ここ、数年の間に、飛躍的に広まったソーシャルメディア。
携帯電話が、ひたひたと、普及を始めたのには、多少時間がかかっていたように思う。
iphoneなるものが登場したと聞いてからは、普及の波は、それこそ、潮の満ち引きの
ような勢いだった。
スマホと呼ばれる端末を持つ人があっというまに広がった。
電車に乗ると、7割くらいの人がスマホに夢中。
ゲームをしたり電子本を読んでいたり、何やらに興じている。
電車との接触、交通事故などの、危険行為や事件も増えた。
メールも普及した。
「友達」という言葉が、「トモダチ」として広がった。
一度もあったことのない「トモダチ」ネット上だけでの付き合い。
そうした、少し前には、水面下だったことが、どんどん、生活の中に浸透してきている。
人間関係、ヒト社会は、地域、隣近所、町内、勤務先、趣味、こども、などで、関係が広がっていくものだった。
最近の傾向は、閉鎖的。
隣近所は、挨拶もない。旅行などで家をあけても、お隣さんへ、留守にしますとも話さない。
何人の家族で、どういう暮らしをしているのか、ご近所でも、知らない。
携帯電話や、スマホに登録されているのは、あったこともないハンドルネームのついた判読できないローマ字や、記号が並ぶ。
携帯中毒、チャット仲間、ゲーマー等。
人が人とつながるのがネットの世界。
人間関係が様変わりして、「トモダチ」の意味も軽くなった。
知人と面と向かっていながらネット世界での「トモダチ」とのメール。
一つの部屋、同じ電車に乗り合わせながら、手元のゲームや、音楽に興じていたり、化粧中であったり、隣り合わせのものは、皆他人。言葉どころか視線さえあわさない誰もが一人ぼっち。
人のぬくもりが欲しい潜在意識が、見知らぬ者のメールアドレスとなって、その者達を「トモダチ」と呼ぶ。
群れを成すのが人の社会なのだということを再認識した。
ウェブ社会のゆくえ
<多孔化>した現実のなかで
鈴木謙介
NHKBOOKS NHK出版