ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ガール・オン・ザ・トレイン

2016-11-12 23:48:51 | か行

エミリー・ブラントが出る映画はおもしろい。
最近の“品質保証ガール”です。


「ガール・オン・ザ・トレイン」73点★★★★


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レイチェル(エミリー・ブラント)は
通勤電車の窓から、家々を見るのが日課。

彼女はある家に住む若いカップルを
“理想の夫婦”と思い、想像を巡らせていた。

ある朝、彼女は車窓から
衝撃的な光景を目にする。

それは“理想の夫婦”だと思っていた女性が
別の男と抱擁する場面だった――!

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世界的ベストセラーの映画化。


通勤電車の窓から見た不倫現場が、殺人事件に発展する――?という
ミステリーなんですが
想像とはちと違いました。

つまり、型通りのサスペンスではなく、
結婚、子ども、依存と自立――などなど
悩める“女子”事情をたぶんに盛り込んだ心理サスペンスだった。

ミステリーではあるので
できれば予備知識なくご覧いただきたいですが


このストーリーのおもしろさは
やっぱり
“電車の窓から見える人の暮らし”というモチーフだと思う。

確かに
走っている電車から、線路沿いの家って
よーく見渡せるんですよね。
で「その家に住んでいる自分」とか
そこに暮らしている人を勝手に想像したり。

ワシもよくやってますが(笑)
けっこうやっている人、多いと思う。

でもですね
ワシ、数年前に電車からよく見ていた家を、
物件として内覧したことがあるんですが

家の側から、走ってる電車って
全然、よく見えないんですよね。

見ている側と見られている側は
まるで違うということが、よくわかった。

まあ
実際に沿線沿いに住んでる方はご存じだと思いますが(笑)

それって結局
「幸せそう」とかこっちが勝手に想像しているものが
実は違うんだよ、ということなのかもしれないと
そのとき思った。

この映画が描くのも、まさにそれなんですね。

レイチェルが見ている“理想の夫婦”っぽい女性にも
レイチェルの夫を奪って、幸せいっぱいに見える女性にも
「いろいろある」ってこと。

隣の芝生は青い。
因果応報。

こうしたベーシックさが
ベストセラーの理由なのかもなと思いました。

そして
ラストの「あれ」も
たしかになかなか衝撃でした。


★11/18(金)から全国で公開。

「ガール・オン・ザ・トレイン」公式サイト
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湾生回家

2016-11-11 23:47:51 | わ行

台湾という土地と人々の温かさが、沁みる・・・(泣)


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「湾生回家(わんせいかいか)」70点★★★★


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1895年から1945年まで
日本に統治されていた台湾。

その台湾で生まれ育ち
しかし敗戦によって、日本へ強制帰還させられた
「湾生(わんせい)」と呼ばれる日本人の人々を
台湾の監督が追ったドキュメンタリーです。

まさに「海角七号 君想う、国境の南」で
描かれた背景ですな。


映画は数人の湾生たちに密着し、
その人生と現在を追っている。

湾生の人々はみんな故郷の台湾に恋い焦がれているような感じで
何十年ぶりに台湾を訪れて、旧友に会ったり
昔の場所を訪ねたり、
逆に日本で自分のルーツを再発見したり。


これがなかなかドラマチックで
しかも過剰でなく、自然。

なんといっても
湾生の人々を迎える、台湾の人々が
本当に優しいし、あったかいんですよ。

みな日本語を話せるし、親日だし。
湾生の人々を惹きつけるものは、
この人と土地の懐深さと、おおらかさによるところが大きいんだろうなあと感じた。

「セデック・バレ」でも描かれたように
日本の統治による負の面も
いろいろあると思うけど
人と人のレベルの“つながり”が自然に行われる
この感覚が、なんだか嬉しい。

台湾でも大ヒットしたそうですが
なるほど納得です。


通販生活web「今週の読み物」
ホァン・ミンチェン監督にインタビューをさせていただいたんですが

1970年生まれ(同い年!)の監督は
かなりの日本映画好きで
是枝作品のなかでのベストは「歩いても 歩いても」なんだそう。

「一緒!」と思わず盛り上がりましたが(笑)
そんな市井目線と感覚が、この映画にもあるのかもしれない。


日本人監督が
この時代の台湾の人々の心境を描いたドキュメンタリー

「台湾アイデンティティ」(13年)
もあったし

日本と台湾の関係は、知れば知るほど、もっと知りたくなる。
おもしろいですねえ。


★11/12(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「湾生回家」公式サイト
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誰のせいでもない

2016-11-10 23:07:56 | た行

なぜ、これを3Dで撮ったのか。
その秘密がわかると
じわじわと、きます。

「誰のせいでもない」3D 72点★★★★


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凍てつく冬のカナダ・モントリオールの郊外。

作家トマス(ジェームズ・フランコ)は
新作の構想に悩みながら、田舎町を走っていた。

そのとき突然、目の前に
ソリが滑り落ちてくる。

急ブレーキをかけたトマスの前には
放心した様子の幼い少年がいた。

悲劇は回避したかに思えたが、
トマスが少年を彼の家に送っていくと
母親(シャルロット・ゲンズブール)は血相を変えて――?!


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ヴィム・ヴェンダース監督、7年ぶりの劇映画です。

まず
なんとも掴みにくいというか。

イメージするような
サスペンスやミステリーではないんです。

避けられなかった事故を起こした作家(ジェームズ・フランコ)。
その事故で、幼い息子を失った被害者(シャルロット・ゲンズブール)。

作家の精神はどん底になるんだけど
しかし被害者までもが
「あなたのせいじゃない」と言ってくれる。

そして
作家は行き場のない思いと過去を抱えながら
年月を重ねていく――という話。


描かれるのは
贖罪や後悔、懺悔とも違う。

起こってしまったことは、二度と元には戻らない。
そうした“過去”が人に
どんな傷や痕跡を残すのか――

それを観客に、主人公と同じ時間と空間を味合わせながら
体験していくような感じなんですね。

そのための“3D”なんですよね、これ。

というわけで
明確なサスペンスやミステリーを期待すると
肩透かしを食らうと思う。

ワシも最初、そうだったし
主人公のジェームズ・フランコが端正すぎて、
苦悩する人物に結びつきにくて、うまく入り込めなかった。
見た直後は67点くらいかと思った(笑)

が、しかし。

見終わっていまもじわじわと
余韻が蘇って、自分の何かを侵食していく感じがあるんですよ。

けっこう、すごい映画かもしれません。


★11/12(土)からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で公開。

「誰のせいでもない」公式サイト
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オケ老人!

2016-11-08 23:58:39 | あ行

杏さんの声は
よく通って聞き取りやすい。


「オケ老人!」69点★★★★


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学生時代にバイオリンを弾いていた
数学教師の千鶴(杏)は

文化会館でアマチュアオーケストラの演奏を聴き、
素晴らしさに感激する。

その夜、ホームページでオーケストラを調べ
「入団したい!」と電話をかけると
あっさりOKの返事が。

が、翌日。

胸を躍らせて練習会場に行くと
集まってきたのは
昨日の舞台に立っていたのとは違う、老人たちばかりで――?


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勘違いから
老人だらけの交響楽団に入団してしまった
若きバイオリニスト(杏)が

イヤイヤながらも彼らを指導することになり
自分も成長していく――という
王道&よいムード間違いナシ、な作品。

このテーマにして
上映時間119分はちょっと長く
まどろっこしいところもあるんだけど

主演・杏さんの声はよく通って聞き取りやすいし
キャラは優柔不断なんだけど、動きがテキパキ、キビキビしていて
見ていて気持ちがよい。

コメディエンヌの才能あり!と感じました。


見どころは
耳は遠いわ、リズムは遅いわの下手っぴ団員たちが
どれだけ上達するのか?!にあるわけですが

この不可能を可能にする様がけっこう本当に大変そうで(笑)
なかなか魅せます。

あと見せ場はやっぱり
日本が誇る“シニア”キャストが揃い踏みなところかな。

笹野高史、左とん平、小松政夫、石倉三郎、藤田弓子――(敬称略)
名優たちの競演が見どころです。


★11/11(金)から全国で公開。

「オケ老人!」公式サイト
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ジャック・リーチャー NEVER GO BACK

2016-11-07 23:38:55 | さ行

これの続編、なんですね。
「アウトロー」


「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」70点★★★★


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陸軍のエリート指揮官だったジャック・リーチャー(トム・クルーズ)は
軍を退任し、アウトローな立場で
世の中の悪に対し、正義を下していた。

あるとき、ジャックは
連絡を取り合っていた軍のターナー少佐(コビー・スマルダーズ)が
国家反逆罪で逮捕されたと知る。

彼女は、何かの罠にかけられたようだった――。

彼女の無実を証明するため
ジャックは動き出すのだが――?!


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前作でジャック・リーチャーの侍キャラが
けっこう好きだったワシ。

今回は一匹狼な彼に、女子二人というバディが加わって
ハードボイルドさはないけど、
柔らになったというか
見やすくなったかもしれない。


ジャック・リーチャーって
ボーンみたいなものなんですよね。

陸軍のエリートだった彼は
危機管理能力や反射神経がめちゃ高い。

その能力で敵の行動や物事の先をスルスルと先読みし、
たった一人で権力にも立ち向かう。
そのおもしろさを我々が堪能する、という。

前作では
「このキャラ、トムさんでなくてもいいんじゃない?」なんて言いましたが
あれから3年?

いやあどこまでも“第一線”を貫ける
彼のスターオーラって、やっぱりすごいっす。

ハードボイルドキャラに
絶妙に「プッ」とさせるおかしみも加わり


これまた「あり得ないでしょ?」ってくらい
高所からガッツン落ちたりしてるけど
ホントにこの人、やってるからなあ・・・(苦笑)

54歳のトムさんが
まだまだ(無理ない程度に)がんばってるのを見るだけで
嬉しくなるってのも
同時代っぽくて、それはそれでいい(笑)


★11/11(金)から全国で公開。

「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」公式サイト
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