アメリカが孔子学院の締め付けを本格化した。
孔子学院は、「中国語を世界に広め、中国文化の理解を深める」として2004年に設立され、設置数については、ウィキペディア(2010年:96の国と地域に孔子学院(大学等に)332校、孔子課堂(中等学校に)369校)、孔子学院ウオッチャー(2020年:154の国と地域に孔子学院5448校、孔子課堂1193校)とされている。近年、孔子学院が中国のプロパガンダ機関であることが明らかとなって以降、孔子学院を統括する部署は、名称変更や所属機関の変更を行って、純粋な語学学校であり思想・文化の伝播は行っていないとしているが、各国が孔子学院に対する規制を強化するたびに中国政府が過剰に反応することを考えれば、孔子学院が中国共産党の下部組織でハイブリット戦略の一部であることは明らかである。今回のアメリカの規制は、全米の孔子学院(孔子課堂)を統括する孔子学院米国センターを大使館と同等の公館に指定して人事や保有資産の報告を義務付けることで、監視を強化しようとするものである。既に2018年には、孔子学院を介した軍事情報の漏洩を防ぐために国防権限法で孔子学院を存続させる大学への国防総省からの資金援助を停止した。このことによって、全盛時には100校を超えていた孔子学院は現在75箇所(うち大学構内設置は65校)まで減少したとされている。特に国防権限法の適用を発表した際の「孔子学院を設置している大学は、今後、国防総省から補助金を受け取るか、中国からの金を受け取るか」と迫ったトランプ大統領の発言が印象的である。反共で一致している感が強いアメリカにあっても、孔子学院の閉鎖・絶縁が思いのほかにかに少ないのは大学経営のためには中国共産党の走狗となることも厭わない者も少なからず存在していることを裏付けているように感じられる。今回の監視強化によって、更にアメリカの孔子学院離れは加速すると予想するが、孔子学院に起因する軋轢は各国で起きており、報道で知る限りではカナダ、オーストラリア、ドイツ、ベルギー、スェーデンで顕著であるように思う。日本では2005年に開設された立命館大学を皮切りに15の大学構内に開設されているが、孔子学院の危険性が論じられるようになった2018年12月に山梨学院大学に設置されたことを考えると、日本の教育界における中国傾倒者の度合いはアメリカ以上に深刻であるように思える。
孔子学院は、アメリカで高等教育を破壊する「トロイの木馬」と評されているようである。日本では「単に中国語を勉強するための便利ツールであり、プロパガンダは杞憂」と楽観視する向きもあるが、外務官僚の中国語勉強会(チャイナグループ)出身者が親中国政策に奔ったのは有名であり、毛沢東礼賛の著書を持つ中前吾郎氏が歴史教科書検定の主任調査官に任命されて恣意的な検定を行ったことも事実である。かって国会で孔子学院に対する質疑があったと思って衆院の質問主意書・答弁書を30分近く追ったが、検索未熟で発見することができなかった。