先日、あるプロのシンガーからクリスマスカードとともに、
こんな本が送られてきました。
「5」という事なので、シリーズなんですね。
いろいろな賛美歌の背景や出来事から学ぶ
とても興味深い内容です。
(今まで賛美歌のルーツの本は何冊も読みましたが、
この方の本は歴史的な事のみならず、
音楽的な事にも触れていて良かったです。)
今回は、この中から有名で親しみのある
クリスマスキャロル「荒野の果てに」を紹介したいと思います。
少し長くなります。
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「荒野の果てに」は、必ずと言っていいほど
クリスマスには歌われています。
教会に行っていない方々にも、「きよしこの夜」「諸人こぞりて」と
並んで知られているクリスマスキャロルですね。
この曲の最後の繰り返しのフレーズが有名ですね。
「グローリア インエクシェルシス デオ」。
意味はわからないけど、そのまま覚えて歌っている、
という方も多いのではないでしょうか。
(かく言う私もそうでしたよ。笑)
「Gloria in excelsis Deo」これはラテン語です。
意味は「いと高きところに、栄光が神にあるように」。
クリスマス(キリスト降誕の時)に、
野原で羊の夜番をしていた羊飼いたちに、
天使の軍勢が現れて、キリスト降誕を知らせ、
このフレーズを語ったのです。
(聖書ルカの福音書には「いと高きところに栄光が、神にあるように。
地に平和が(神の)み心にかなう人々にあるように。」とあります。)
この歌の最後のフレーズが繰り返される奏法を「メリスマ法」と呼び、
長く続く旋律の高低移行の独特な歌い方だそうです。
(メリスマとは古代ギリシャ語で「歌」の意味)
メリスマ法は、睡眠にかかったような陶酔感を
聴き手に与えるものとして利用され、
グレゴリオ聖歌にも用いられたようです。
キリストの時代は、政治的には大ローマ帝国が世界を制覇しており、
イスラエルもローマ帝国の支配下にありました。
文化面では、ギリシャ、ローマの文化が栄えていました。
新約聖書はギリシャ語で書かれました。
一方ラテン語は、行政や裁判などで使われた言葉で、
公文書や裁判目録などはすべてラテン語でした。
ちなみにキリストが処刑されたとき、頭上に掲げられた罪状書きは、
ラテン語、ヘブライ語、ギリシャ語で書かれました。
後世の人々が、クリスマスを、歴史上の事実として覚える為に、
ラテン語を用いたのは、当然の事だったのですね。
この「荒野の果てに」は16世紀のフランスの歌が元になっています。
今歌われている歌詞は、1862年にジェイムズ・チャドウィックが
翻訳したもので、フランス語で歌われ、
原題は「Les Anges dans nos Campagnes」
(レ・ザンジュ・ダン・ノ・カンパーニュ)
意味は「我らが牧場(野辺)にて、天使が」。
英語では「Angels We have heard on High」
(いと高き所に聞きたり、み使いたちが)。
英語ではエドワード・シッペン・バーンズが編曲した曲が
歌われることが多かったとのことです。
日本語では、ご存じのように、
「荒野の果てに 夕陽は落ちて
妙なる調べ 天(あめ)より響く
グローリア インエクシェルシス デオ」
となっています。(1節)
もうクリスマスは過ぎてしまいましたが、
来年のクリスマスには、是非この背景や音楽的要素を覚えて、
賛美してみてくださいね。
明日は、最も有名な「きよしこの夜」を
取り上げたいと思います。
ここあでした。