自民党の後継総裁に菅義偉官房長官が急浮上した。
政治に暗い自分は、石破氏と岸田氏の一騎打ちかと思っていたので驚いているが、政治に明るい多くの人には当然の推移なのだろう。菅氏が最有力候補となった背景は、党内最大派閥の細田派を含む多くの派閥が菅氏支援を表明したためとされているので、改めて派閥の意味を考えることとした。巷間「3人寄れば2つの派閥ができる」と云われるように、群れなければ生きていけない人間社会では、意見を同じくする人間の集団ができるのは仕方のないことで、政治の世界にあっても、議員個人の理想を法律として具現するためには同志を糾合・結束して行動するために派閥は必然であるように思える。派閥が政治理念の集合体と見るならば、巨視的には政党そのものが国内の派閥と見ることも可能である。政党を含む理念の塊の全てを派閥と仮定するならば、派閥の統制(強制)力も多様で、宗教的理念を共有する共産党や公明党は指導部の他律が無くても一枚岩の結束であるが、その他の党では内閣不信任案や重要法案の採決には党議拘束しなければ造反者が続出するのが現状で、更には加藤の乱に代表されるように党議拘束下にあっても造反者が散見されるし、政党所属議員が離党したり他党入りすることも現在では珍しくなくなった。党内派閥については自民党内に顕著であるが、立憲民主党にあっても護憲の牙城である赤松グループが、国民民主党にも枝野新党に合流しない玉木グループや前原グループという党内派閥が存在する。かっての田中角栄氏に代表される派閥全盛時にあっては、党内派閥紐帯の根幹は「金」であったとされるが、政党交付金と政治資金規正法によって派閥維持の原理は政策中心に改善されつつあるようにも感じられる。自民党では、役職に伴って慣例的に派閥を離れた人を含めて50人内外が無派閥とされ菅氏も無派閥と報じられているが、現実には菅グループと目される同志が10人程度あるともされている。自民党議員が派閥に所属することは、有権者にとっても有意義な一面があるとも思っている。例えば、細田派議員には保守本流としてのバランス感覚が、石破派議員には改憲の方向性が、二階派議員には中国ロビーの影が、額賀氏を領袖とする竹下派には親韓の影が窺えたりするので、候補者選択の判断材料にもなり得る。困るのは無派閥議員である。彼等の多くが施策に対しては「是々非々の中立」で行動すると述べるが、是々非々の判断基準は議員個人の一人よがりの価値観に基づいているために、有権者が議員の資質を見る妨げにすらなっている。かってのマッチポンプ議員は無派閥議員に多く、金権総裁選時の無派閥議員は「一本釣り」「草刈り場」と称されて金銭や役職に動かされたケースも多い。
派閥の功罪を考えるはずであったが、派閥の効能に留まった。しかしながら、現在の自民党の派閥について云えば、「岸田派の中にも菅氏支持の動き」と報じられる程度の寄り合い所帯であり、罪とするほどのものは見当たらないように思える。三角大福時代のメディアを中心にもてはやされた「派閥の原理で総裁(現実には総理)を決めるのはおかしい」という意見が未だに聴かれるが、主張者にしても「然らばどうすれば良いか」と明確に答えられる人はいない。総裁選挙では議員票を止めて100%党員票にすべきという極論もあるが、総裁選をAKBグループの総選挙と同じ低次元の人気投票とすることが好ましいとは思えない。
あなた様のきょう(9月1日)の記事を読ませていただきましたが、海上自衛隊を定年退職なされたとのことですが、まるで大学の先生か、評論家か、新聞社や放送局にお勤めの政治にプロの方かと思わせられてしまう程の内容で、浅学な愚拙には難しかったです。
これからもご指導をいただきますようお願いを申し上げます。