シネマ見どころ

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「テーラー 人生の仕立て屋」(2020年 ギリシャ・ドイツ・ベルギー映画)

2021年09月15日 | 映画の感想・批評


 ギリシャで父親が長年テーラーを営んできたが、時代が移り変わったのか、倒産の危機に陥ったところから、物語が始まる。更に、父親の体調も優れない中、子供の頃からスーツの仕立てを教え込まれてきた息子が、後は任してくれと意気込んだものの、全く売上が上がらない。さあどうするか・・・?
 そこで、他の人を見て思いついたのが、移動式(屋台方式)での服の販売である。が、スーツは良品質だが、高いので全く売れない。物が良いとアピールするが、ターゲットが違うので響かない。プライドもあるのか、値段を下げられない。そんな状況の中で、「ウェディングドレスは作れるの?」と聞かれ、一度は断ったものの、背に腹は代えられない状況なので、「作ります」と応えてしまったところから、転機が訪れる・・・。
 ピリッとスーツを着込んで店頭に立つが、お客さんは皆無。お店の雰囲気は、お客様一人ひとりにきめ細かく接してきた個人経営の老舗衣料店。本作では、コロナは出てこないが、現実の世界では、毎日のように、コロナで影響を受ける個人経営の飲食店をテレビで見るので、飲食店とテーラーが結びついてしまい、何とも複雑な気持ちになった。
 上映時間はかなり長くなるかもしれないが、エピソードがもう少し深堀していればもっと良かったと思う。生き残る為に店舗を飛び出す時の気持ちや、ウェディングドレスを作る為に、女性服を勉強しようとする努力、父親から「ウェディングドレスを売っているらしいな」と見下したように言われた時に反論するシーンも、もっと色々な気持ちがあったと思うので、そのシーンをじっくり観たかった。特に、仕事のパートナーとなる隣家の婦人やその家族との関係もどうなったのか気になった。
 ファーストシーンは良かった。軽快な音楽と接写が多い細かいカット割り。これぞ映画の醍醐味。さあ始まるぞーというワクワク感があった。一方、ラストシーンは、仕事が大きくなっていく夢と期待に膨らむシーンなので、ファーストシーンの勢いが欲しかった。
(kenya)

原題:Tailor
監督:ソニア・リザ・ケンターマン
脚本:ソニア・リザ・ケンターマン、トレイシー・サンダーランド
撮影:ジョージ・ミヘリスGSC
出演:ディミトリ・イメロス、タミラ・クリエバ、タナシス・パパヨルギウ、スタシス・スタムラカトス、ダフネ・ミチョプールー