ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

トスカーナの贋作

2011-02-18 22:46:47 | た行
この映画は
“寄り添ってる感”というより
“向かい合っている感”でした。

あの
ジュリエット・ビノシュに、ですよ?

贅沢うう~


「トスカーナの贋作」70点★★★☆


イタリア、南トスカーナの村に
芸術における「本物と贋作」の本を書いた
作家ジェームズ(ウィリアム・シメル)が
講演をしにくる。


講演を聴いていた
画廊オーナーの女(ジュリエット・ビノシュ)は
彼をドライブデートに誘う。


あるカフェで
夫婦に間違えられた二人は
まるでゲームを楽しむように
「夫婦」を演じ始めるのだが――。



「友だちのうちはどこ?」(90年)などで知られる
イラン映画の巨匠
アッバス・キアロスタミ監督が

オトナの男女を描いたラブストーリー
……なんですが


これが巨匠、もう
仕掛ける仕掛ける(笑)


いや、別にサスペンスじゃないんですけどね。

ほぼ男女二人の会話劇なのに
まあ洗練されていて
退屈させないのはすごい。


そんな二人のハイレベルな
会話の応酬に

遅れまいと必死で耳をすまし(目をこらしてる、が正解)

そうこうしているうちに
映画のテーマである
「何が本物で何か贋作か」が
グニャグニャになり

いや~単純な私は
すっかりダマされました!


ちょっと番長には
大人すぎたようです。


ただ文句なしに楽しめるのは
ジュリエット・ビノシュとの親密具合。

彼女と美しい
トスカーナの景色の中をドライブし

カフェで
カプチーノをはさんで向かい合う。

「いま、私の前にいるのは
(観客である)あなたなのよ」的な

このプライベート感が
贅沢でたまりません!


ぜひ体験してみてください。


今週公開の「ヒア アフター」、「サラエボ、希望の街角」
そして本作は

いずれもカメラが役者と観客の間を
自然かつ濃密に取り持ってる点で
ちょっと近い感じがします。

そういうのがブームなのか?
たまたま……ですかね。


★2/19から渋谷ユーロ・スペースで公開。ほか全国順次公開。

「トスカーナの贋作」公式サイト


そして
来週発売の『週刊朝日』ツウの一見で
「龍馬伝」でもおなじみ
人物デザインの柘植伊佐夫さんが
この映画についてお話してくださっています。

来日時のビノシュのスタイリングもされたそうで
本作の考察も、すごく深くて大人!

いわば「贋作」を作り出す
映画やドラマの仕事に携わる方が
「本物と贋作」についてどう考えるのか?

ぜひ、ご一読ください☆
コメント (2)
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