枝野新党の立党確定と民主党バイデン氏の候補指名が同じ日に報じられた。
両者とも社会主義的な大きま政府を目指していることと、現実離れした空理空論で現政権の政策を失政とする相対評価を武器に戦うことで共通しているように思える。バイデン氏の政権構想は、軍事費の削減と国際協調路線への回帰を柱とするものであるが、中国・北朝鮮を怪物に育て上げたニクソン~オバマ時代への回帰に他ならないように思える。加えて、中国の覇権を抑制・阻止できる最大武器である関税を対中国外交の手段としないことを表明していることから、中国コロナ禍を契機として漸く実現するかに見えた中国包囲網もバイデン政権の下では「盟主の腰砕け」となって瓦解し、益々中国の発言力が増大する危険性が有る。日本・アジアに限っても、軍事費の削減は在日韓駐留米軍の縮小、東・南シナ海で展開されている航行の自由作戦中止、台湾への最新鋭武器の禁輸等に繋がる恐れがあり、トランプ政権下では共有されている「尖閣諸島は日米安保の範囲」とする認識も見直される危険性が有る。何よりも、トランプ政権の関税戦争をリセットすることは、今後とも中国を世界の工場として認知し中華覇権のための資金を供給し続けることとなって、これまで以上に中国の影響力は増すことになると思わざるを得ない。このような観点から、バイデン大統領の実現を最も渇望し、その実現で最大の利益を受けるのは中国であろうと思う。枝野新党は、立憲民主党の綱領や政権構想を引き継ぐものと思われるが、新党参加者が共有する理念は連合票の一本化と政党交付金の独占という2点と”安倍憎し”でしかないように思える。枝野代表自身「新党の支持率は立民を上回ることは無いだろう」と述べたと伝えられているように、新党の立党は熱狂的な支持者以外からは冷ややかな視線で見られているように思える。熱狂的な支持者にしても、枝野政権では”何が””どう”変わるのかを具体的に提示できる人はいないだろうと確信している。中国コロナの影響でGDPは減少(それでも欧米に比べればまだましだが)し、中国コロナが終息しても回復には数年かかるとみられている経済状況を考えれば、これ以上のバラマキには耐えられないことは明白で、蓮舫副代表が述べるような休業補償の増額・長期化は枝野政権であっても不可能であろう。
今秋にも予想される解散総選挙、11月のアメリカ代表選挙。今年の年末は、西側諸国、特に日本はどちら側に与するかという立ち位置を明確に選択しなければならない時期を迎えるものと思っている。枝野新党が「呉越同舟」以上の仇敵が乗り合わせる「立国同舟」で船出するが、総選挙までにその実態を見極める必要があるように思う。枝野新党は、民主党のマニフェストに倣った美辞麗句に飾り立てられた選挙公約を掲げるだろうが、柳の下に二匹目のドジョウはいないことを肝に銘じて、現実的な対案を示して欲しいと思う。