雨が降ると、森がいきいきとして見えるのは気のせいだろうか。
雨の中をオートバイで走ると、いつもより路面に気を使う分、
周囲の様子に対する観察眼がおろそかになりがちだけど
雨の時の森が、実に生命力に満ち溢れていることは
なんとなく以前から感じていた。
だからやっぱり気のせいなんかじゃあなくて
森は雨をよろこんでいるんだと思う。
それにしても森は不思議だ。
雑然と木々が生えているようで、実はそこにきちんとした秩序がある。
淘汰されていくものもあれば、しぶとく光を受けて生き残るものもある。
この県道は中央に苔の帯がつづく。
雨に濡れると思わぬ挙動にひやっとすることもある。
オートバイとはいえ、軽自動車との離合も困難な道幅だ。
2速ホールドで慎重にカーブをこなす。
県道435号線で寒狭川を渡り、海老へ抜ける峠を越える。
周囲の国道や県道(主要地方道)へ廻った方が楽なので
大抵の人はこのルートへは入らない。
何度か走ったことがあるが、海老へ出るまでに
クルマと擦れ違ったことは・・・ないかな。
途中、大きな朴ノ木が上空で枝を広げていた。
1本生えているだけなのに、枝を広げた姿は巨大で
多くの木々がひしめく森の中での存在感は特別だった。
秋になるとその大きな葉っぱをすべて振い落して、根元に積もらせる。
朴の木はアレロパシーと呼ばれる他感作用によって
樹冠下の他の植物の発芽を抑制するため
この木のように独立してそそり立っているものらしい。
大きいものだと高さが30メートルにも達する巨木種だ。
ヨーロッパ大陸のアウトバーンを疾走する雄姿の面影も薄く、
極東アジアの林道を這いずり回る銀じぃことR100RS。
前にも書いたけど、このオートバイは実はこういう道も得意で
そんな性格が日本人に愛されている理由なのかもしれないと
ボクは信じている。
この日何度目かの雨宿り。
ずぶ濡れの銀ジィと、ずぶ濡れのカッパを着たおっさん。
黄昏色の時間が流れる、そんな雨の一日。
RTってトラクションコントロール付いてませんでしたっけ?
コケや落ち葉の道こそRTですね。