谷崎潤一郎の小説「鍵」の主人公は、自分の日記に鍵を掛け、その鍵をわざと書斎に落とし、妻に見られることを望んだ。お互い騙し合いながらの愛欲は壮絶である。 仕事が終って帰宅した時、時計の針は既に午後10時半を廻っていた。いつものようにドアの鍵を開けようとすると、鍵がまわらない。慌ててドアを見ると、我が家の目印であるふくろうがない。
あの嫌がらせ男が外した挙句鍵を壊したのかと、一瞬戦慄が走る。もう一度ガチャガチャと音を立て、鍵をまわしながら表札を見た。
名前が違う。ここは我が家ではない。急いでエレベーターホールに行くと、そこは7階だった。我が家は5階である。15年ここに住んで初めての出来事は、あの仮面舞踏会のあった日の夜のことである。
以前、我が部屋の下の階のひとり住まいの女性に聞いたことがある。ある日の夜中、部屋の鍵をガチャガチャとまわす音がした。恐怖に戦慄が走ったが、じっと身を潜めながら様子を伺うと、なんと6階の家の娘さんだったという。
7階のお宅はひとり住まいではないが、果たして鍵をまわす音を聞いただろうか、はたまた僕のうしろ姿を見ただろうか?その後まだ会ってはいないが、謝るべきか、謝らざるべきか、それが鍵である。
あの嫌がらせ男が外した挙句鍵を壊したのかと、一瞬戦慄が走る。もう一度ガチャガチャと音を立て、鍵をまわしながら表札を見た。
名前が違う。ここは我が家ではない。急いでエレベーターホールに行くと、そこは7階だった。我が家は5階である。15年ここに住んで初めての出来事は、あの仮面舞踏会のあった日の夜のことである。
以前、我が部屋の下の階のひとり住まいの女性に聞いたことがある。ある日の夜中、部屋の鍵をガチャガチャとまわす音がした。恐怖に戦慄が走ったが、じっと身を潜めながら様子を伺うと、なんと6階の家の娘さんだったという。
7階のお宅はひとり住まいではないが、果たして鍵をまわす音を聞いただろうか、はたまた僕のうしろ姿を見ただろうか?その後まだ会ってはいないが、謝るべきか、謝らざるべきか、それが鍵である。