ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

死にゆく妻との旅路

2011-02-25 14:59:00 | さ行
死とか妻とか病気とか
もういいよ、って思うんですが

これは観てよかったと思いました。


「死にゆく妻との旅路」76点★★★★


実話に基づく話。

1999年、石川県七尾市。


清水(三浦友和)は
経営していた工場が傾き
多額の借金を負ってしまう。


11歳年下の妻・ひとみ(石田ゆり子)は
大腸がんになり
手術を受けたばかりだった。


にっちもさっちも行かなくなった清水は
なけなしの50万円を手に
ワゴン車で職探しの旅に出ようとする。

病み上がりのひとみも
清水についていくと言う。

こうして夫婦の旅が始まった――。


序盤しばらくは
三浦友和と石田ゆり子が
夫婦に見えず

正直、入り込みにくかったんです。

妻が夫を「オッサン」と呼ぶのに
違和感があったし

石田ゆり子はどう見ても
若すぎて
20代の子持ち娘のいる母親には見えない。

でも。


夫婦が
観光地をまわって職を探し、
ときにはSATYで買い物をし、
ワゴン車のなかで時間を紡いでいくうちに

なんだか気にならなくなってきた。


次第にこの“はかない”ロードムービーに
引き込まれていったんですねえ。


いかにも暗~く悲壮な話なのに
雰囲気がほの明るいのもいい。

なにより
がんに冒された妻役の石田ゆり子が
どんどんやせてゆき

本当に空気に溶け込んでしまいそうな
壮絶な透明感を見事に醸し出す様に
見入ってしまいました。


実話の重みもずっしり。

行く先々のハローワークで
断られ続ける50歳過ぎの清水が

「どうして助けてくれないんだ!」
窓口の係員を前に
悲痛に叫ぶ姿は他人事ではない。


死の間際の様子も
リアルでした。


それに、これ
自分にとってかなり
理想の死にかただった。

いままでのベストはフランソワ・オゾンの
「ぼくを葬る」なんですけど。

まあしかし
誰も付き合ってくれないだろう……迷惑すぎて。


それにいい映画だけど
両親には、ちょっと見せたくないなあと
思っちゃいました。

切なすぎる。


★2/26からヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開。

「死にゆく妻との旅路」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする