ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ももへの手紙

2012-04-18 23:50:37 | ま行

とにかく絵がきれいで、見ていて気持ちがいい!

「ももへの手紙」70点★★★★

「イノセンス」などでアニメーターとして活躍してきた
沖浦啓之監督によるアニメーションです。


瀬戸内海の小さな島・汐島。

小学6年のももは、
父を亡くし、母と一緒に島に越してきた。

慣れない島暮らしをスタートさせたももの周囲で、
次第に奇妙な出来事が起こり始める。

天井裏をギシギシと誰かが歩くような音がしたり
冷蔵庫のおやつが知らぬ間になくなっていたり。

そして、ある日ももはついに
その正体を見ることになる。

それはなんと――3人組の妖怪だったのだ――!


都会から島にやってきた無愛想な少女が、
不思議な妖怪たちと出会う話。


妖怪たちは見た目もブサイクだし、大食らいだし
何の役にたつのか?という感じなんですが、
キャラがユーモラスで、妖怪どおしの掛け合いなどもけっこうウケました。


なによりも
「千と千尋」の作画監督や
「サマーウォーズ」スタッフが参加とあって、
絵がとにかくキレイ!

美しいしまなみの風景や
古民家といった設定と
動きを含む描写の丁寧さは、いつまでも見ていたい感じ。

ただ
映像の丁寧さが逆にスローな印象をもたらすので、
2時間は長すぎる。

さらに
妖怪と少女、父の不在、困難を乗り越えての成長、といった要素も
ジブリアニメを筆頭に
やはりどこかで見た感は否めない。

まあ成長物語も妖怪話も
古今東西、何度も繰り返されるモチーフですけどね。

なので、アニメーションとしてのクオリティは高いけど
目新しさはやや不足、という感じかなあ。

しかしお母さんの声が優香とは気づかなかったです。
うまくてびっくり。


★4/21(土)から全国で公開

「ももへの手紙」公式サイト
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裏切りのサーカス

2012-04-17 22:48:06 | あ行

試写後「よかったわあ」とみなさん大絶賛のよう。
またひとりだけ置いてきぼりで、ぽつねん。

「裏切りのサーカス」63点★★★


「ナイロビの蜂」の原作者でもある
元諜報部員ジョン・ル・カレの1970年代のスパイ小説を基にした映画です。


1970年代前半、東西冷戦時代。

英国諜報部<サーカス>のリーダー、コントロール(ジョン・ハート)は
5人のサーカス幹部のなかに
ソ連の二重スパイ<もぐら>がいるとの情報を掴む。

だが独断での調査は失敗に終わり
コントロールは長年の右腕スマイリー(ゲイリー・オールドマン)とともに
<サーカス>を辞職する。

だが、スマイリーは<サーカス>に呼び戻される。

「<もぐら>は4人の幹部のなかにいる。突き止めろ」――

そしてスマイリーの執念の捜査が始まった――。


「ややこしい話なので、事前にあらすじを読んでおいてください」という
注意書を守らなかったけど、
そんなについていけない話ではなかった。

逆にめくるめくスピード展開を想像していたので、
かなり面食らいました。

だって、
終始一貫してもの凄くムーディーでスローリーで、
とにかく“美学”の映画なんですもん。

全編を覆い尽くすグレーなトーンとカメラワークが優美だし、
派手な銃撃も血なまぐささもない。

役者揃いで、かつ全員が怪しいという
めちゃくちゃ魅せる仕立て。

……のはずなのに、
とにかく静かすぎて眠い!(笑)


抑制の効き“すぎた”演出もその理由ですが、
話がわからないんじゃなく、
「何のために、何を追っているのか」
登場人物たちの目的やモチベーションがわかりにくいのに困った。


さらに二重スパイとか“逆転の逆転”的な
どんでん返しが繰り返されると、

「何が真実でも、もうどうでもいいや」という
切り捨ての感情が生まれてしまうのだ。残念。


確かに役者はピカイチだし
「映画通ほど惹かれる」とバラエティ誌が評しているとおり、
玄人好みなんでしょうかね。

でも真におもしろい映画は
誰をも魅了すると思うんだけどな。

「ナイロビの蜂」はかなり心のベスト10入るしなー。


★4/21(土)からTOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「裏切りのサーカス」公式サイト
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Black&White/ブラック&ホワイト

2012-04-16 23:18:59 | は行

CIAがこんなことしてていいんかいな
バカバカしくも、意外にツボるコメディです。

映画「Black&White/ブラック&ホワイト」69点★★★☆

「チャーリーズ・エンジェル」のマックG監督による
アクション&ロマコメです。

CIAの諜報員コンビ、
FDR(クリス・パイン)とタック(トム・ハーディー)。

チャラ男で女好きなFDRに対し
タックはマジメな紳士タイプ。(ただしバツイチ、子アリ)

そんな個性の違う二人が
ひょんなことから同じ女性ローレン(リース・ウィザースプーン)に恋をする。

どちらがローレンを射止めるか、
二人は正々堂々と勝負をすることにするが、

しかしCIAの情報網を”職権乱用”し
戦いはエスカレート。

果たして、勝負の行方は――?!


もう少しスパイアクション方面に行くかと思いましたが、
ロマコメ要素が8割という印象。

ドタバタ加減もよく、下ネタ方面にもさほどいかず、
普通に楽しい映画でした。

これで男二人を手玉に取るウィザースプーンが、
いけすかないイケイケ女だったりすると、全然印象が違うんでしょうが、

男運のないサッパリ系キャラで、
女性の眼にもいやらしくない。


互いのデートを監視するわ、盗聴するわの
「ありえねー」スパイ合戦の暴走がおかしく、

ローレンが商品さながらに二人を品定めし、

「面白いけど、自己チューっぽい
「マジメだけど、退屈そう」などなど、

相手との距離が近くなるごとに、その比較が
深く厳格になっていくのも笑える(笑)

女性には「どっちを選ぶ?」という
楽しみ方もあるでしょうね。

まあ、
どう見ても番長的には
勝負は見えてる気がするんですけどねえ。

だってチャラ男とマジメ男って
迷う余地あるの?

いや、なによりクリス・パイン、
猿人だよねえ……どんどん長くなってるよねえ(笑)

いや、でも勝負はわかりませんよ、これ。

★4/20(金)から全国で公開。

「Black&White/ブラック&ホワイト」公式サイト
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アンネの追憶

2012-04-15 00:49:42 | あ行

アンネ役の子が
AKBあっちゃんに似てるんですわ(笑)ワシ的に。

「アンネの追憶」66点★★★


かの有名な『アンネの日記』を書いた
ユダヤ人少女アンネ・フランク。

彼女がゲシュタポによって
隠れ家から連行されたその後を描いた作品です。


1942年、オランダ・アムステルダム。

少女アンネ・フランク(ロザベル・ラウレンティ・セラーズ)は
13歳の誕生日に日記帳を送られ、日記を書き始める。

作家を夢見る彼女は、
日記に思いを羽ばたかせ、文字を綴っていくが

ほどなくしてナチスによるユダヤ人迫害が強まり、
アンネは家族と隠れ家で暮らし始める。

そして1944年。
ついにアンネたちの隠れ家が発見され、
彼女は家族とともに、アウシュビッツ収容所に送られてしまう。

その後、アンネを待ち受けていた運命とは――?!


隠れ家生活で終わっている
『アンネの日記』の背景と“その後”を、
父の証言などをもとに描いたイタリア映画です。

元々テレビ映画だったそうで、
収容所シーンなどもキツい描写などはなく、

劇中でも子供たちにアンネの話を聞かせるシーンから始まるなど、
おさらい&教育的色合いが強い。

いまやドイツでは
『アンネの日記』を知らない子もいるそうで、
語り継ぐべき歴史として必要ということでしょう。


将来を夢見た一人の少女としてアンネを描き
その運命の理不尽さを、抑制を効かせて描写したのは
いいアプローチだと思いますが

ただ「サラの鍵」や「善き人」など
ナチス題材が、一味違う様に進化している昨今、
大人には題材の扱いがストレート過ぎはする気がします。


それでもアンネ役の少女が、
あの有名な肖像写真のイメージそのままに利発そうで
なかなかよかったですね。

意志の強そうな目とか、顎のラインとか、
特に髪を切ってから
AKBのあっちゃんっぽいんだよなあ(笑)


しかし番長、子ども時代『アンネの日記』を読んで
アンネってけっこうおませで、ひねたところもあり、
かなりドロッとした女っぽさの片鱗を感じた気がするんですが、

その印象からすると、本作の人物造型は
可憐すぎる気がしました。

まあ13歳の少女なんて
自意識のかたまりでしょうから、
大人になったいま思えばそんなもんでしょうかね。


★4/14(土)から有楽町スバル座ほか全国で公開。

「アンネの追憶」公式サイト
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SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

2012-04-13 22:30:05 | あ行

北関東をさすらうラッパー、
今度は栃木に出没!

「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」69点★★★☆

いいねえ♪ああ切ないねえ♪と、
見終わるころには思わずリズムを取ってる
サイタマノラッパーシリーズ第3弾です。


世界的なラッパーを夢見て、北関東をさすらう
ヒップホップコンビ“SHO-GUNG”の
太めのイック(駒木根隆介)と痩せのトム(水澤紳吾)。

数年前に“SHO-GUNG”を脱退して
上京したマイティ(奥野瑛太)は、

人気ヒップホップグループのパシリを2年務めるも、
理不尽な扱いを受け、
ヤツらに追われる身になってしまう。


栃木に逃亡したマイティは、
ひょんなことから
地元開催の音楽イベントの手伝いをすることになるが――?!


お馴染みの“SHO-GUNG”二人組が登場すると、
それだけで笑みが漏れてしまいますねえ。

前回の女子ラッパー話は
土地に縛られてる感やら妙齢女子の悲哀やら
けっこう“ひだ”が深かったけど、

今回のストリームは、それに比べると直球。

悪くいうと平凡、
逆に見やすいといえばそうかもしれない。

夢を追うものの泥沼にハマリ、
なかなか人生の芽が出ない不幸な主人公マイティの
もがきと、悲痛な叫びが切ない。

彼の登場パートは徹底的にダークで
いっぽうマイペースに旅を続ける“SHO-GUNG”の二人組は平和そのもの。

この対比が切なさを増幅させてます。

ラスト、
入江流の空気を取り込む超・長回しは必見。

さりげなく劇的な構図も効いてますよう。

監督によると、一応北関東3部作はこれで終了、らしいです。
またどこかに出没しそうですけどね。


★4/14(土)から渋谷シネクイントで先行公開。ほか全国順次公開。

「SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者」公式サイト
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