視覚や上肢の障害、発達障害などがある人の読書環境を整えようと、超党派の国会議員が今国会に「読書バリアフリー法案」を提出する見通しになった。
18カ条からなり、「障害の有無にかかわらず全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受できる社会の実現に寄与する」とうたう。
7条と8条では、国が読書環境整備の基本計画を定め、自治体に障害当事者の意見を反映した具体的な計画をつくるよう求めた。
国や自治体が取り組むべき基本的施策も盛り込まれた。障害者が利用しやすい図書館の整備(9条)▽インターネットによるサービス提供の強化(10条)▽読みやすい書籍や電子書籍の製作支援、販売促進(11、12条)▽使いやすい電子書籍や端末など先端技術の研究開発(16条)などだ。
法制定を求める動きは2008年ごろ始まり、日本盲人会連合、DPI(障害者インターナショナル)日本会議、弱視者問題研究会、全国盲ろう者協会の障害当事者4団体が、「自由に本を読みたい」と共同で取り組んできた。日本は昨年、障害者の読書環境整備をめざす国際条約(マラケシュ条約)を批准した。
国内の点字図書や録音図書は現在30万タイトルほどで、国立国会図書館にある1千万タイトル以上に比べればわずかだ。音声で読み上げられる電子書籍も一部にとどまる。当事者団体の関係者は、そんな現状を「本の飢餓」と例える。
超党派の「障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟」(会長・衛藤晟一首相補佐官)が昨年に発足し、今年2月の総会で法案をまとめた。まもなく提案され、参議院で審議が始まる見込みだ。
DPI日本会議の佐藤聡事務局長は「多様な障害が対象で、当事者の意見を聞くと明記されている」と法案を評価。弱視者問題研究会役員で筑波大付属視覚特別支援学校教諭の宇野和博さんも「図書館の人材育成や電子データを提供しやすくするなど、環境整備に大切なことが盛り込まれ、意義は大きい」と話す。
自立生活センター東大和(東京都東大和市)理事長の海老原(えびはら)宏美さん(42)は、筋力が低下する難病の脊髄(せきずい)性筋萎縮症Ⅱ型。ブックスタンドを使って介助者にページをめくってもらって読んでいる。「病気で読書をあきらめている人はけっこうおり、(法成立に)すごく期待しています」。多くの自治体は、音声で読み上げる機器購入への助成対象を視覚障害者に限っており、海老原さんは対象拡大を切望している。
2019年5月22日 朝日新聞