ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ドン・ジョン

2014-03-13 23:35:23 | た行

思い出すのは
主人公がMacを立ち上げるあの音ばかり。

ジャーーン!(笑)


「ドン・ジョン」66点★★★


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マッチョで甘いマスクの
ジョン(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は
女性にモテモテ。

夜な夜なクラブでナンパしては
美女をお持ち帰りしている。

だが彼自身は、
どんな女性にも満足できないという
悩みを抱えていた。

あるとき、彼はクラブで
ゴージャスな美女(スカーレット・ヨハンソン)に出会う。

彼女と付き合い始めた彼だったが――?!

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ワシのご贔屓
ジョセフ・ゴードン=レヴィットの
監督&脚本デビュー作。


レヴィットがマッチョでナンパ好き、いかにも~な“男”を
スカヨハが自分のエロさを武器にできる「女子力、高っ!」な“女”を
型どおりに演じながら

「本当の愛とは何か?」を描く、というもの。

と、
テーマはまともなんだけれど、
どうにも戯画というか、コミカルというか(笑)

そこここにありそうな
フツーの恋愛話というか。

まず
なんでこの題材を描こうと思ったのか
レヴィットさんにメチャクチャ聞いてみたい(笑)

なんつうか、もっと“アート志向”な人なのかなあと思ってたんで
裏の裏をかいて、表な感じ?(笑)


主人公もヒロインも
いかにも現代的な「自分第一」人間であり

付き合う相手に
「自分好みになってほしい」と(潜在的にでも)願っていて

そのことが
恋愛をうまくいかなくしている……って話。

まあ、そのとおりでしょうけどね(笑)


自分しか見えていない若者の
その象徴として、ドン・ジョンが夢中になる
ネットポルノとかがあるんでしょうかね。


まあ最終的に
主人公の「愛探しの旅」は
意外に深淵なところまで行くことは行くんですが

ラストはちょっと放っぽり出した感じ、しないかい?(笑)

でも、レヴィットさんには
今後も注目していきますよー。


★3/15(土)から全国で公開。

「ドン・ジョン」公式サイト
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1000年後の未来へ -3.11 保健師たちの証言-

2014-03-11 23:54:06 | さ行

あれから3年。

なにか変われただろうか、自分。

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「1000年後の未来へ -3.11保健師たちの証言-」68点★★★☆


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秋田県の自殺対策活動を追った
「希望のシグナル」(2012年)
都鳥拓也・伸也兄弟による
3.11ドキュメンタリーです。

市町村の市役所にいて
各家庭をまわったり健康相談にのったりする
“保健師さん”が

震災のとき、どう動いたかを描いたもの。

「希望のシグナル」と同じく
素直に、謙虚に、対象に寄り添い
際立たせるスタイルに、まず好感が持てます。


今回は
保健師さんを束ねるような立場の
菊地さんという女性を中心に

保健師の仕事とはどういうものかを聞きつつ、
被災地で保健師がどのように活動したか、を写し取っていく。


各地から「じっとしてられない」と
ほとんど自主的に被災地を訪ねた保健師さんたちは

避難所や家庭で、とにかく一人一人に向き合い、
血圧を測ったりしながら、話を聞く。

それは
震災以降、改めて大切だとされた
「あなたのことを、ちゃんと見ているよ」という
丁寧なメンタルケアの自然なありかたで。
救われるよね、これは。

3.11以降の「とにかく何かしなきゃ」を
そのスキルを持って、有効に実行した彼女たちの記録は
とても貴重で、考えるもの多くありました。

ただ、この映画はもともと
保健師資料館用の記録映像として依頼されたものだそう。

その内容の貴重さから
「一般にも伝えるべき」と再編集されたようで

後半にある「保健師さん勉強会」シーンなどは
けっこう専門的というか
知らずに見ると
ちょっと違和感があるかも。

でも
3.11をいろんな視点から見ること、
そして
「かわいそうだね」「大変だよね」ではなく
「いまこのときも、そこで、できることをやっている人」を見ることで
感じるものは、確かにありました。



★3/15(土)から渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「1000年後の未来へ -3.11 保健師たちの証言-」公式サイト
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あなたを抱きしめる日まで

2014-03-10 23:58:50 | あ行

ジュディ・デンチにそんなに“やられる”方ではない。

でもこの映画は、ネタの活かし方が見事だった!


「あなたを抱きしめる日まで」78点★★★★


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BBCの元ジャーナリスト・マーティン(スティーヴ・クーガン)は
政府広報の仕事をクビになり

やさぐれつつ、
次の仕事のネタを探していた。

そんなとき、彼は
70代のフィロミナ(ジュディ・デンチ)に出会う。

彼女には50年間隠し通していた、秘密があった。

50年前、アイルランドの修道院で未婚で子どもを産み、
その後、別れ別れになっていたのだ。

マーティンは記事のネタにすべく
彼女の子捜しを手伝うことになるのだが――?!


**************************


これが実話って、マジ?!――というほど
あまりに数奇で信じられないような話を、

ことさらにメロドラマチックにせず、
効果的な映像によって表現した

映画の「語る力」を見せつける良作です。


アイルランドの厳格な修道院に育ち、
しかし10代で妊娠し、子を生んだフィロミナが
50年後に、その子を捜す物語。


なぜ50年間隠していた秘密を
いまになって話す気になったのか――?!
その理由もちゃんとわかるし、
社会的な背景や事件も絡んでくる。

息子捜しがメインなのかしらんと思いきや、
その結果は意外にあっさりと提示されたり

しかしそこから
再び“息子を探す旅”になるという展開もおもしろい。

皮肉屋のジャーナリストとのコンビの妙、、
やがて明らかになる事実にも驚かされます。


なにより
彼女が会ったことのない
“息子”の成長の記録映像がストーリーの合間に挟まれるんですが

これが予想以上に効果的で

その意味がわかったとき、
それだけで目頭が熱くなりました(泣)

冒頭、元ジャーナリスト・マーティンの置かれた状況が
周知の事実っぽく描かれてて
ちょっとわかりにくさを感じるかも、ですが

すぐに本題に入るし、
状況はやがてわかるので大丈夫。


監督のスティーヴン・フリアーズ氏は
人間ドラマの名手ではあるけれど

どうも淡すぎるというか
最近はズキュンとくるまでなかったんですが
今回は、そのタッチの優しさが効果的に働いてる。

「クィーン」(06年)より断然ベストな作品だと思います。


★3/15(土)から全国で公開。

「あなたを抱きしめる日まで」公式サイト
コメント (7)
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オール・イズ・ロスト ~最後の手紙~

2014-03-09 21:57:37 | あ行

このひとりぼっち描写は、新しい。


「オール・イズ・ロスト ~最後の手紙」71点★★★★


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インド洋をヨットで
単独航海していた男(ロバート・レッドフォード)は
ある日、水音で目覚める。

寝ている間にアクシデントがあり
ヨットに穴が空いてしまったのだ。

航行装置も故障、無線も使いものにならない。

男はひとりぼっちで
この困難に立ち向かうことになる――。

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「海上でひとりぼっち」は
よくある題材と思うけど、

新しいなあ!と驚いたのが

セリフがひとつもないことと
とにかく、主人公が冷静なこと!

レッドフォード氏演じる“男”は
どんな事態になっても慌てず、騒がず。

声を荒げることもなく、
黙々と破損した船体を修理し

いよいよヤバイ!という事態になっても、
あらゆる手段を高じて、対処しようとする。

その姿が、凛として立派。


しかし
危険を冒して修理した穴から
また水が漏れてきたりとか

ワシなんて絶対
呪いの言葉、吐きまくると思うよ。
いくら「shit!」言っても足りないと思うよ(笑)

オトナだなぁ、レッドフォード氏は。


まわり全部海!で変化に乏しいのに
さまざまな工夫で映像を組み立て、

過去の回想シーンとかもない。

観客は彼と一緒に、海上を漂流しながら
その孤独を体験し、

死に直結する、かすかな物音や異変に敏感になる。
もう臨場感満点っす。


圧倒的な孤独のなかで困難に立ち向かい
あきらめずに、生きようとしながら
自分を見つめ直していく、

そのコンセプトはある意味、
海上版「ゼロ・グラビティ」とも言えるかもね。

★3/14(金)からTOHOシネマズ シャンテ、新宿シネマカリテほか全国で公開。

「オール・イズ・ロスト ~最後の手紙」公式サイト
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アナと雪の女王

2014-03-08 23:21:36 | あ行

主題歌「Let it Go」をさっそくiPodに入れて
10㎞ランしてきました(笑)
アガるわ~


「アナと雪の女王」70点★★★★


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ある王国。

国王の幼い娘たち、姉のエルサ(声・イディナ・メンゼル)と
妹のアナ(声・クリステン・ベル)は
大の仲良し。

エルサには雪や氷を作り出す不思議な力があり
アナはいつも、その魔法をせがんで遊んでいた。

だが、ある出来事からエルサはその力を封印し
アナを遠ざけるようになる。

そして成長したエルサとアナが再び出会ったとき
運命が動き出した――。


******************************


先ごろ発表された
第86回アカデミー賞で長編アニメーション&主題歌賞をダブル受賞した
ディズニーアニメーション。


まず雪というモチーフが
CG表現にピッタリ。

雪の結晶のフラクタル、優雅に舞い落ちる雪
猛烈に牙を剥く吹雪……と、表情豊かに楽しませてくれます。


それになんといっても
姉エルサの繰り出す、魔法の描写が気持ちいい!(笑)

手から「ホイ!」と魔法が飛び出すような
こんなにベタで、でも「こういうの、やりてぇ~!」と夢見るような魔法を
見たのは久しぶりな気がする。

ドジで快活な妹アナのキャラにも、動きにも
弾けるようなリズムがあって

見ているだけで、もうね、素直にけっこう気持ちいい(笑)


姉と妹の二人が主役、という
Wヒロイン形式は
ディズニーアニメ史上初だそうですが

そのせいなのか

男が二人登場し
「おとぎ話に王子役が二人?!」とヒヤヒヤするなど
展開も意外に読めないのもなかなかでした(笑)

ミュージカル仕立てだけど
ドラマ部分も意外に多いのもとっつきやすいしね。

やっぱりアニメーションの原点って
赤ん坊がその動きに
ただただ、見入ってしまうような

生理的な音と映像の融合なんだな、と再確認しましたわ。

それがオスカー受賞の理由なんでしょうかね。


ただ同時上映のおまけショートアニメは“ザ・古典”というか。
ピクサーのそれとは全然違うなあと。


★3/14(金)から全国で公開。

「アナと雪の女王」公式サイト
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