もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

レオパルト2供与に思う

2023年01月26日 | 防衛

 ドイツが主力戦車レオパルト2のウクライナ供与に同意した。

 レオパルト2についてはNATO加盟国で約2千両保有しているとされるが、生産国であるドイツに対してポーランドを始めとする保有各国が供与承認を強く要求していた。
 ドイツの承認決定によって、合計で100両以上がウクライナに供与される見込みで、さらにアメリカのM1エイブラムス戦車供与の障壁も取り除かれたと報じられているが、ウクライナにおける早期戦力化は容易では無い様に思える。
 ウクライナが戦車を手にするのは早くても4月頃で、ドイツ国内で先行される戦車兵の教育訓練も数ヵ月が必要とされる。単に兵員のみ考えても、100両以上の戦車を運用するためには、戦車兵数百人に整備・補給・通信等の兵站要員を加えれば2千名近くが必要となる。兵站の多くに民兵や志願者を充当するとしても、戦車兵については一進一退の戦場からの正規兵抽出とせざるを得ないために、一時的には戦場の兵力バランスが崩れることも懸念される。閑話休題
 アメリカのシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が、「ウクライナに対する支援によってアメリカの継戦能力が低下している」という気懸りな見解を公表した。
 既にアメリカは、ウクライナに高性能兵器の携帯型対戦車ミサイル「ジャベリン」・高機動ロケット砲「ハイマース」や通常兵器155㍉榴弾砲を供与しているが、これらは何れも新規調達と備蓄在庫放出であり「防衛産業に大きな負担」を掛けるとともに「一時的な継戦能力低下」を招いているとしている。例示されているところでは、「ジャベリン」は7年分の生産力に匹敵し、榴弾砲の弾丸107万発は「供給可能な在庫の重大な縮小」を招いたとしている。
 ロシアが30万人?の部分動員を行ったとき、拙ブログで「30万丁もの小銃が?」と書いたが、案の定、錆びたり銃床の欠けた小銃を貸与された兵士の例が報じられた。
 軍需工場の生産ラインは、平時における政府の調達量(安定的であるが少量)に備えて整備されているので、米ロのような軍事大国にあっても急速な生産拡大は不可能であるようである。今回のCSIS提言も台湾有事を加味して「十分な弾薬と兵器システムの在庫を確保することが極めて重要で、侵攻が始まってから増産するのでは遅すぎる」と警告している。

 防衛産業が脆弱で、主要兵器の多くを輸入調達に頼っている日本では「十分な弾薬と兵器システムの在庫確保」は更に深刻である。
 これまで、防衛官僚や財務官僚は「正面兵器の導入整備」は計るものの。それを維持することには熱心で無かったために、下々たる制服は「タマに打つ、タマの無いのが、タマに傷」とあきらめていた。
 今国会では、防衛費の増額が論点であろうが、正面兵器の質・量を議論するのは当然としても、その能力を持続する方策も念頭に置いた議論であって欲しいと願っている。


民主集中制を学ぶ

2023年01月25日 | 野党

 共産党員の松竹伸幸氏が記者会見で党首公選制の導入を主張したが、赤旗が執行部意見を代弁する形で「松竹氏の行動は「党規約(民主集中制?)に違反する」と反論した。

 Wikipediaでは《民主集中制は「民主主義的中央集権主義」の略で、全共産党員が上級機関および指導者の決定に無条件に従う行動規範で、党内の異論や少数意見が表に出にくい組織原理》と解説されている。
 改めて民主集中制の成立と推移を眺めると、
・1906年 ロシア社会民主労働党の統合大会で初めて党の組織原則として採択・成立
・1920年 コミンテルン第二回大会で「プロレタリア革命における共産党の役割に関するテーゼ」として採択
・1934年 ソ連共産党の規約に記載。以後、各社会主義国や共産党の公式的な組織原理として採用
・現在 中国・北朝鮮・ベトナム・キューバ・ラオスの国が民主集中制を採用   とされている。
 民主集中制も変遷を重ねており、当初は統制も比較的緩やかで、レーニンも「批判の自由は党の集会でも大衆集会でも完全に認められるべきだが行動の統一を破る呼びかけは党の集会でも大衆集会でも認められるべきではない」としていたものが、スターリンやブレジネフによって、党内に限った反論すら粛清・追放の対象となるほどの鉄の締め付けに変貌したとされている。
 民主集中制の原理は、1934年のソ連共産党規約に示されている「党組織に対する党機関の定期的報告制」「厳格な党規律並びに多数者への少数者の服従」「下級機関及び全党員にとっての上級機関の決定の無条件的な拘束性」とされているが、一旦権力を握れば反対意見の封殺と反対派の粛清・追放には極めて有効であると思える。中国を筆頭に民主集中制を採用している国はいずれも長期政権であり、日本共産党でも志位和夫氏が20年以上も独裁的に君臨している。
 日本共産党が、いつの時点で民主集中制を採用したのかは分からないが、コミンテルンに忠実であったことを考えると1922(大正11)年の非合法結党時から民主集中制であったのではと思っている。また、現在の統制の程度は、近年の袴田里見氏の除名や筆坂秀世氏の離党などを見ると、鉄の規律に近い統制ではなかろうかと推測している。
 赤旗が云う党規約まで調べる気力は湧かないが、綱領にサラリと書かれている「現行の選挙制度を改定」が、民主集中制への移行を指しているのかもしれない。

 共産党が合法化されて以降のトップ6人の在任期間を観ると、徳田球一氏(8年)・野坂参三氏(3年)、宮本顕治氏(24年)、不破哲三氏(通算13年)、 村上弘氏(2年)、志位和夫氏(22年~)となっている。自由党時代を含め自民党28人、社会党時代を含め社民党17人が党首を務めていることを見れば、民主集中制が権力維持に適しているかが理解できる。
 ともあれ、民主集中制が嫌われて、共産党がオールドコミュニストの閉鎖的クラブとなり、次第に姿を消すことは将来的には望ましく思えるので、志位共産党も民主集中制を堅持して欲しいものである。

 党勢振わず襟首に木枯らしを感じている立民泉代表も、選挙協力など思い煩うことなく民主集中制を採用したいところであろうが、創業者の枝野帝王ですら公選を選択しなければならなかったことを考えると、それはそれで無理であろうが。(笑)


通常国会召集とレンブラント

2023年01月24日 | 国政・行政

 積極的専守防衛への転換点となるであろう今国会での論戦に期待している。

 先の臨時国会は、個人攻撃に終始するであろうと考えて国会中継を観なかったが、今国会は注視しなければと思っている。
 本日はレンブラント先生とイエス様のお力を借りて、論戦に臨まれる議員に対する要望である。


レンブラント「姦淫の女」(ロンドン・ナショナルギャラリー蔵)

 レンブラントは、律法学者たちがモーゼの戒律を守る一方で罪を許すと説いたイエスの2律背反を質すために、姦淫の罪を犯した女をイエスの前に引き据えて、「モーゼは石で打ち殺せと命じているが如何に」と問いかけた際、イエスが「罪を犯したことのない者が 女に石を投げよ(ヨハネによる福音書)」と応じたものの誰一人「石を投げ得る人」はいなかった場面を描いている。
 しかしながら、論理的にはイエスの言葉は根本的な回答ではなく、自己正当化のレトリックに過ぎないと思ってはいるが。
 先の臨時国会では、閣僚と統一教会の癒着を舌鋒鋭く追及した正義の議員が実は若干の関係を持っていたブーメランが失笑を買った。
 伍代夏子氏が「肱川あらし」で《♪非の打ち所の無い人なんていませんよ♬》と唄っているように、完全無欠で姦淫者にも石を投げ得る議員までは求めるものでないが、少なくとも質疑の結果に対しては責任を持つ覚悟で論戦に当たって欲しいものである。

 かっては、中国の核実験は防衛のためで許せる・北朝鮮の拉致は政府の陰謀、また近くには半島出身の慰安婦強制連行を事実と謝罪、マイナンバー制度は徴兵制の布石・・・とした議員諸氏が存在して今に禍根を残しているが、反省・悔悟の一言も聞こえない。その点では、枝野幸男議員が「過去の消費減税の選挙公約は誤り」としたことは評価すべきであろうか。

 キリスト者でない自分が聖書の孫引きと、何よりレンブラント先生まで利用したのは、些かに不適切の誹りは免れないと思っている。陳謝。


中川正春議員を学ぶ

2023年01月23日 | 憲法

 衆院憲法審査会の野党筆頭理事である立憲民主党中川正治議員の主張を読んだ。

 主張の要旨は、「改憲論議よりも国民投票法のCM規制を優先論議すべき」との従来主張を繰り返すとともに、党の「論憲姿勢」を強調してのPRに努めるものであったが、『・・・権力の暴走を国会がいかにコントロールし・・・国会がどう首相を管理下に置くかという意味では議員任期延長も議論する必要はある』としている点が立民の憲法観を端的に示しているように感じた。
 憲法41条では『国会は国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関」と定めているが、最高機関との語句について種々の解釈が行われている。代表的な解釈は
・統括機関説- 国会は、国権の最高機関として内閣、裁判所の上位に君臨し国政全般にわたって最終的な決定権を有する
・最高責任地位説 - 国会は、国権の最高機関として国民に対して国政全般の責任を負い、行政、司法作用を調整する。とされている。
 国会議員としては、統括機関説に依って国家運営を担当したいところであろうが、責任の所在がはっきりしない国会に行政・司法まで預けるのは危険すぎるように思える。そのことは、司法が権力に阿る韓国での徴用工賠償判決を見れば十分であり、寸秒を争う震災や防衛出動に出動に対して国会の小田原評定が適切であろうかとの疑問を持つ。
 現在の日本にあっては、緊急の決定は内閣が行って○○日以内に国会に報告する若しくは国会の承認を得るという法律が多いところを見れば、国会は行政、司法を調整するという最高責任地位説に依って運営されているように思えるが、立憲民主党の憲法観は統括機関説にあるようである。
 中川議員は、、ジョージタウン大学(ワシントンD.Cに本部を置く私立大学で、 政治や国際関係などの学問では世界最高峰の大学)の外交学部国際関係学科卒業し、国際交流基金に勤務された後に政界に転じたとされているので、政治や国際関係に通じておられるように思う。それならば猶更に、国会の地位に関する憲法規定が曖昧であるという問題点は十分に承知されておられると思うが、それに触れることなく「首相を管理下に置く」とサラリというところは、いかにも立民議員であるように思える。

 長年に亘って野党に甘んじ、一旦は手にした政権も「空白の3年間」との評価が定まり、現状打破の政策提言では維新に後れを取り、と散々な立民が縋るのは「論憲」と糊塗した強固な護憲によってコアな有権者を繋ぎとめるしかないのであろう。
 尖閣・チベット・台湾問題には「中国は最大の貿易相手」と煙幕を張り、アフガンでは沈黙し、ウクライナを多山の石と観ることも無く、・・・。立民は、何時まで現下の国際情勢に目を閉じ続けるのだろうか。


N党と立花党首

2023年01月22日 | 野党

 半年近くも登院しないNHK党のガーシー(東谷義和)参議院議員に対する懲戒が遅々として進まない。

 民間であれば、不可思議な理由で半年間欠勤すれば,馘首されるのは間違いないだろうし、同じ特別職国家公務員の身分である自衛官では10か日間も欠勤すれば間違いなく懲戒免職になるが、選良の先生方は先の懲罰委員会でも結論を出さないままである。
 一方、ガーシー議員は懲罰を主張する維新の藤田文武幹事長に対して対抗・報復のために藤田幹事長の秘事暴露を予告したが、肝心のガーシ議員が現在名誉棄損や脅迫の嫌疑で警視庁から任意聴取を要請されていることを見れば、小悪党の悪あがきの感が強い。
 問題と考えるのは、ガーシー議員を抱えるNHK党の立花党首が、ガーシー議員の無断欠勤と脅迫まがいの言動を容認若しくは教唆・推奨しているかの行動を見せていることで、政党要件を満たしている国政政党の党首としては如何なものであろうか。
 維新の松井代表は「(予告に屈すれば)人に言え無い過去があると認めた事になるよね。これが維新牽制になる?藤田幹事長は毅然と対応すればいい」と述べているが、市井の大方の意見であると思う。
 政治的な活動と主張に生い立ちや私生活を投影させるのは好きではないし慎むべきとも思っているが、今回の人倫に悖るかの曲折を眺めると、そうもいっていられないように思える。
 立花党首とガーシー議員の来し方を眺めると将に波乱万丈の様相であるが、両氏に共通しているのは政治活動の原点が私怨であって公憤ではないという点であるように思える。
 N党と立花党首の公約は「(かって在職し馘首された)NHKをぶっ壊す」の一点であることが私怨であることを端的に示しているように思えるし、ガーシー議員のタツキの道である「暴露系ユーチューブ」に至っては、私怨の延長として著名芸能人の秘事を金に換えるという商売往来としては最も忌むべきものであると思う。
 勿論、政治活動の原点が私怨であっても何ら構わ無いが、国政政党として評価を得、同党の国会議員として議席を得た時点で私怨を公憤に昇華させてもらいたいものである。

 自分は、NHKは災害報道とスポーツ・科学番組以外は視聴しないと決めているが、それでも&そのために視聴料を払っている。
 CM収入とスポンサーの意向に配慮しないで済む国営若しくは官営の報道機関は国家として保有・維持されるべきであると思っているが、日本の国情・世情を考えれば視聴料で運営されるNHKの形態は相応しいのではないだろうか。
 視聴料についても、災害報道や災害対処のための保険金と考えれば、それほどまでに腹も立たないのではないだろうか。