ホテルに戻り、チェックインします。
ところが、フロントが混雑しており、しばらく待たされることになりました。しかも、見たところ前金制のようで、余計に時間がかかっている模様です。
このホテルは238室ということですが、フロントの窓口は3個しかありません。どのようなシミュレーションをしているのかは知りませんが、満室の場合、単純にフロントの窓口一か所あたり80組の客をさばかなければなりません。
一組あたり5分としてもすべてチェックインするためにはおよそ7時間かかる計算になります。
このホテルでは時間帯によってはチェックインに時間がかかることを覚悟したほうが良いと思います。
エレベーターはカードキーがないと自分の部屋のある階にはいけなくなっており、セキュリティー面の考慮はされています。
宿泊階に行くと、一周周る廊下の両側にびっしりと部屋が並んでおり、良く詰め込んだな、という感じです。ただ、廊下やエレベーターホールは十分に広く、圧迫感はありません。エレベーターは三基あり、動きも速いので待つストレスはありませんでした。
部屋の中はこんな感じです。広くはありませんが、まあ十分です。キャリーバッグを開くと部屋の中の移動はできませんが。
特徴としては玄関があり、室内は靴を脱いでスリッパになっていること。日本人にはうれしいシステムです。玄関脇にはキャリーバッグが2個置けるスペースもあります。
水回りはいまどき驚きのユニットバスですが、大浴場があるためさほど問題ではありませんでした。その大浴場は結構広く、洗い場も多く水量も充分で快適でした。二泊する間に4回大浴場を利用しましたが、混雑していたことはありませんでした。
部屋でしばしくつろいだ後、夕食をとりに外出します。このホテルにはレストランはありません。
今日の夕食は「福松」という店を予約してあります。場所は烏丸三条の近く、衣棚通という細い路地にあります。前回、4月に来た時に店の前を通りがかり、気になっていた店ではあります。
古い町屋を改装した店内は板張りの座敷になっており、掘りごたつ式の長いカウンターがあります。客席はこのカウンターのみ16席の小さな店です。
カウンターのみなのでホール係は不要で、合理的です。カウンター内には4人いますが、みな若く、店構えは敷居が高そうに見えますが、思ったよりカジュアルな雰囲気です。
特に、ご店主が気さくに話しかけてくれるので、初めての観光客でも堅苦しくなく過ごすことができます。
この店は最初に一汁三菜のコースが出て、そのあとで好きな料理を注文するシステムになっています。
日本酒のメニューも充実しています。しかもすべて半合500円というのもうれしいところです。品揃えからみてかなり期待できると思いましたが、店によって料理との相性や味の基準は異なるので、まずはおまかせで注文します。
香りが強くなく、さっぱりしたものという注文で出てきたのは山形県の大虎という銘柄でした。
山形の日本酒はほとんど知っているつもりでしたが、大虎は知りませんでした。調べてみると寒河江の酒蔵のようで、月山トラヤワイナリーの親会社のようです。
雑味が多いように思われ、まとまりがない感じで個人的には今一つの印象でした。
さて、料理のほうですが、まず一汁三菜のうち二菜が出てきます。
おからとぶり大根。
ぶり大根は1月に氷見で食べたものが過去最高のぶり大根でしたが、それに負けていません。
やや濃い目の味付けですが、脂っこさや臭みはなく、柑橘の香りと甘さが絶妙です。
ところで、箸が長いので慣れるまで少し時間がかかります。
続いて汁物、鱧と三つ葉、わかめのお吸い物。これは少し薄味ですが、だしがすごく効いています。文句の付けどころがありません。
そして三菜目。こんなにすごい盛り合わせが出るとは思いませんでした。どれも手が込んでいて、味も抜群です。
ここまでの一汁三菜で一人1500円は破格の安さだと思います。
次の日本酒ですが、ちょっと試してみようということで、「酸の効いている」のを注文してみました。何が出てくるでしょうか。
答えは「杉勇」でした。不老泉あたりを予想したのですが、そうくるか、という感じです。
「杉勇」は山形庄内の遊佐町のお酒で、何度か飲んだことがあります。マニアックな辛口で一部熱狂的なファンのいるお酒です。
ご店主はきれいな酸、という表現をしていましたが、先ほどの日本酒よりもすっと入っていくのは、日本酒のレベルが高いからと思います。
さて、ここからは単品で注文したものになります。
まずはカツオの塩タタキ。さすがに藁焼きではありませんが、強い火力のコンロで一気に焦げ目をつけます。
ボリュームもかなりのものです。付け合わせの根わさびも効いています。
鱧とマツタケのてんぷら。
揚げ方は抜群で冷めてもおいしいです。そして、マツタケが入っているとは思えない値段です。
ここで、壁に貼ってあって、気になった「廣戸川」を注文します。
福島の日本酒ので最近頭角を現してきたようです。なかなかいい線いってると思いますが、もう少しという感じでしょうか。
ここのご店主はなかなかセールストークも上手で、話しているうちにいろいろと注文したくなってしまいます。
ということで、だし巻き卵。
湯気でレンズが曇るほどのアツアツです。これもだしが効いており、調味料なしで十分おいしいです。
一品の量が多いため、そろそろおなかいっぱいです。
土鍋御飯もおいしそうだったのですが、入らないので鮭とおにぎりのだし茶漬けにしました。
ところで、最後になにかおすすめの日本酒があるか、ご店主に聞いてみると、なんと「十旭日」があるとのこと。これを飲まずに帰れません、ということで半合だけ註文します。
純米吟醸にごり 改良雄町で、ご店主曰く「十旭日」らしくないとのこと。確かにフレッシュでらしくないといえばその通りですが、これはこれでおいしいです。
「福松」、非常に良いお店でした。これだけ飲み食いして一人6000円程度は、京都でこの内容であればリーズナブルといえます。
また、日本酒の品ぞろえはご店主の好みだと思いますが、種類も豊富で、個人的には良い品揃えだと思います。説明も通り一遍ではなく、かといって立ち香がどうとかめんどくさいことを言うわけでもなく、好感が持てます。ほとんどの客が日本酒を飲んでいたのも印象的でした。
おいしい料理と良い日本酒をリーズナブルに楽しめる店、こういう店はなかなかありません。個人的には非常に気に入りました。次に京都に来ることがあれば、ぜひまた来てみたいと思います。
<2日目に続く>