もう悲しむまい、嘆くまい、悔やむまい。
この二か月、存分に悲しみ、嘆き、悔やんできた。
いつまでも続けていてはむぎが迷うだけだ。
悲しくなったら、楽しかった日々に想いを馳せよう。
嘆きたくなったら、可愛かったむぎの姿を瞼の裏に描こう。
悔やんでばかりいないでこの世で出逢えた幸運に感謝していこうと思う。
明日、ぼくたちは短い旅行に出かける。どこへ行こうかまだ決まっていない。むぎとの思い出が詰まった場所へ行きたいとの思いと、まだむぎのビジョンを感じるのは辛いから、はじめての場所を目指そうかとの思いが錯綜して決めかねている。
それでも気持ちはいつもむぎと一緒だ。
いずれむぎとシェラの思い出だけを糧にして生きていかなくてはならない時期がくる。それはそう遠くない。
寂しさに慣れておかなくてはならない。悲しさを振り払うすべを覚えておかなくてはならない。
やがて自分が不帰の旅に発つとき、「あの子たちが待っていてくれる」と思い、心安らかに行けるだろう。
待っていてくれ、いま行くからな――やがて旅発つ最期の瞬間、そう思ってぼくは逝く。