歩くたんぽぽ

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ハリウッド版『GHOST IN THE SHELL』鑑賞

2017年04月10日 | 映画
数ヶ月前に、ハリウッド版『GHOST IN THE SHELL』のトレーラーが解禁され、

その数分に垣間見える実写の質の良さについて興奮気味にレポートを書いた。

端々に映る研究施設や怪しい町並みなど物語を構成するディディールにこだわり、

さらにハリウッド版であるというプライドを持ってヴィジュアルをデザインしていると感じだ。

その最たるものが芸者ロボット。

この何とも言えない怪しさは西洋から見た芸者なのか、

士郎正宗の原作でも押井守の『Ghost In The Shell』でもなく、全く新しい攻殻機動隊の一端を見た気がした。

こんなの見せられたら観に行くしかないと、公開2日目のレイトショーにいざ出陣。





ここからはネタバレになるので、純粋に映画を楽しみたい方は見ないでください。





私は押井守の『Ghost In The Shell 攻殻機動隊』と『イノセンス』がとても好きだ。

崇拝していると言っても過言ではない。

作品の完璧さも不完全さも、未だ理解したとは到底言えないその全体像を感覚的に捉え、

自分が抱く感情を制御することも言葉にすることもできずに、ただ作品の中に沈んで行く。

埋没する。



しかしどれほど好きでも、今回その大元をそこまで重要視するつもりはない。

むしろ、最も興味深かったのは「攻殻機動隊」というコンテンツを実写でいかに表現するかという点だ。

ハリウッドが全力で作った「攻殻機動隊」を観てみたかった。



ストーリー

主人公は難民ボートの事故により脳以外全ての身体を失い、全身義体化されることで命をつなぎ止めたミラ。
ミラの全身義体化は史上初の成功例であり、それを成功させたのが義体技術を開発しているハンカ・ロボティックス社だった。
彼女は人類の未来、進化においての重要な存在となり、公安9課に配属され少佐となった。

ある日、芸者ロボットがハンカ社の幹部をハックし殺すという事件が起きる。
この事件の担当となった公安9課は芸者ロボットを操り事件を起こした黒幕を追うことになった。

少佐は芸者ロボットの記憶装置にダイブし、黒幕の片鱗に接触したが、
彼は「ハンカ社と組むと危険だ」というようなメッセージを残し消えてしまう。
その後それがクゼと呼ばれるテロリストだということが判明する。
クゼの目的とは?
ハンカ社とのつながりとは?
プロジェクト2571とは?

そして事件の進行と同時に描かれる、全身義体であるがゆえの少佐の孤独と葛藤。
断片的な記憶、時たま現れるフラッシュバック、自己を自己たらしめる根拠の曖昧さに思い悩む少佐。
彼女はいったい誰なのか、それが分かる時事件の全容が見えてくる。

続きは割愛します。



感想

見終わった率直な感想は「中途半端」。

ネガティブな感想をこういう場に書くのはあまり気が進まない。

しかし、予告レポートであれだけ煽ってしまったので責任も兼ねて感想を書くことにした。

以前書いた記事「<Ghost in the Shell>ついに4月7日公開」



いくつかの目を見張るような美しい映像表現、原作にない面白い発想など、

作品を部分的に考察するといいところもたくさんある。

挑戦的な作品なわけで、よくぞ作ってくれましたという気持ちも強い。

しかしそれを踏まえても1つの映画として面白いとは言い難い。



その一番の原因は脚本、ストーリーだ。

攻殻機動隊じゃなくてもいいじゃないと言いたくなるような既視感漂う単純なストーリー。

それでいて今まで日本で作られてきた連続性がないはずのいくつもの「攻殻機動隊」が盛り込まれている。

「Ghost In The Shell」「イノセンス」「Stand Alone Complex」「S.A.C. 2nd GIG」、

それぞれが重厚な物語を有しているにもかかわらず、これらをパッチワークのようにつぎはぎしてオリジナルストーリーを作っている。

物語を構成する多くのパーツは、乱暴に組み込まれ無責任に放置されたまま終わる。

原作の中で重要な場面を、その場面を見せたいがために表面的にさらっている。

CMを観て「きっと監督は相当なGhost In The Shellファンだ」と思ったのは思い違いかもしれない。

無理矢理寄せ集めたために矛盾や隙が増え、結果リアリティの全くない映画になった。



我ながら厳しいこの感想を読んで、「そう思うのは攻殻機動隊ファンだからだよ」と思うかもしれない。

しかし、それは大きな間違えだ。

むしろ攻殻機動隊ファンだから曲がりなりにも観ることができたのだと思う。

「この場面がこういう風に使われているのか」、「クゼはこういうビジュアルなんだ」、

というように原作との違いを発見したり、実写での描き方を少なからず楽しむことができるからだ。

攻殻機動隊ファンではなく一人の映画ファンとして観る方が厳しくなってしまうこと必至。



原作ファンと大衆性どちらも大切にしたかったが、それゆえどちらにおいても中途半端になってしまったという印象を受ける。

どちらに寄るにしろ、もう少し割り切って作ってほしかった。

超が付くほどの原作ファンが原作と切り離して観るのには今作は相性が悪い。



余談だけど、今回吹き替えの声優をアニメのスタッフ陣がそのまま演じるという面白い試みをしたそうで、

これを見た人たちの評価は結構いいらしい。

私は原作と切り離してみたかったので字幕で観たけど、原作を大事にしたかったら吹き替えで観るのもありかもしれない。



なんにせよ元々のファンとしては作ってくれて感謝。

アメコミ的なザ・エンターテイメントが好きな方は面白いかもしれない。

それに美しく逞しいスカーレット・ヨハンソンは見物だ。

そういえば、発表当初懸念されていたビートたけしの荒巻は別物だけど思ったより渋くてよかった。

私の思う現実性を纏っていたのがたけしで、だからこそ少し浮いていたとも言える。



次は神山健治だ!

すでに攻殻機動隊で実績積んでいるから期待を裏切らないはず。

楽しみだ〜。

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