最高の機会だ。
「42.195㎞=死に行こうか」と、思わず口走ったら、新たな耐力が湧いた。決して、望むべきことではないが、ゴールしてばったり昇天したら、それも天命だと思い詰めたら、最後まで足が止まらなかった。参考までに、16,987人のエントリー者中、60歳代は1,349人、70歳以上は322人だった。