2週間ほど前、小豆島の友人Oから「情報教育と教育界の二刀流を目指します・・・紙もデジタルもと二刀流で、また、講義と討議という二刀流で」といった内容のメールがあった。初め私は、二刀流という言葉が何で頻繁に出てくるのか理解できなかった。
しかしその後すぐに彼の意図する「二刀流」が解る。そのメールの中に「教育界の大谷翔平と呼ばれるように」というのがあって、「大谷翔平は聞いたことあるぞ、確か野球選手だったはず」と思いネットで調べ、二刀流という言葉が世間で流行っているということを知ったのであった。流行に疎いのはテレビを観ない弊害であろう。
二刀流の文字を見て私が最初に連想したのは、これが普通だと思うのだが、剣豪宮本武蔵であった。武蔵というと巌流島の小倉や、洞窟に籠って『五輪書』を書いたという熊本などが思い浮ぶが、小豆島へ渡ったという話は知らない。小豆島のOが二刀流と言うのであれば、武蔵と小豆島に何か関係があるかもと思ったのだが、そうではないようだ。
「今、二刀流が流行っている」ということを私が知らないからといって、それが変ということは無い。先日ラジオを聴いていたら、出演者の1人が私と同じく大谷翔平のことをよく知らない人であった。その番組は年配の男性と女性との2人で沖縄を語るといったような番組で、男性の方は大谷翔平のことを知っていて、その上で二刀流の話を始めたのだが、女性の方は野球に興味がないようで、彼女も宮本武蔵の名を出した。
そうなのである。誰も彼もが同じことに興味を持っているわけではないのだ。私と同じようにプロ野球にも大相撲にも、スポーツ全般にあまり関心がないという人はいくらでもいるだろう。そういう人達にとっても、私にとっても二刀流と言えば武蔵なのだ。
小豆島の友人Oからのメールを読んで、宮本武蔵を連想した私は、若い頃(たぶん高校生の頃)夢中になって読んだ吉川英治作の小説『宮本武蔵』を思い出し、お通やら沢庵といった登場人物を思い出し、佐々木小次郎、柳生宗矩なども思い出し、「そういえば山岡荘八作の『春の坂道』も夢中になったなぁ」と思い出し、「どちらもNHKのドラマでやっていたなぁ、ドラマにも夢中になったなぁ」と思い出し、で、ノスタルジーで胸がキュンとしてしまった。ちなみに、恋で胸キュンはもう20年ほども無いのだが。
宮本武蔵を連想し、そこからあれこれ頭に浮かんだのであるが、「恋で胸キュンはもう20年ほども無い」は置いといて、『春の坂道』も柳生但馬守も沢庵禅師も置いといて、今回は、武蔵から思い浮んだある言葉について深く考えてしまった。
その言葉とは「我事において後悔をせず」。腰痛を患い、自給自足芋生活の夢を諦め、人生初の大きな挫折感を味わい、過去の自分のあれこれを思い出し、昨年11月頃から後悔ばかりしていた数ヶ月を経た後だったので、その言葉が身に沁みた。
若い頃は、「済んだことはしょうがない、過去を振り返ってくよくよ後悔してはいけない。」ということであろうと解釈していた。その解釈が正しいかどうかはさておき、
「くよくよ後悔して落ち込むのは時間の無駄、後悔役に立たず」であるという思いは、もうすぐオジーと呼ばれる年齢になった今も同じ。もうすぐオジーはそれに加え、「後悔しないようによく考えて行動しよう」というのも解釈の1つとした。
記:2018.4.20 島乃ガジ丸
羽衣のような
沖縄の梅雨時である5月から6月にかけて、畑の草刈をしていると、小さい(体長15ミリくらい)けれど真っ白でよく目立つ虫に出会う。その虫、2014年に初めてその存在に気付いて、その後毎年、写真は撮っていないが見てはいる。
その虫は、私の感性で言えば「羽衣があるとしたらこんな感じかな」と思うほど華奢で、上品で、そして、きれい。ハゴロモ科という昆虫の1科があるが、「体に比して前翅が大きく、美しい色彩を呈するものが多い」(広辞苑)の「美しい色彩を呈する」ということから美しい羽衣に喩えられての名称であろうが、ハゴロモ科よりも本種がきれい。
そんなきれいな虫が蛾の類であるということをすぐには判断できず、図鑑をあれこれ調べて、やっと「トリバ科」という、いくらか似たようなものを見つけ、図鑑に写真は掲載されていなかったが、全身が白いシロトリバなるものがいるといういことを知る。
宜野湾市民図書館や西原町立図書館にある日本産蛾を紹介しているどの図鑑にもシロトリバの写真は無い。なので、写真の者がシロトリバであるという確信が持てない。というわけで、那覇にある「沖縄県立中央図書館へ行かなきゃ」となる。
「行かなきゃ」と思ったのは去年(2017年)夏頃、沖縄県立中央図書館が、移転するため2018年3月一杯で一旦閉館するという話を聞いていて、「閉まる前に」と考えていた。が、その後、腰痛となって、畑辞めるとなって、引っ越しとあれこれあって、閉館ちょい前の3月28日にやっと県立図書館へ出掛けることができた。
県立図書館に『日本産蛾類大図鑑』という図鑑があり、シロトリバはそれにあった。個体数は少ないみたいで、その説明もそう詳しくはない。同書は1982年の発行。それから36年も経っているが、他の文献にシロトリバは載っていない。
シロトリバ(白鳥羽):鱗翅目の昆虫
トリバガ科 九州、奄美大島、徳之島、西表島、他に分布 方言名:ハベル
名前の由来は資料がなく正確には不明で、漢字表記の白鳥羽も私の勝手な想像であが、根拠がない訳ではない。見た目が白い、『日本産蛾類大図鑑』にも「体、翅とも白色」とあり、それが本種の目立つ特徴の1つ、よって、白とつく。鳥羽についてはサツマイモトリバの頁でも書いたようにトリバガ科の翅の形状が鳥の羽に似ているから。
本種の目立つ特徴はもう1つあり、「前・後翅とも羽状翅はひも状に細く」(日本産蛾類大図鑑)で、他のトリバガと比べても蛾のイメージからは遠い上品さがある。
九州、奄美大島、徳之島、沖永良部島、西表島、台湾に分布と文献にあったが、私は沖縄島中南部にある私の畑で何度も見ている。
開張20ミリ内外。幼虫はアサガオに寄生するとのことだが、私が成虫を見たのはアサガオと同じヒルガオ科であるサツマイモの葉上。成虫の出現は文献に記載がなく正確には不明だが、私の写真で限って言えば5~6月となる。
記:ガジ丸 2018.4.7 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行
『日本産蛾類大図鑑』井上寛、他著、(株)講談社発行