様々な楽器、手に触ったこともない者にとっては、まるで未知の話です。
見る物、聞くこと、すべて、初めて知ることばかりでした。
大きな楽器、小さな楽器、かさばる楽器、演奏者は様々な、思いや、愛情をもって、接しています。
演奏のための、工夫、楽器への心配り、それこそ、自身の生活の一部、あるいは、全神経を傾けていると
言ってもよいくらいの種があるようです。
大事に大事にしているというのは、以前、オーケストラとの練習時に、感じたことがあります。
整然と並んだ楽器と椅子。
演奏者が、椅子の合間をぬって席に着くと、愛おしげに楽器を手にとり、チューニングしたり、布のようなもので、拭ったり、何やら調整のようなことを始めます。
合唱団へは、「楽器には決して、さわらないこと」との注意があります。
職人さんの道具への愛情と、同じようなものかもしれないと思いました。
楽器は、人と同じように、一つひとつ、違うということが、わかりました。
演奏者の楽器への心配り、繊細な楽器との付き合いというものも、知識としてだけですが、よくわかりました。
オーケストラが好きになる事典
緒方英子
新潮文庫