ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ジェニファーズ・ボディ

2010-07-19 14:41:26 | さ行
性格悪くても
超絶ボディあればいいじゃん。

「ジェニファーズ・ボディ」69点★★★


不敵な発言でマイケル・ベイ監督を激怒させたとか
「トランスフォーマー3」を降板したとか

目下ハリウッドのNO.1お騒がせ女優
ミーガン・フォックス主演、

「JUNO/ジュノ」の脚本家による
学園ホラームービーです。



アメリカのとある田舎町。

メガネで地味目な女子高生
ニーディ(アマンダ・セイフライド)
(「マンマ・ミーア!」のあのギョロ目ちゃん)と

学校一の美女として
ブイブイ言わせてるジェニファー(ミーガン・フォックス)
幼なじみの親友どおし。


ある夜、2人は地元のバーにやってきた
インディーズバンドのライブに行く。

案の定、ジェニファーは
バンドのメンバーにモーションをかけ始め
ニーディーはストップをかけるのに必死。

しかし
その後、怖ろしい事件が起きてしまい――!



宣伝ビジュアルから
「また吸血鬼?」と思ったら
これが吸血鬼ではないんですよ。


さすがディアブロ・コディの脚本
センスいいですわ。


イケイケ女子の学園ドラマに
ホラー“らしい”脅かし要素を混入し

ベタベタな展開に見せておいて
こちらの予測を「ヒラリ」とかわしてくる。


ガンガンのロックにのせて凄惨な死体を見せたり
えげつないけど
許せるシャレが効いてるんです。


タイトルひとつ取っても
イケイケのジェニファーのボディ、という意味に

死体やいけにえ、という意味がかかっていたり

さらにコートニー・ラブの
曲のタイトルからとっていたり。


なによりこの役に
ミーガンを当てたことが
相当な皮肉っていうか。


ミーガンの「これでもか!」ボディを堪能しつつ
女どおしの取っ組み合いやら
けっこう怖いホラー部分やらを眺めて

パッと憂さ晴らしできるかと。


★7/30からTOHOシネマズみゆき座ほかで公開。

「ジェニファーズ・ボディ」公式サイト
コメント (2)
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ハロルドとモード/少年は虹を渡る

2010-07-18 13:14:32 | は行
昔の映画はいろんなことを
教えてくれるって証明です。


「ハロルドとモード/少年は虹を渡る」70点★★★


葬儀参列が趣味で自殺もどきを繰り返す
エキセントリックな
少年ハロルド(バッド・コート)

これまた葬儀参列が趣味という
79歳の老女モード(ルース・ゴードン)と出会い
心を開くというストーリー。


思わずギョッとさせる斬新な絵作りといい
笑いのツボといい
現代に十分通じる抜群のセンスです。


「えっ?そうなりますか」とくる
アバンギャルドな展開もおかしすぎる。


制作年は1970年。
監督のハル・アシュビーは
「夜の大捜査線」でアカデミー賞編集賞を受賞した人で
自身も超・ヒッピー(笑)


(ルース・コードンとハル・アシュビー)


そんな監督が描く
自由人のおばあちゃんモードが
すごく魅力的で

その会話にはなんつうか
哲学的要素が散りばめられてるんです。


「葬式は最高におもしろいわ。
埋葬と誕生はつながってるんだもの」


「生まれ変わったらヒマワリになりたい。
背が高くてシンプルでしょ」


「同じ花なんてない。小さいの、太ってるの、
右向いてるの、みんな一人一人違うのよ」


…あれ?これって
「世界でひとつだけの花」?

ってな感じで
あらゆるクリエーターにとって
インスピレーションの宝庫か
ネタ元の宝箱かって感じもいたします。


実際、いまもカルト的な人気を誇る作品で
2008年にも浅丘ルリ子&西島隆弘で
舞台化されているそうです。
へえー。



★7/17から新宿武蔵野館で公開中。

「ハロルドとモード/少年は虹を渡る」サイト
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老人と海

2010-07-17 15:29:33 | ら行
いや~東京、梅雨空けましたねえ!

スッコーンと晴れた空にピッタリの映画。


「老人と海」72点★★★


沖縄・与那国島の老海人(うみんちゅ)を追った
1990年製作のドキュメンタリー。

今回、ディレクターズ・カット版として
20年ぶりに上映されるものです。


まず、見方にコツがあります。

冒頭、じっちゃんがサバニ(小舟)で漁をするシーンを
あまり凝視してると船酔いしますから注意(笑)


そのほかは、だいじょうぶです。


巨大カジキを追い求める
82歳の海人の情熱は
まさにヘミングウェイの『老人と海』を地でいくもの。

さらに
おばあとのツーカーな日常、
島の豊かな自然や祭事の数々を

まるで島に暮らすように見ることができる
本当に気持ちいい作品です。


じっちゃんが巨大カジキと格闘するクライマックスの
なんとドラマチックなことか!


貴重な島の歳時記でもあり

とりあえず沖縄好き、椎名誠本好きには
ぜったいオススメですね。


のちに「ハッシュ!」や「ぐるりのこと。」を
プロデュースすることになる山下徹二郎氏や

音楽・小室等&演奏・坂田明、
スチールが本橋成一・・・なんて
そうそうたるメンツが参加してるのも見どころ。


来週7/20発売の週刊朝日「ツウの一見」で
小室等さんに伺った
当時の話や映画のみどころ記事出ます。

チェックよろしくデス!

それにしても
あ~島で、海見ながら、ビール飲みてえ!


★7/31から銀座シネパトスほかで公開。

「老人と海」公式サイト
コメント (2)
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エアベンダー

2010-07-10 14:35:21 | あ行
M.ナイト・シャマラン監督
好きなんだけどなあ。


「エアベンダー3D」60点★☆


氣、水、土、火の4つの国が
調和を保っていた世界で

火の国が反乱を起こし
世界は戦火に包まれた。

ある日、水のパワーを操る少女カタラ(ニコラ・ペルツ)は
謎の少年アン(ノア・リンガー)を見つける。

アンは氣、水、土、火の4つのエレメントを
自在に操ることのできる
唯一の“選ばれし者”だった。

アンはその運命に従い
世界の調和を
取り戻すことができるのか?


あの、シャマランが
こんなベタベタなスペクタル劇を作るとは!
ってことで
いやでも注目度満点の作品。

しかし、相当に
「ギャフン」だったんですねえ。


第一のギャフン
続きものだったこと。


確か「第一章 水」で始まったので
もしかしたら土、火、氣と
あと3作、あるかもしれない(笑)

まあ103分と、ほどよい長さだったので
怒りはわきませんでしたが。
続き作るの?ほんとに?


そして見どころの
や火を自在に操る
いわゆる超能力合戦の映像。

あの「アバター」を生んだ
スタジオILMが担当し
さすがに見応えあることはあるんですが

期待したほど“ザ・3D!”じゃなかった。
画面が暗いし

アクションも
なんだかFFシリーズの「スロウ」
かかった感じっていうんですか。

のろい・・・。


なにより最大のギャフン
完全に見どころを“映像”だけにした
ラフすぎるストーリー展開でしょう。


すべて少女カタラの語りで
物事が進行するので
国語の時間にクラスメイトのヘタな朗読を
延々と聞いてるみたい。

もうギャフンを通り過ぎて
ポカーンですよ。


たぶん、シャマラン監督はもう
物語を丁寧に構築することが
いやんなちゃったんだと思いますね。


「ヴィレッジ」とか「サイン」とか
私は割と好きなんですが

ああやって
すんごい丁寧に仕掛けて仕掛けても

世の中から
「なんじゃい、あのオチ!」と
相当な不評を買ってしまった。

だからもう
世界作りはいいや、って。

来日した監督、相当にごきげんな様子だったし
完全にふっきれた感じもしました。


救いは
アン役の少年がかわいらしかったこと。
選ばれし者にふさわしいカリスマ性がありました。

12歳にして、テコンドーの黒帯所持者だそうで
今後もこの世界観を
がんばって担いでくれるかもしれません。


ところでシャマラン監督
「映画には宮崎駿からの影響が入ってる」
と舞台挨拶で言っていまして

考えに考えて
ふと思い当たりました。

アン少年にくっついてる
キツネザルという機敏な生き物がいるんですが

あれ
「ナウシカ」のテトか!


★7/17から全国で公開。

「エアベンダー3D」公式サイト
コメント (2)
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インセプション

2010-07-08 17:51:47 | あ行
うーんこれは
最大級に期待したんだけどなああ。


「インセプション」67点★★


人の頭の中に侵入して
アイデアを盗むプロである
コブ(レオナルド・ディカプリオ)と
相棒のアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)。

二人はサイトー(渡辺謙)から
ある依頼をされる。

それは盗むのではなく
「インセプション」=植え付ける、というものだった。

不可能と言われるミッションに
コブたちは挑むことになるが――。


これ概念は完全に
「マトリックス」なんですよ。

人の頭の中(夢)に入り込んで
そこを行き来し、現実に戻る、という。

で、夢のなかで「目が覚めた夢」を見るみたいに
それを何層も重ねて
世界が複雑になっていくんですね。


「メメント」「インソムニア」をやってきた
クリストファー・ノーラン監督ならではの挑戦ですねえ。


イメージの設計図は
すごくしっかり描かれているし


なによりやはり「マトリックス」以降、
こういう映画を作ろう、という
チャレンジ精神は買いでしょう。


でも
世界観はなんとなく理解できても
心に響いてこないんですねえ。


まず複雑に構築された舞台に比べて
話が薄く、単純すぎ。


「人の心を動かす種は
意外にシンプルなものなんだ」みたいなことを
ディカプリオが言うけれど
うーん、そこまで単純かなあと。


それに
見る人が提示された世界を
咀嚼して、消化するのって
もっとファジーで感覚的なものだから。

ガンガン攻め込むだけでは
入り込めないんですよ。
そこが計算できてない。


ただ俳優の人選はナイスで
ちょい役にも「おっ」という人を
揃えてますね。

特に
「(500)日のサマー」
ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが大活躍するので
うれしかったです。

彼のおかげで
寝ずにすみましたが

試写室ではけっこう
でかいイビキが聞こえてました。あちゃー。


★7/17、18、19先行上映。7/23から全国で公開。

「インセプション」公式サイト
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