◇盛岡のNPO法人、活動資金の雇用創出基金が対象外に
高齢などで外出がままならない東日本大震災の被災者向けに、盛岡市の民間団体が続けてきた低料金の買い物サービスが、2月末で終了する。活動資金としてきた、国の雇用創出基金の対象外となり継続できなくなったため。3月以降、経済的負担が増える利用者からは「続けてほしかった」との声が上がっている。
女性の自立支援に取り組むNPO法人「参画プランニング・いわて」(盛岡市)が震災5カ月後の2011年8月、津波被害の大きかった岩手県宮古(みやこ)市と大槌(おおつち)町、野田村で始めた。現在は5市町村で雇用した20〜50代の女性20人が「芽(め)でるカー」とのグループ名で活動。1日十数軒を訪ね、1回100円の利用料で請け負ってきた。
仮設住宅や災害公営住宅(復興住宅)には、巡回する移動販売車にさえ歩いて行けない高齢者や障害者もいる。芽でるカーはそんな買い物弱者の味方だった。電化製品から食品まで、「縦に持ったときに、ピンと立つほど鮮度の良いサンマ」などの細かい要望にも応えてきた。
事業を委託している市は、年間事業費6300万円に国の雇用創出基金の補助金を充ててきた。しかし、市によると、2月までの事業を継続するためには、新規に申請する必要があるが、来年度以降は対象が津波被害のあった沿岸市町村のみとなり、内陸の盛岡は補助金を受けられなくなった。同市と同NPOは沿岸市町村に引き継ぎを要請したが「基金事業は1年ごとの更新で先を見通せずやりにくい」「民間が同じサービスをしている」などと受けてもらえなかった。
事業の終了を知った利用者からは「やめないでほしい」との声が上がっている。大槌地区リーダーの沢山美恵子さんは「復興住宅など建物はできてきたが、それだけでは復興じゃない。生活が成り立ってこそ。その根幹が買い物だ」と残念そうに話す。
◇雇用創出基金事業
リーマン・ショックがあった2008年、厚生労働省が失業者の雇用確保のため始めた。この交付金で都道府県が基金を設け、市町村を通して、NPO法人などが雇用対策として行う事業に補助金を出す。厚労省によると、2014年度までに約1兆8000億円を交付し、約140万人の雇用を生んだ。東日本大震災後、被災者を雇用する特別メニューも作ったが、15年度以降の新規事業は、津波被害を直接受けた沿岸市町村に限定する。
毎日新聞 2015年02月21日