ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ミス・シェパードをお手本に

2016-12-06 23:58:57 | あ行

いや、改めて考えると
アラン・ベネットっていい人だなあ。


「ミス・シェパードをお手本に」68点★★★☆


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ロンドン、カムデンに引っ越してきた
劇作家のアラン・ベネット(アレックス・ジェニングス)は
通りに駐車された黄色いバンを目にする。

中には年老いた女性(マギー・スミス)が
一人で住んでいた。

近所の住民によると彼女は元修道女で
ミス・シェパード、と呼ばれているらしい。

彼女は
さまざまな家の前にバンを停めて暮らしていたが

そのうちにベネットの
家の前までやってきて――?!


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路上に停めた車で生活する
謎の“レディ”、ミス・シェパードの物語。

彼女を自分の家の前に15年間も(!)いさせてあげた
劇作家アラン・ベネットの
実体験を元にした舞台劇の映画化です。

舞台版でも主役を演じたマギー・スミスが
同じくミス・シェパードを演じています。
ちなみに日本では黒柳徹子さんがこの役を演じたそう。


ベネット氏と、その分身が「ミス・シェパードを語る」という作りで
語りが主流な点が
映画として少々単調ではあるけれど

気むずかし屋で、愛想もないのに
教養があり、なぜかフランス語に堪能だったりするミス・シェパードという人物は

確かに“謎”に満ちていて
題材としておもしろい。

ベネット氏は彼女が亡くなってから
わかった事実に基づいて、この物語を書いたということなので

人に歴史あり、ですねえ。

そして
強烈な匂いを放つ、気むずかし屋のホームレス女性を
それとなく見守り、距離を持ちつつ、受け入れていた
町の人々の理解と寛容さが
こんな時代にとても刺さる。

それがこの映画の一番の収穫だと感じました。

そういう優しさを、少しだけでも学びたいなと。
まあ、とても同じようにはできないけどね。

だって
15年も、目と鼻の先に彼女がいるなんて(!)
たとえ、これで戯曲が書けたとしても
普通できるもんじゃない。

ベネット氏が一番すごいですなあ。


★12/10(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開。

「ミス・シェパードをお手本に」公式サイト

コメント
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