1999年上半期第121回直木賞受賞作。
講談社刊、2段組み365頁の大作。
北海道支笏湖畔の別荘で発生した幼児失踪事件を縦糸に、それを取り巻く人間模様を冷徹な眼で活写した問題作。
硬質な文章と巧みな構成で、読者を虜にする上質のエンターテイメント。
例えば、昔、新田次郎氏の「銀嶺の人」などを徹夜して読んだことを思い出すほど夢中で読んだ。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)
桐野さんは現在、日本ペンクラブ会長として、昨今の軍事化の世相に警鐘を鳴らしている。
選者評:阿刀田高氏
「きっかりとした構造を作り上げ、その舞台の上で、それぞれの登場人物が持つ心の闇をあぶり出している。どの登場人物も必死になって生きる手応えを求めているのだ。それがこの作品のモチーフなのだ。最後の数十行を人間たちの心の闇を伝える深遠な寓話として読んだ。」