アーバンライフの愉しみ

北海道札幌近郊の暮らしの様子をお伝えしています。

それなりの~葉室麟著「紫匂う」

2014年08月07日 | 読書三昧
直木賞作家、葉室麟氏の最新作を読んだ。
12年12月から翌13年6月まで全国17紙に連載された新聞小説。



物語~剣の達人ながら凡庸な夫と二人の子どもとともに穏やかに暮らす澪(みお)。藩校の秀才で側用人にまで出世したかっての恋人との再会は、澪の心を揺らすことに・・・。

最近の同氏の作品に物足りなさを感じていたので、あまり期待もせず読み進んだが、新聞小説ということもあって筋立てがはっきりしていてそれなりに楽しく読むことができた。

しかし、内容も文章も人妻ものとしての常識の域を出ず、また、かっての思い人だった秀才の人物像もあいまいで魅力的でない。何故、主人公がそのような人物を慕っていたのか説得力に欠ける。

このところ、同氏の新作「月神」、「潮鳴り」そして「山桜記」と読んで来たが、受賞前後にはあった書くことへの喜びや、新鮮さが伝わって来ず、且つ、文章の切れもなくなっているようで、このままでは大成は望めそうもない。

言い方を変えれば、彼の引き出しにはかぎりがあるということだろう。
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