ごく個人的な動機で撮られた映画が
大きな歴史を語り出し、
他人が一緒にそれに乗っかれるって
実はすごいことだと思うんですよね。
「遥かなるふるさと 旅順・大連」70点
記録映画の第一人者であり
女性監督のパイオニアでもある
羽田澄子さんが
生まれ故郷の中国・大連と
少女時代を過ごした旅順を訪ねるドキュメンタリーです。
軍用施設の多い旅順は
なんとつい最近の2009年まで
行くことができなかったそう。
2010年に、旅順と大連をめぐるツアーが企画され
なんと60年ぶりに
少女時代の思い出の地を
旅できることになったというわけです。
わずか4日ほどのツアーで
よくこんなに撮影できたなあと、まず驚き。
昔、住んでいた家を訪ねて
中に入れて頂いたり
(突然の訪問なのに、みなさん親切!)
高層ビルの乱立に驚いたり。
とても個人的な旅なのに
主観に入りすぎることなく、
見ている他人にも
郷愁や旅情を感じさせるのがすごい。
明瞭なナレーションも聞き取りやすいです。
日本占領時代に
自分のまわりで
中国人たちが下働きをしていたことを
幼いうちは気付かなかったこと。
のちにそのことに思い当たったときの
とまどいや、驚きを感じたことなどが
瑞々しく語られ
そのまま歴史の記録にもなっていく。
いいドキュメンタリーでした。
満州生まれの
母に見せてあげようと思います。
★6/11から岩波ホールで公開。
「遙かなるふるさと 大連・旅順」岩波ホールサイト