被災地の「怪談」に宿る温かさと喪失感 東北ならでは死者との向き合い方 #知り続ける
東日本大震災の後、東北の津波被災地では「怪談」があちこちで聞かれるようになった。見知った人が立っていた、亡くなった父が呼んでいた……。自然災害が多い日本だが、なぜ3.11で被災した東北では「怪談」が多いのか。実際に不思議な体験をした人たち、各地での「怪談」を聞き取ってきた怪談作家や東北民俗学に詳しい出版社代表らに話を聞いた。(文・写真:ノンフィクションライター・山川徹/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
Yahoo!ニュースに興味深い記事があったので引用する(斜体)。
仮設住宅に知り合いのおばあさんが訪ねてくる。茶飲み話をして、おばあさんが立ち去ると座布団が濡れている。そこではじめて茶飲み仲間たちは「そういえば、あのばあちゃん死んだんだっけな」と気づいて笑う。 「あのばあちゃん、物忘れがひどくなってたから、自分が死んだの忘れてんのかもな。そのうち気づくべ」 土方さんは「怪談は誰かの体験談に尾ひれがついて広まっていく。いつ誰が語ったか分からない話がほとんど」としつつも、被災地で語られる怪談にはひとつの役割があると続ける。 「倒壊家屋が何軒だった、何人が犠牲になったという被害の客観データはこれからも残るが、人の思いや感情は記録しない限り、消えてしまう。怪談は被災した人の気持ちを残す、ひとつの器なのではないか」
(中略)
ある被災地で横断歩道に幽霊が立った。幽霊は、日を追うごとに2人、3人と増えていく。話はここで終わらない。なんと幽霊が事故に遭わないように、他県から応援にきた警察官が交通整理を始めたというのである。語り手は「地元の警察官じゃないから幽霊って気づかねえんじゃないか」とオチをつけて笑う。
「ストレートに怖さを強調する怪談が増えたような気がします。初めは違和感があったが、最近はそれもひとつの役割なのかなと考えるようになった。語り継がれることで、災害の恐ろしさが伝わり、防災意識につながっていくかもしれませんから」
それに、と土方さんは言葉を継いだ。
「被災地で語られる怪談は“どんど晴れ”なんですよ」
どんど晴れ、とは岩手県の方言で民話や昔話のシメの決まり文句だ。「これでおしまい」というような意味合いで用いられる。
「亡き人を語るのは怪談というより世間話なのでしょう。話し手は怖がらせようとしていない。みんなで笑顔で亡くなった人の思い出話をしている感覚に近い」
被災地の「怪談」に宿る温かさと喪失感 東北ならでは死者との向き合い方 #知り続ける(Yahoo!ニュース オリジナル 特集)
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