If You're Lonely Track 1 - Cruel Wind VIDEO
1972年の初のソロ作品である。
非常に評価が高く、ネットにおいてこの作品を悪く言う人はいない。私のブログ仲間では「240」さんが、ご自身のブログ「音楽の杜」において2010年4月、9月にこのアルバムと次の作品を詳しく説明しているので、是非ご覧いただきたい。渾身のレポートです。
私はというと、この人がリアルタイムでは日本ではどうだったかという話から始めたい。
1972年というと私が小学校6年生。まだ洋楽を聴いていないので、この作品については知らないのが当然である。でも、次の「Cul- De-Suc」は1974年、中学2年生なので、私はガンガンに洋楽を聴いている。ラジオと当時の愛読書「ミュージック・ライフ」とFM音楽雑誌が情報ソースだった。
でも、私はエリック・カズを知らなかったし、周りの音楽友達も聴いていなかった。私は中学3年生の時、レオン・ラッセルに夢中になった時期もあるから、全米ヒット曲ばかり聴いてたわけではないのだが、全然知らなかった。中村とうよう氏が編集長をしていた「ニュー・ミュージック・マガジン」は苦手だったから読んでなかったのだが、たぶん、「ニュー・ミュージック・マガジン」なら、けっこう載せていたかもしれない。アメリカの泥臭いロックの論評とか多かったしね。
何を言いたいかというと、1970年代前期、この人は日本ではほぼ無名だったということだ。知る人ぞ知るシンガー・ソング・ライターと言う感じだったはず。でも2020年現在では、ネットを中心に初期のソロ2枚が絶賛されているわけで、時間をかけて、日本の洋楽ファンにその名声を高めていったのではないかと推測する。たぶん、当時のリアルタイムの音楽ファンより、後追いの若い音楽ファンの方が、書籍やネットで、当時の音楽状況を俯瞰しているので、詳しい傾向にあるのではと思う。
さて、このファースト・アルバムの話である。
いろいろな表現がある。
「SSW(シンガーソングライターの略。いつからこんな略し方になったんだ?ネットではこの表現が当たり前となってる。)ブームの中で出てきたアーティストの一人。」「早すぎたAOR。」「AORの始まり。」「ニューヨークの腕利きセッション・ミュージシャンがバックを固める傑作。」「素朴だがおしゃれ。」「ゴスペルやスワンプ調を取り入れた作品。」等々。
まず、音がオシャレだ。確かな腕があるミュージシャンの演奏と豪華な女性コーラスが全体に溶け込んでいる。でも、基本はエリックの素朴で暖かい声だ。歌はうまいわけではないのだが、聴くものを虜にする不思議な声と歌い方である。メロディも特にポップではなく、どちらかというと渋い感じである。ヒット曲になりそうな感じではない。でも、スルメのように聴けば聴くほど味が出てくる。これがたまらない。
この作品は次作に比べると、どちらかと言うと静かな印象だ。それだけに、聴きこみたくなる作品と言える。
まあ、ツッコミどころはある。それは、アルバムタイトル曲である「If You're Lonley」はS&Gの1970年発表の「明日に架ける橋」っぽいメロディが出てくる。まあ、エリックはアート・ガーファンクルに曲を提供しているから、問題になってはいないのだろうけど・・・。また、「When I'm Gone」は何となく「LET IT BE」に似てる感じがする。まあ、ご愛敬としてとらえられる程度だ。なんだかんだ言って、いい曲なので、ここにアップします。胸にしみいるエリック・ジャスティン・カズの不思議な歌の力を感じてほしい。
とにかく、このファースト・アルバム、丁寧に細かく作られた作品で、一曲が短いというところが好感が持てる。
一人でじっくり聴きながら作品に向かい合いたいと思ってしまう。
If You're Lonely Track 2 - If You're Lonely VIDEO
If You're Lonely Track 8 - When I'm Gone VIDEO
次回はセカンド・アルバムを取り上げます。