中棚荘は懐古園の隣、というより、懐古園から千曲川へと落ちる崖に張り付くように立っています。
なので、宿の建物は斜面に沿って横に長く広がっています。
千曲川旅情の歌「千曲川いざよふ波の 岸近き宿にのぼりつ 濁(にご)り酒濁れる飲みて 草枕しばし慰む」の岸近き宿とはこの宿のことです。
正面玄関の前には。ヤギがいます。
まずはレトロな感じのロビーでチェックイン。
宿泊客には小さい子供連れや、祖父母と家族旅行、といったグループが結構います。
今回予約したのは平成館一階の和洋室です。
平成館は一階に内湯付の和洋室が二部屋、二階に和室が四部屋ある建物が、斜面沿いに三棟あります。
斜面沿いに横に並んでいるため、ロビーからは長い廊下を通っていかなければなりません。
しかも高さも異なるため、途中の段差も大きいです。
今回は雲という部屋でした。
崖の中腹に建っていますが、窓からは向かいの集合住宅が見えます。
これは向こうからも丸見えということで、窓の障子を開けておくことはできません。こんなにプライバシー感のない宿は初めてです。
島崎藤村が逗留したころにはこの集合住宅はなく、千曲川も見えたのでしょうが、なんとも残念なことです。
こちらがベッドルーム。
そして、この建物に限らずですが、建物は木造であまりしっかりしていないように思われます。二階の歩く音や扉の開閉の音がかなり響いてきます。
今回は二階、隣の部屋ともに静かだったので良かったですが、騒々しいグループだと落ち着いて過ごすことが出来なさそうです。
さて、大浴場は平成館へと続く長い廊下の途中にあります。
この扉を開け、長い石段を登っていきます。この階段は板塀とビニールで仕切られただけなので、今の季節でも朝晩は寒いです。真冬は相当寒いことでしょう。
大浴場の着替える場所は畳敷き、浴室との仕切りがなく、開放的な造りです。死角がないので、防犯上も良いものと思われます。
洗い場、浴槽とも狭くはありませんが、旅館のキャパを考えると、客が集中すると結構待つかもしれません。小さいながら露天風呂もついていますが、立ち上がると向かいの集合住宅から丸見えです。
お湯は無色透明でわずかに硫黄臭があります。一見普通のお湯のようですが、かなりとろりとした感じがあり、実際入ってみると、かなり濃厚なお湯です。昨日の「たてしな薫風」の温泉より強烈なのではないでしょうか。塩素消毒をしているようですが、消毒を全く感じないほど強いお湯です。
良いお湯ですが、温泉に弱い人はだめかもしれません。
さて、今回宿泊する部屋には内風呂がついています。木造ですが浴槽と洗い場はプラスチック製という味気ない風呂ですが、蛇口をひねると温泉が出るとのことです。
というより、この宿の大浴場の洗い場、客室の洗面所も温泉が出る仕組みになっているようで、かなり硫黄臭、というより硫化水素臭がきついです。
冷蔵庫に置かれていた冷水も温泉水のようで、においがきつく我々は飲むことができませんでした。我々は旅行中は常にペットボトルのミネラルウウォーターを携帯しているのでそちらでしのぎましたが、これは少し考えたほうが良いのではないかと思います。生活水であり、飲泉ではないので、温泉水ならなんでもありがたいわけではありません。
<その6に続く>