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幼なじみの想い出は
青いレモンの味がする
閉じる瞼のその裏に
幼い姿の君と僕
幼なじみの想い出は
青いレモンの味がする
閉じる瞼のその裏に
幼い姿の君と僕
東京タワーが完成したのが昭和33年12月、その年の3月に中学校を卒業した幼なじみは、僅かに昔の面影を残すものの、名前と顔が一致しない。時の流れは残酷である。
4年に1度開催されていた中学校の同窓会に出席するのは、これで2度目。前回の出席から既に20年の歳月が流れていた。前回よりも衰えた記憶の回路が頭の中を駆け巡る。時というカプセルに閉じ込められた、まぶたの裏の幼い姿の君と僕は、時間と共に再びあの頃の記憶を蘇えらせてくれた。
髪に白いものが混じる者。既に髪とも別れを告げ、更に人生の輝きを増した者。目の輝きは昔のまま、生き抜いた人生の充実さを物語る者。そこにいるのは青いレモンの味がする幼い姿の君と僕である。
皆それぞれの歴史を背負い、昔のままの愛称や、呼び名で語り合う人生の達人たち。52年前にタイムスリップした束の間のひと時は夢のよう。
次回の逢瀬を約束したものの、果たして元気でいられるやら、はたまた、名前を覚えていられるやら。幼なじみのレモンの味に、ほろ苦い別れを告げて帰途に着いた、残暑の日曜日だった。