ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ

2014-05-04 23:09:10 | ま行

カール・ラガーフェルド氏に
「ファッション業界ドキュメンタリーに最多出演賞」
「心が広いで賞」をあげたい。

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「マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ」69点★★★★


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モデル→スタイリストから
フランス版『ヴォーグ』誌の編集長となった
美しき59歳、
カリーヌ・ロワトフェルド。

彼女が2011年にヴォーグを辞め、
自分の新雑誌『CR』の創刊に向けて
ひたすら驀進する様子を写したドキュメンタリーです。

過去話とかはなく、
本当に彼女の“いま”のみを写しているのが特徴。

ヴォーグの編集長というと
やっぱり「プラダを着た悪魔」のモデル
アナ・ウィンター女史を思い浮かべますが

カリーヌさんは気難し屋タイプではなく、割と気さくな印象。

確かにグイグイ行くけど
いやな印象はないのが「へぇ」な点でした。


底意地悪い観客としては(ワシのこと)
「“いい人”なとこだけ
取り出して編集してるんじゃないの?」とか
ナナメ見な気持ちもあったのですが

宣伝会社嬢によると
本当に“いい人”らしいですね(笑)


籍は入れていないけれど、
30年同じ連れ合いと添い続けてるっていうのも
「へえ」と好感度高く


美人の娘と息子、さらに孫まで手に入れ
自らを「勝ち組よね」と言っても
イヤな感じをこちらに持たせないのは
なかなか出来る技じゃありません。

なんでかというと、たぶん
今年還暦にして
このスタイルのよさとバイタリティに
「美」に関わる人間として、ものすごく説得力があるんでしょうね。

バレエ・トレーニングによる老けない身体作り(見習おう・・・)
成功に甘んじず「過去と同じことはしたくない」という果敢さ
そして昨今、元気のない雑誌世界に「喝!」というパワー。

すごいなあと思いました。

ただ、さすがに93分、この調子だと
「やっぱり新雑誌の宣伝かね」と思ってしまう面もあるのは
致し方ないところでしょうか。

売り切れ続出の人気という『CR』、
実際、どんなものか見たくなりましたしね。
代官山蔦屋書店で2100円くらいだったかな。
中身はさすがに「ふーむ、なるほど」というものでした。

映画では
ブルース・ウェバーや、トム・フォードなど
興味深いメンツが登場し、
彼女との仕事について語るのも見どころ。

そしてやっぱり、カール・ラガーフェルド!
業界ドキュメンタリーで、この人が出ないことはないですよねえ。

本当に彼はいい人で、心が広いんだろうな~と
思うのですハイ。


★5/9(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「マドモアゼルC ファッションに愛されたミューズ」公式サイト
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プリズナーズ

2014-05-01 23:43:32 | は行

この映画は
ジェイク・ギレンホールが満点!


「プリズナーズ」72点★★★★


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全米の家族が絆を確かめ合う
感謝祭の日。

ペンシルヴェニア州の小さな町に住む
ケラー(ヒュー・ジャックマン)は

妻と息子、幼い娘アナを連れて、
友人宅で平和な時間を過ごしていた。

しかし、そんななかで
アナと友人の娘が、忽然と姿を消してしまう。

近くに不審な車が停まっており、
警察はすぐに運転手アレックス(ポール・ダノ)を
容疑者として拘束する。

だが、アレックスはアナたちのことを知らないと言い――?!

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「灼熱の魂」(おもしろかった!)の
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の新作。

幼い娘が失踪し
容疑者らしき男がすぐに捕まるが、
娘たちの行方は、依然として知れぬまま。

容疑者は釈放され、
納得いかない父親の取った行動は――?!という
スリリングかつ、モラルを揺さぶってくるストーリーを

153分も退屈させずに描き切った
なかなかのサスペンスです。

まさかタイトル「囚人」がそっちのことだとは……!という
かなり練られた話で、
稚拙な推理ではすぐに立ち行かなくなりました(笑)


失踪した娘を、死に物狂いで探そうとするあまり
常軌を逸していく父親を演じるのは
ヒュー・ジャックマン。

その人物像は気迫あるのものの
ちょい単細胞にすぎる。

でも、そこを補完するのが
事件を担当する刑事ロキ役のジェイク・ギレンホール。

この刑事、決して頼りないわけでなく、
いつも冷静で、

もっと親身になって欲しいのに
「おそらく警察はこんなものだろう」という一般的な失望を
まんま感じるようなキャラなんですよ。

しかし、そんな彼の意外な正義感や、洞察力が
事件解決への呼び水となっていく。

ヒュー・ジャックマンの圧倒的な“熱”に対する“冷”を
実に含みつつ、魅せるんですなあ。

この難しい芝居をこなしたギレンホールが
この映画の要だと、ワシには思えました。

ただラストは
「あそこで終わってよかったのに!」が2カ所あったり(笑)
釈然としない点もあり
ややもったいなかったですが
それでも見応えあるサスペンスだと思います。

チラシもこっちのほうが
切迫感あって好き(笑)。



本日5/1発売の「週刊朝日」(5/9-16合併号)ツウの一見で
ロバート キャンベルさんに
この映画を解説していただいたのですが

その見方の、深いこと!
それを伝えるお言葉の的確なこと!

あのシーンの、あの画角にこんな仕掛けがあったのか・・・と、改めて思いました。
ぜひ、ご一読を!

ラスト20分についてはまったく同感!(笑)で、
それも嬉しかったりしました。

★5/3(土)から全国で公開。

「プリズナーズ」公式サイト
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