布の彫刻家といわれる人形作家、与勇輝(あたえゆうき)氏の作品展が銀座松屋で開かれている。
氏の作品を始めて見た時からファンになり、河口湖ミューズ館・与勇輝館にも立ち寄ったことがある。今にも動き出しそうな仕草とその表情は、人形とは思えないほどリアルでかわいい。氏の作品は特別な細工もしないのに、そのまま立つことでも有名である。そんな人形に会いに今回もさっそく行ってみた。
人気の催し物であるので、並ぶことを覚悟したが、混雑はしていたものの幸い待つこともなく入場でき、更に幸運にも、購入した写真集にサインもしていただくことができた。
今回展示された作品は、新作57点に代表作あわせて110点。新作は、次第に遠のく「昭和」に悔いを残さないためにも、氏の戦争体験を基に制作したという“昭和のあのころ”の子どもたち。彼らの貧しくも逞しく生きる姿を人形に蘇らせている。
左・「夕焼け」 右・「美味しいね」
「少年野球」
「母さんは?」
左・「雪子」(映画〝ぽっぽや”で重要な役割を果たした) 右・「姥捨山」
指の先にまで心を通わせた人形をみていると、時には切なく、時には勇気を与えられる。「姥捨山」の息子のやさしくそして悲しげな顔と、年老いた母親の息子の背に廻した手が掴む上着のしわに胸が熱くなる思いだった。