沖縄都市モノレールは、那覇空港から首里駅までの全ての駅で、駅に停車する直前の車内アナウンスで沖縄の民謡、あるいは、沖縄の童歌が流れる。その曲は全ての駅でそれぞれ違う。そのほとんどの曲を、それが何という曲であるかを私は知っている。知ってはいるが、今ここで、どの駅ではどの曲ということを述べることはできない。なぜなら、そんなこといちいち覚えてないからだ。私の衰えた脳味噌に、今そんな余裕は無い。
とはいっても、いくら衰えた脳味噌とはいっても、そのうちのいくつかは覚えている。終点の首里駅では古い童歌である「赤田首里殿内」という曲。首里駅がもっとも利用の多い駅だからという理由(わけ)があって、記憶にある。次の儀保駅の曲も覚えている。「芭蕉布」という沖縄の唱歌のようなもの。これはわりと新しく、今から40年前の1965年に発表されたもの。歌詞もウチナーグチ(沖縄口)では無く、ヤマトゥグチ(大和口:標準語のこと)。子供の頃からよく聴いていて、よく知っている曲であり、また好きな歌でもあったので、よく歌いもした。なわけで、儀保駅の曲は脳味噌に刻まれている。
沖縄都市モノレールを利用する機会はあまりないが、出かけるとき、目的地がモノレール駅から近い場合には利用する。私の住まいから最寄り駅は首里駅。最寄といっても徒歩30分近くかかる。夏の暑い日、それも太陽がガンガン照りつける昼間などには徒歩30分は辛い。そのような時、かつ、急いでもいる時などにはバスに乗って、儀保のバス停で降りて、モノレールに乗り換えることもある。お金は余分にかかる。
バス停から儀保駅へ向かって歩いて行くと、正面にオオバナサルスベリの大きな木が見える。確か15年前か、もっと前に植えられたもの。植えられた当時、きれいな花が咲く珍しい木だと話題になった。それが今、花を咲かせている。
オオバナサルスベリの写真はしかし、わざわざ儀保駅まで出かけなくても撮ることができた。近所に、オオバナサルスベリを玄関の前に植えている家があるからだ。こっちの方もなかなかの大きさ。儀保駅のより4、5歳若いかな?といった程度。
オオバナサルスベリ(大花百日紅):公園・庭園
ミソハギ科の落葉高木 原産分布はインド 方言名:なし
成長が速いので適宜の剪定を要するが、高さ10mほどに留まるので民家の庭でも使える。条件の良い場所では樹冠にたくさんの花を咲かせてくれる。サルスベリの属の中ではもっとも花が大きい。で、その通りの名前となっている。
耐潮風性が弱いので海岸近くの植栽には向かない。陽光地で風当たりの弱い場所にあると花付が良い。花色は赤紫から青紫まで。開花期は7月から10月。
花
実
記:島乃ガジ丸 2005.8.15 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
今年(2011年)2月中旬、海洋博公園を訪れ、公園内の植物園を散策した。植物園には名札がかけられてある植物が多い。今まで知らなかった、あるいは見つけることのできなかった植物に出会い、その写真を撮れると期待できる。
その期待通り、図鑑を観て名前は知っているが、実物にはまだ出会っていない植物がいくつもあった。しかも、期待通りにその多くには名札があり、家に帰って写真と図鑑を見比べて、これは何者かと調べる手間も省けた。
図鑑を観て名前は知っているが、実物にはまだ出会っていない植物の中でも、エゴノキは花が下向きに咲き、純白で芳香があるということで、図鑑の写真とともに私の記憶にあり、出会いたいと思っていた植物の一つ。
大きな看板にエゴノキの名前があり、この一角にエゴノキがあると判った。そう広い一角では無かったので、エゴノキを探して3周する。しかし、私の記憶にあり、その特徴でもある花が見つからない。樹木に掛けられたどの名札にもエゴノキという名前は無い。よって、どれがエゴノキか判らない。「花の時期じゃ無いのか」と諦める。
家に帰って図鑑で確かめると、エゴノキの開花は12月から3月とあった。「なら、今が盛りじゃ無ぇか」と思って、ハタと気付いた。おそらく、エゴノキはそこにあって、花も咲いていたのだ。ちょうど、ヒメサザンカも花の盛りで、同じ白い花で、その近くにエゴノキも花を咲かせていたに違いない。しかし、注意深さに欠ける私は、どれもヒメサザンカと思い込んで、その存在に気付かなかったのであろう。
エゴノキの写真は後日(約一ヶ月後)、平和創造の森公園へ出かけ、撮った。
エゴノキ(斉○果):公園・添景
エゴノキ科の落葉高木 原産分布は北海道南部以南、沖縄、他 方言名:ロクロギ
広辞苑に「斉○果の字を当てるが、・・・」という記述があったが、○の字が難しい字で、当用漢字では無い。ゴチャゴチャしていてどういう字なのか老眼鏡をかけても判らなかった。エゴノキという名前の由来は『野外ハンドブック樹木』に「実の皮が有毒で、これを食べた時、喉を刺激してえごいところからでたものと思われる」とあった。別名をロクロギと言い、これは方言名にもなっているが、挽物細工の材に使われるところから轆轤木だと思われる。もう一つ、シチャマギという方言名もあるが、これについては不明。
果皮は有毒で魚毒に使われ(魚毒による漁は、今は禁止されている)ていた。種子からは油が採れ、また、サポニンを含んでいて、石鹸としても利用された。材は床柱などに使われ、挽物細工・玩具などにも利用されるとのこと。
高さは10mほどになる。陽光地を好み、乾燥地でも湿地でも土壌を選ばず、成長は速い。自然に円錐形の美しい樹形となり、剪定は好まない。花は白色、芳香があり、房状となって下向きに咲く。開花期は12月から3月。採種期は9月から11月。
花
実
花の群れ
記:島乃ガジ丸 2011.3.22 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『名前といわれ野の草花図鑑』杉村昇著、偕成社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野山を楽しむ植物の本』屋比久壮実著、発行
『海岸植物の本』アクアコーラル企画発行
『花の園芸大百科』株式会社主婦と生活社発行
『新しい植木事典』三上常夫・若林芳樹共著 成美堂出版発行
『花合わせ実用図鑑』株式会社六耀社発行
『日本の帰化植物』株式会社平凡社発行
ここ20年ばかりは、概ね2ヶ月に1回、私は散髪屋へ通っている。短く刈ってもらって、それが鬱陶しくなるまでほぼ2ヶ月というわけである。若い頃は、今よりも髪の毛の伸び方が速かったのだろうけど、散髪屋へ通う回数はしかし、今よりずっと少なかった。散髪屋へ行くのが面倒臭かったのである。貧乏だったので、散髪代を惜しんだということもある。高校から大学にかけては、肩までかかる長髪とさっぱり短髪(まれにではあるが、エーイ、鬱陶しい!と角刈りにもした)を繰り返していた。今でも散髪は面倒臭いと思っている。が、今はそう貧乏でも無いので、2ヶ月に1回となっている。
「髪を切ったのにも気付かない」などと、女は男を非難したりするが、髪の毛がどんな形であろうと、その人がその人であることにはちっとも変わりが無いだろう。髪の形なんてどーでもいいこと、と男は(少なくとも私は)思うのである。
私の場合は、長い髪の毛の時と短い髪の毛の時とで、中味はもちろん何の違いも無い。丸刈りにしたり角刈りにしたりして、サングラスをかけた場合にはヤクザのような雰囲気になるが、2ヶ月の長さの違い位では、見た目でもほとんど印象は変わらない。長い髪の私と短い髪の私とを比べた場合は、それは、「どんぐりの背比べ」となる。
「ねえ、軽くパーマかけたんだけど、前とどっちがいい?」と訊かれてもだ。男にとってはどっちでもいいや、と思うことなのであるが、この場合、「どんぐりの背比べ」などと言ってはいけない。「どんぐりの背比べ」は、比べる価値も無いような、取るに足らないことに対して言うので、女性に向かって言ってはいけない。喧嘩になる。
どんぐりは団栗と書き、主にブナ科の植物の果実のことを言う。果実は、毛糸の丸い帽子を被ったような形をしているのが特徴。沖縄にも団栗の成るものがいくつかある。オキナワウラジロガシ、イタジイ、マタバシイなど。今回紹介するウバメガシもそう。
ウバメガシ(姥目樫):主木・添景・生垣・盆栽
ブナ科の常緑高木 関東南部以南、伊平屋、伊是名などに分布 方言名:ウルフギ
樫は、「ブナ科コナラ属の常緑高木の一群の総称」(広辞苑)で、本種もその一種。ウバメの漢字、広辞苑には姥目とあったが、姥芽、または姥女とする文献もあった。姥とは老女とか老婆とかの意味で、若葉が褐色をしているからウバメ(姥芽)というらしいが、老婆の色は褐色である、ということなのだろうか。別にウマメガシという名前もあり、これは、葉の形が馬の目に似ているところから馬目樫ということらしい。
樫という漢字から想像できるように、材は堅い。本種はご存知、備長炭の材料として用いられ、叩けば金属音のする、すごく堅い炭になる。
高さ10mほどになる。陽光地を好み、成長は遅い。乾燥地で生育が良く、耐潮風性も強いので海岸近くの植栽にも向く。花は目立たないが開花期は2月。
他の樫の仲間同様、本種も果実が「どんぐり」と呼ばれ親しまれている。私は食したことは無いが、本種の果実は渋みが少なくて食えるとのこと。結実期は10~11月。
萌芽力が強く刈り込みが効くので、段作りにして主木となる他、生垣にも使える。
葉
記:島乃ガジ丸 2006.1.23 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
本土にはあって、沖縄には無い植物はたくさんある。サクラのソメイヨシノも沖縄には無い。ケヤキ、モクレン、ユキヤナギ、キンモクセイ、なども無い。私の旅の楽しみは、酒と旨い物だが、そういった植物を観察できるのも楽しみの一つになっている。
今はアメリカに住んでいるが、義兄の実家は静岡にある。数年前、彼が帰省したおり訪ねる機会があった。義兄の実家のある町には同じ木で生垣をしている家が多くあった。木はイヌマキだった。イヌマキは沖縄にもあって、原産地の範囲にも含まれている。沖縄ではイヌマキを生垣に用いているのをあまり見たことが無かったので「へぇー」と感じたのであった。しかし、後日、文献を調べると、その用途として「生垣や防風林」とあったので、私の不明であったようなのだ。
今は、でも、沖縄ではイヌマキの生垣は少ない。庭木としても減ってきている。細い葉も涼しげで、自然樹形も整っており、刈込んで形を作ることもでき、庭木として優れているのだが、いつの頃からか、キオビエダシャクが発生するようになった。この虫はイヌマキの葉を好んで食べるようで、他の樹木にはあまり見ない。暖かくなると大発生し、幹を蹴るとキオビエダシャクの幼虫が何十匹も一遍に、簾のように垂れ下がる。特に女性たちから嫌がられ、嫌がられるのは虫なのではあるが、坊主憎けりゃということだろう、庭木としての需要が少なくなったのだ。
イヌマキ(犬槙):庭木・公園樹
マキ科の常緑高木 国内では関東南部から南西諸島に分布 方言名:チャーギ
昔は、イーク(モッコク)、チャーギと並び評され、木材として重宝された。木材としてのイヌマキは腐朽しにくい性質を持ち、沖縄の古い建物、木造赤瓦葺には軒の柱材としてよく用いられている。肌質もきめが細かく美しいので、床柱としても利用されている。
仕立物
記:2004.10.6 島乃ガジ丸 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』?沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』?海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
先週末、国際通りを安里からパレット久茂地前まで歩いた。パレット久茂地にあるリウボウホールで、東陽一の初期の作品を上映していて、それを観るのが目的。国際通り全線を歩いたのは、若い女がわんさかいるだろうと期待して、目の保養を兼ねての散歩。
日曜日の国際通りは、期待通り若い女がわんさかいた。若くない女も、女でない老若もわんさかいた。目立って多かったのは修学旅行の高校生。女子高生を見るのは好きだが、高校生は男も女も傍若無人に闊歩したり、たむろしたりするので、通行人としては好きでない。国際通りは、まだ工事の途中のようだが、以前に比べて歩道が広くなっている。それにも関わらず歩きにくいのは、高校生たちが横に並んで歩いているからだ。腹は立つのだが、女子高生は可愛くて怒れないし、男子高生は怖くて怒れない。オジサンは我慢しつつ歩いたのだった。
年間の観光客数が500万人を越える今、国際通りを歩く人のたぶん半分以上は観光客となっている。地元ウチナーンチュはどこへ行くのかと言うと、新しい街、北谷アメリカンビレッジや那覇新都心、その他、郊外の大型ショッピングモールに流れている。
このままでは地元客に見捨てられかねないと、国際通りの通り会は危機感を持っている。いろいろアイデアを捻って、楽しい通りにしよう、歩きやすい通りにしよう、人が集まる通りにしようと計画を立てて、今、その計画を実行に移しつつある。
その一環の歩道拡幅工事なのだが、国際通りは街路樹にイスノキを使っていた。そのイスノキが今、撤去されつつある。通り会はイスノキを撤去し、花の咲く樹木に変えたいとでも思っているのかしらないが、イスノキは狭い歩道の街路樹としては、最適なものの一つだと私は思う。
元々すらっとした姿、枝も適度に横に広げる性質。剪定などの管理をきちんとすれば、枝が建物に当たることなく、でも、木陰はちゃんと作ってくれる。それも年中。
夏の炎天下は言うまでも無く、冬でも日焼けするほど陽射しの強い沖縄、その歩道に、木陰は無くてはならないものだろう。できれば植栽間隔を狭くして、緑のトンネルを作って貰いたい。日傘を差さなくて済むようになれば、歩き易い歩道になるだろう。
イスノキ(柞):街路樹・公園樹・庭木
マンサク科の常緑高木 国内では近畿から南西諸島に分布 方言名:ユシギ
街路樹にイスノキは多い。高さ20mほどまで伸びるが、成長速度が遅く、強い剪定にも耐えるので庭木としても使える。剪定や刈込みで形を整えれば、庭の主木になる。花は目立たないが。この時期は結実期でたくさんの実をつける。度重なる台風の襲来で、その実もほとんどが落ちてしまった。イスノキを街路樹としている歩道には夥しい数の実が、あちこちに固まっている。
記:2004.10.27 島乃ガジ丸 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』?沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』?海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行