彼が死んだのはボクが高校1年生の時。
演劇部の同級生が興奮して校内放送で叫んでいた。
「ミシマが死んだ!」と。
その前年に行われた三島由紀夫と東大全共闘との討論「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」を観に行った。
あんな時代もあったんだ・・・懐かしく観た。
ボクは政治とは遠いところにいたノンポリ高校生だったが、クラスには必ず1人や2人はいたものだ。
数歳上の大学生たちが叫ぶ言葉に感化され、熱く政治を語る連中が。
三島由紀夫は心底優しく後輩たちと語り合う。
時にユーモアを交え、息巻く若者たちを諭すように。
さりげなく飛び出す、モーリヤックやサルトルの話が面白い。
アングラ演劇に身を投じた芥正彦が、学生結婚して作った子供を抱えて三島に挑む姿が圧倒的に印象的だった。
彼らの議論は高尚すぎて耳だけではついていけない。
とことん頭の良いやつはいるもんだ。
東大以上の大学は日本にはないから、頭の良いやつは天井知らずで頭が良い。
あの理解力、語彙力は凄い。
凡庸なボクは帰りに本屋でこの討論を書き起こした文庫本を買った。
この国を牛耳る厚顔無恥な為政者たちを呪いながら、ガラス越しの陽射しの中でおさらいするつもりである。