今朝、シェラを連れて散歩に出ようとするぼくにベッドの中から家人が叫んだ。
「ね、エサ、エサを持っていってやって!」
むろん、茂みの中のむぎネコへのエサである。
「もう、持ったよ」
ぼくのポケットには、ティッシュにくるんだエサが入っている。といっても、キャットフードではない。シェラのオヤツを一部失敬してきたものばかりである。
シェラがネコたちの中で育ったとき、シェラはネコのドライフードが大好きだった。だが、ネコのフードをイヌに食べさせてもいいものかどうか気になってお医者さんにうかがったことがある。
「ネコにイヌのフードはまずいけど……ま、いいでしょう。ただし、カロリーが高いから肥満に気をつけてください」
そのアドバイスが頭にあったが、ビスケットや小魚などのオヤツ類ならイヌ用と問題あるまいと思い、持ち出した。
朝の茂みの中にはむぎネコの気配さえない。チチチチ…と舌を鳴らしてみたが茂みの中は静まり返ったままである。そりゃそうだ、朝の6時過ぎである。あちこちにイヌの散歩をしている人の姿が目立つ。茂みの縁にはわんこの真新しいオシッコの痕跡も少なくない。
道を行き交うイヌや人の姿に、むぎネコは茂みの中で気配を消し、息を潜めているのだろう。事情はきのうの朝も同じだったわけである。
人の行き来が空白になったところで、ぼくは手早くティッシュの包みからエサを取り出し、茂みの中に滑り込ませた。容器に入れている余裕はなく、地面に直接置いた。気づいてくれればいいがと思いながら、素早くその場を離れた。
家では、日常的にむぎの霊前に供えるオヤツをシェラがねだっている。むろん、最後はシェラのお腹へ収まるのだから、このところ、シェラは体重を増やしている。むぎネコへのエサも、通行人のみならず、シェラにも気づかれないようにしなくてはならないからひと苦労である。
一時間後、会社へ向かいながら茂みの下をのぞくとエサはきれになくなっていた。
問題は昼前から降り出した雨をどこでどうやってしのいでいるかである。いま、この小文を会社の外のコーヒーショップで書いている。
家に戻れば、むぎネコをどうするかを決めて実行に移さなくてはならない。なかなか苦労な週末が待っている。
ふと、気づくと、むぎへの哀しみをあのネコが相殺してくれていた今週だった。
「ね、エサ、エサを持っていってやって!」
むろん、茂みの中のむぎネコへのエサである。
「もう、持ったよ」
ぼくのポケットには、ティッシュにくるんだエサが入っている。といっても、キャットフードではない。シェラのオヤツを一部失敬してきたものばかりである。
シェラがネコたちの中で育ったとき、シェラはネコのドライフードが大好きだった。だが、ネコのフードをイヌに食べさせてもいいものかどうか気になってお医者さんにうかがったことがある。
「ネコにイヌのフードはまずいけど……ま、いいでしょう。ただし、カロリーが高いから肥満に気をつけてください」
そのアドバイスが頭にあったが、ビスケットや小魚などのオヤツ類ならイヌ用と問題あるまいと思い、持ち出した。
朝の茂みの中にはむぎネコの気配さえない。チチチチ…と舌を鳴らしてみたが茂みの中は静まり返ったままである。そりゃそうだ、朝の6時過ぎである。あちこちにイヌの散歩をしている人の姿が目立つ。茂みの縁にはわんこの真新しいオシッコの痕跡も少なくない。
道を行き交うイヌや人の姿に、むぎネコは茂みの中で気配を消し、息を潜めているのだろう。事情はきのうの朝も同じだったわけである。
人の行き来が空白になったところで、ぼくは手早くティッシュの包みからエサを取り出し、茂みの中に滑り込ませた。容器に入れている余裕はなく、地面に直接置いた。気づいてくれればいいがと思いながら、素早くその場を離れた。
家では、日常的にむぎの霊前に供えるオヤツをシェラがねだっている。むろん、最後はシェラのお腹へ収まるのだから、このところ、シェラは体重を増やしている。むぎネコへのエサも、通行人のみならず、シェラにも気づかれないようにしなくてはならないからひと苦労である。
一時間後、会社へ向かいながら茂みの下をのぞくとエサはきれになくなっていた。
問題は昼前から降り出した雨をどこでどうやってしのいでいるかである。いま、この小文を会社の外のコーヒーショップで書いている。
家に戻れば、むぎネコをどうするかを決めて実行に移さなくてはならない。なかなか苦労な週末が待っている。
ふと、気づくと、むぎへの哀しみをあのネコが相殺してくれていた今週だった。