障害がある人が裁判を傍聴する際に必要な手話通訳の配置や介助者の同伴などを巡り、裁判所側の配慮が不十分なケースがあるとして、障害者団体「DPI日本会議」は29日までに、最高裁に統一的なガイドラインを作るよう要望した。「合理的配慮への理解は浸透しつつあるが、裁判官によって判断に差がある」としている。
最高裁の担当者は取材に対し「慎重な検討を要するが、要望内容を今後の取り組みの参考にさせてほしい」と述べた。
要望書は(1)車いすのまま傍聴できるスペースを確保する(2)傍聴席の抽選では介助者を含めず、同伴を認める(3)法廷でのたん吸引や服薬を認める(4)必要に応じて手話通訳や要約筆記者を配置し、聴覚障害者が見やすい席を用意する――などの対応を求めている。
障害者差別解消法の施行を受け、最高裁の裁判官会議は2016年、障害がある人から申し出があった場合、負担が過重にならない範囲で合理的な配慮をしなければならないとの対応要領を議決した。ただ、細かなルールまでは定めていない。
一方、積極的な配慮に乗り出したケースもある。旧優生保護法下の不妊手術を巡る国家賠償請求訴訟では、弁護団などの要望を受け、札幌や大阪の各地裁は車いすスペースを確保し、手話通訳を配置した。DPI日本会議の佐藤聡事務局長は「配慮が認められたり、認められなかったりするのは傍聴する側にとって不平等だ。対応要領の内容をさらに進化させてほしい」と話した。
2019/5/29 日本経済新聞