旧優生保護法(1948~96年)による強制不妊手術や優生思想について、障害者の立場から考える学習会が富山市内で25日に開かれた。強制不妊手術の対象外ながら、障害があることで子宮摘出を迫られたり、実際に摘出されたりした女性3人が自身の体験と考えを語った。障害者の自立を支援するNPO法人「文福(ぶんぷく)」(富山市五福)の主催。
脳性まひのある福田文恵さん(57)=同市=は、養護学校に通っていた頃、看護師から「生理がない方が楽」と言われ、子宮摘出を勧められた。しかし、体への負担を懸念した医師が反対し、手術を免れた。福田さんは「邪魔だから取ればいいという考えは無いだろう」と訴えた。
脳性まひを持ち、出産と育児を経験した四十物(あいもの)千鶴子さん(65)=同市=は、家族などから出産に反対された。「障害者は産んでも『いい子』が出来ないという優生思想が背景にあったと思う」と振り返った。
最近になって国が強制不妊手術の実態把握に取り組むことになったが、参加者からは「なぜ今ごろ」という声が出た。四十物さんは「もっと前から訴えてきた人がいた。今になってこんなにマスコミが来るのは、正直遅い」と述べた。四十物さんの夫和雄さん(66)は「今まで、なぜ社会が問題にできなかったのか。みんなで考えないといけない」と話した。
生まれて間もなく脳性まひとなり、子宮摘出手術を受けた中村薫さん(60)=同市=は、障害者に向けられる差別について指摘。車いすで生活する中村さんは冬にバスに乗る際、乗車に時間がかかってバスの中が寒くなるため、「車いすの人は乗らないでほしい」と言われた経験も紹介して、「差別の気持ちは誰にでもあり、なくならないと思う」と話した。そして、一人一人が自身に差別の気持ちがないかを問いかけることで「差別をなくす努力はしないといけない」と呼びかけた。
学習会は、7月13日と11月10日にも実施する予定。問い合わせは文福(076・441・6106)。
自身の体験を語る(右から)四十物千鶴子さん、中村薫さん、福田文恵さん
2018年5月29日 朝日新聞