ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

アポロ18

2012-04-12 23:47:13 | あ行

この映画を09年公開のモキュメンタリー「アルマズ・プロジェクト」
勘違いしていた、なさけない番長(苦笑)


「アポロ18」47点★★☆


アポロ17で終わったはずのアポロ計画には、
実は公表されていない18号のミッションがあった。

そのミッションに携わり、
月に降り立った宇宙飛行士たちの
極秘映像を入手したスタッフたちが、
「月で何があったのか?」の謎を解き明かしていく……という話。

モキュメンタリーとは、
モック(=うそっこ)のドキュメンタリーのこと。


「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」、そして
「パラノーマル・アクティビティ」系譜で、

いまだ
「ホントは月に行ってないんじゃないか」など
さまざまな説のあるアポロ計画を描くという
着眼点バッチリな映画です。


ニセとわかっても、この手の映画は
その手法のおもしろさにギャフンとなるんですよね~。

で、まずこの映画は、意外とハッキリ
「うそっこ」を表明している。

だって、NASA秘蔵の貴重な映像のはずなのに、
躊躇なしにポンポン編集してるし(笑)
ミュージックビデオなみの
いさぎよくスピーディーなスタイルが笑える。

最初から「ニセモノですよー」と明記したうえでの遊びであり、
そのうえでドキドキ、ハラハラを提供してくれてるところは
いいと感じます、

極秘のミッション、無人カメラに映る「なにか」、
そして惨劇が――?!

と、確かにパーツはそそられるんですが、
実際のところすべて「どこかで見た」ありもののつぎはぎ、という点が微妙。

まんま「エ○リアンじゃん!」と誰もが突っ込むよなあ、コレ(苦笑)とか。

それでも、映画としてちゃんと決着をつけたのはエライ。
オチは「へえ」というアイデアでした。


4/14(土)から渋谷TOEIほかで公開。

「アポロ18」公式サイト
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オレンジと太陽

2012-04-11 23:14:04 | あ行

名匠ケン・ローチ監督の息子、
ジム・ローチ監督作品。

これが不思議なほど、オヤジさん似だったりして。

「オレンジと太陽」74点★★★★


1986年の英・ロンドン。

社会福祉士のマーガレット(エミリー・ワトソン)は、
ある女性から「自分が誰なのか調べて欲しい」という不思議な依頼を受ける。

その人は幼いころ、親の都合で
イギリスの児童養護施設に預けられていたが、

あるとき子どもたちだけで船に乗せられ、
オーストラリアに強制的に移民させられたというのだ。

「そんなことがあるわけない」
信じないマーガレットだったが、

あるきっかけで彼女の話を調べはじめる。

そこには驚くべき事実があった――。


19世紀から、ごく最近の1970年代まで実際に行われていた
イギリスからオーストラリアへの
強制的な“児童移民”の事実を描いた作品。

その事実はイギリスでも
つい最近まで知られていなかったそうで
まずはそのことに驚かされます。

監督は主人公マーガレットの書いた本に出合い、
最初はこの話をドキュメンタリーにしようと思ったそうですが、
そうせずに、リアリティをそのままに、
ドラマにしたのがよかった。


社会派な題材ながら、詰問調などにならず
堅実に静かに人の”心”を描く姿勢が
やはり父ケン・ローチにダブります。


まあ、父上の近作よりも
息子のほうがかなりマジメで堅い印象なのが、
またおもしろいところで(笑)。

根底にあるテーマは
「人を助けるとはどういうことか」。

エミリー・ワトソン演じる主人公は、
何千人もの元孤児たちの話を聞くうちに、
その痛みに同調し、自身の心も病んでしまうんですね。

それでも彼女の熱心さ、真摯な思いは
ひねくれてしまった人の心も徐々に開かせる力を持ってる。

真の人助けとはなにか、と考えさせられました。

それに
ちょっとした風景のはさみかたとか、音楽なんかにも
どこか父上との共通点があるんだよなあ。不思議。

いい後継者を育てたんですねえ、パパローチ。


★4/14(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「オレンジと太陽」公式サイト
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ジョン・カーター

2012-04-10 22:53:44 | さ行

ヘソ曲がり番長としては
世間の評判に関係なく、擁護したいところだったんですが…。

「ジョン・カーター」3D版30点★★☆

「ファインディング・ニモ」など
名作ピクサーアニメを生み出してきた監督が
初の実写に挑んだ作品です。


時は19世紀。

人類は今だ知らないことだが、
火星には高度な文明が発達していた。

好戦的なゾダンガ王国に対し、
“善”であるヘリウム王国は、必死で攻防していた。

そして、そのころ地球では、
南北戦争に従事した元軍人ジョン・カーター(テイラー・キッチュ)が
ある理由から、目的を見出せずにさまよっていた。

そんなジョン・カーターは
洞窟であるものに触れた瞬間、火星へとワープしてしまう――!

未知の世界で彼はどんな体験をするのか――?!


いつにもまして、素直に公正な目で見たつもりですが、
これは――本年度、番長ラジー賞決定かも(苦笑)

だって2時間以上見てても、
何が言いたいのかサッパリわからん!(笑)

「スター・ウォーズ」と「アバター」を足したようなクリーチャーが出てきて、
万能の神みたいな人が出てきて、

主人公が重力の関係で火星をぴょんぴょん飛び回れて、
敵かなにかと戦って……って

だからなんなん?という(失笑)

そもそも一般的なアクションアドベンチャーに
そんなに深い意味を求めているわけじゃないんですが、

それでもこの「よくわからん」感は
貴重なほどにすごい(笑)

2時間13分、眠らずに見ただけ凄いというか。


実はこの元ネタは
「スター・ウォーズ」や「アバター」に多大なインスピレーションを与えた
伝説のSF小説「火星のプリンセス」なんだそう。

なーるほど~!それでどこかで見たような世界観なんだ!と思いますが、
やっぱり伝えたいことがわからない空虚さはあって(笑)


印象に残ったのは
ジャバ・ザ・ハットのミニ版みたいなクリーチャー。
忠実な犬みたいで可愛かったナ。


★4/13(金)から全国で公開。

「ジョン・カーター」公式サイト
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バトルシップ

2012-04-09 21:00:07 | は行

けっこう評判いいすよ。

「バトルシップ」70点★★★☆


ハワイに暮らす青年アレックス(テイラー・キッチュ)は、
美人に目がなく、短気なプー太郎。

海軍士官の兄(アレクサンダー・スカルスガルド)に呆れられ、
ついに海軍に入れられる。

新米将校となったアレックスは
ハワイ、オアフ島沖で行われる、合同演習に参加する。

世界14ヵ国から海の精鋭たちが集まり、
そのなかには日本の自衛艦の指揮を執るナガタ(浅野忠信)もいた。

そんななか、いきなり空から謎の物体が飛来し、
ハワイ沖に落下した。

物体を調査するためボートに乗り込んだ
アレックスが見たものとは――?!


「トランスフォーマー」をドでかくした
宇宙からの敵 VS 駆逐艦の派手バトルです。

短慮でダメ~な主人公の描写が長く、
敵の登場まで30分以上(!)というのはどうかと思いましたが

バトル始まればサクサク。


浅野忠信が今度こそセリフもたっぷりに
本格的に準主役!ってのも加点ポイント。

宇宙からの敵なのに、
戦いかたは砲弾とシンプルだったり、

アメリカだけでなく
各国が力を合わせるという体になってたり(一応ね。笑)

たいてい「チラ見え」で焦らされるエイリアンの造形が
あっさり登場したり、

意外に丁々発止の作戦バトルになったりと、

この手の映画の構成要素を
微妙にモデルチェンジし
意外に(失礼!笑)全体をおもしろくまとめている。

最近、戦いが長くてもあくびが出ちゃうので、
そのへんもパッパッしているのもいい。

退屈しそうな局面で
サッと次の手を打ってくるのがなかなか巧みでした。

ポップコーンムービーとしては合格点だと思います。

★4/13(金)から全国で公開。

「バトルシップ」公式サイト
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核の傷 肥田舜太郎医師と内部被曝

2012-04-08 19:53:51 | か行

95歳の現役医師がその体験から、
「放射能汚染に立ち向かう方法」を教えてくれます。


「核の傷 肥田舜太郎医師と内部被曝」60点★★★


2006年にフランス人監督が制作したドキュメンタリー。
ナレーションを染谷将太氏が担当しています。

28歳のとき広島にいた肥田舜太郎医師は、
自身も被曝しながら、多くの被曝者を診察し続けている。

カメラはそんな肥田医師に密着し、
彼の体験や証言を映像に収めていきます。


原爆投下がアメリカによる「人体実験」だったこと
米軍は広島市民らが一番屋外にいる時間を念入りに調べて
原爆を8時15分に投下したこと……などが浮き彫りになり、

その非人道ぶりに、改めてゾッとします。

アメリカに研究対象として保存されている幼児のホルマリン漬けなど
ショッキングな映像もありますが

やはりもっともショックなのは、
被曝者たちに現れる放射線被害の症状と、死に至るまでの状況の解説でしょう。

3.11以降、我々が欲しがっているのは
まさにその「内部被爆した人が、その後どうなるのか」という情報なわけで。


本作はもちろん
いまのこんな状況を想定して作られたものではないので
いたしかたないですが、

焦点がおそらく「ヒロシマの証言」にあるので
少々、退屈なくだりもあります。


同時上映の
「311以降を生きる:肥田舜太郎医師講演より」

のほうが、いま我々が求めているものを直接的に描いているので、
2本合わせて観るのが正解でしょう。

こちらは311後に
肥田医師が全国で行っている講演をまとめた
20分の作品で、

内部被爆者に現れる症状――さしたる原因も症状もなく「とにかくかったるく」なったり、
老化が早まったような状態になる――などの話が治められています。

そして肥田医師の指導で
多くの被爆者がまだ生きているという事実が
非常に大事なわけですね。

どうすれば、放射能汚染に立ち向かい、生き抜けるのか?

そのヒントがあると思います。

★4/7から渋谷アップリンクで公開。ほか全国順次公開。

「核の傷 肥田舜太郎医師と内部被曝」公式サイト
コメント (2)
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