茨木市は今年4月、「茨木市障害のある人もない人も共に生きるまちづくり条例」を施行した。行政や市民、事業者が“共に生きるまち茨木”の実現を目指す。施行から半年が経過したが、障害に対する理解を深め、障害者が暮らしづらさを感じる社会的障壁を解消する取り組みを推進している。
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が2013年に制定され、16年4月に施行された。大阪府も同年、同様な目的の「大阪府障がいを理由とする差別の解消の推進に関する条例(大阪府障がい者差別解消条例)」を施行した。
■市民と共に
茨木市は16年、高齢者や障害者を対象にアンケートを実施。障害者から「就労や日常生活の中で、差別のような空気を感じる」などの声が上がった。他自治体で障害を理由とした差別解消に特化した条例制定が進む中、同市は手話言語条例を盛り込んだ総合的な条例づくりを始めた。
17年には障害のある人や市民が加わった専門部会を立ち上げ、条例の検討が始まった。今年、市制施行70周年を迎えたが、条例を作る段階で市民が入るのは初めての試みとなった。
「条例を作っただけでは『絵に描いた餅』。条例を具体的に取り組むことが大切」と、市障害福祉課の河原勝利課長は強調。条例は「共に生きるまち茨木」を実現するため、それぞれの立場でできることに取り組むことを責務としている。
■活動の後押し
市は、不特定多数の人が利用する飲食店などを対象に、階段の手すり設置や段差の解消工事、筆談ボードやスロープ購入などを助成する事業を進める。障害者のバリアーとなる「社会的障壁」を解消するのが狙いだ。
10月下旬、同課の職員と茨木障害フォーラム事務局長の六條友聡さん(42)が、市内の商店街の店主らに事業を説明した。
六條さんは、全身の筋肉が痩せ、筋力が弱くなる先天性の病気で、車いす生活を送る。市は、障害のある人と一緒に街を歩くことで、当事者の目線で気付くバリアーを見つけていく。
市障害福祉課は市役所のバリアー解消につなげようと、毎朝の朝礼で窓口の会話で使える手話を1日1文、練習もしている。
六條さんは「各自治体で条例を作ることは大切。活動の後押しになる」と条例施行を歓迎しながら、「すぐに何か変わるわけではない。条例があってもなくても、障害を理由とした差別や社会的障壁の解消を進める取り組みをしないといけない」と話した。
六條さん(左)と茨木市障害福祉課の職員が一緒に茨木阪急本通商店街を歩き、街にある社会的障壁を探る=10月、茨木市元町 |
朝礼で紹介する手話を練習する障害福祉課の職員たち=10月、茨木市役所 |