花になるらん: 明治おんな繁盛記 | |
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新潮社 |
史実を元にした物語の場合、どこまでが事実なのかついつい考えながら読んでしまう。今期の朝ドラは小説にも舞台にもなってる人をモデルにしつつも新しい人物像らしく、それはそれで混乱が…。作り物として楽しむにはそのあたり距離を置く方がいいでしょうね。
この作品は、京都の某百貨店の創業者のご寮人を描いています。たぶん限りなくあの百貨店がモデル。
近代、価値や文化が急激に変わる時代、またその中で舵をとった女性を主人公にすることが多い玉岡かおるさんの新作。しかも、関西が舞台なので、読み手は多少選ぶかもしれませんが、実話的な話の展開を元に心の機微や情を繊細にすくいあげています。
ご寮人さんの一人称と三人称が交差するため、ご寮人さんそのひとが立ち上がってきます。
読んでいて、価値観が変わる時代の空気を感じるし、関西はわりと商売人の女性の地位が高かったと聞きますが、それでも参政権が与えられるのはずっとずっとあとなんだなあと思ったり。
女性の一生を追い、あっという間に読み終えました。