外科手術を実際に行う場合の具体的は脊髄虚血の予防対策として
① AKAの同定 造影CTやMRIで部位を同定しておけばどこを再建する、注意するか、または手順などを事前に検討することができます。
② 椎骨動脈、内腸骨動脈の血流支配の確認 こちらも造影CTやMRIで確認が必要です。特に椎骨動脈は左右差があることが多いのでどちらかの鎖骨下動脈を閉塞する手技を行う場合は注意が必要です。
③ 冷却 脳循環停止や頸動脈再建を伴う弓部大動脈手術の脳保護のように、冷却することで脊髄虚血のダメージを小さくすることができます。より低体温の方が有効性が高いのですが、その手術を脳循環停止を伴うような超低体温(20℃以下)とするのか、25℃程度の低体温とするのかは議論の余地がありますが、これらの低体温とするには心停止を伴うため、上半身の循環補助も考慮する必要もあります。心拍動下に下半身の循環遮断する場合は34~35℃くらいまでしか冷却することができないので、この範囲での対策となります。
④ 鎖骨下動脈の拍動血流維持したままの手術 十分な冷却はできませんが、鎖骨下動脈の拍動血流維持のままの手術は、椎骨動脈経由の前脊髄動脈への血流を維持したままの手術が可能です。この場合は冷却をあまりしないので、止血能が良いことが多く、多量の出血が脊髄虚血の一因と言われているので、こうした多量出血を予防できます。また、ステントグラフト留置は、心拍動下での手術である為、椎骨動脈血流を維持しながらの手術となり、このため人工血管置換術よりも対麻痺の発生頻度が低いと言われています。
⑤ 術中の血圧維持、貧血予防: 低血圧、貧血がより脊髄虚血を助長すると言われ、これを予防するような管理が重要です。MEPに異常が検出されたときに低血圧、貧血を改善することで虚血が改善したという報告もあります。ヘモグロビン値で10g/dl以上、平均血圧80mmHg以上を維持するように麻酔管理、術後管理します。
⑥ 大動脈解放時の肋間動脈の(一時的)閉塞による側副血行圧低下の防止:AKA血流はネットワーク支配されていると言われ、大動脈を解放して血圧が低下したところで、肋間動脈から大量のバックフローがあるとAKAに向かう血流を盗血(スティール)してしまうため、大動脈解放と同時に肋間動脈をA-Shield catheterで一時的に閉塞するか、結紮閉塞させることでAKAに向かう血流圧を低下させずに済みます。
⑦ 肋間動脈再建:同定されたAKAに繋がる肋間動脈に人工血管を縫着し、そこから分枝血流送血して脊髄血流を維持します。大動脈解放後にMEPが消失した症例で、肋間動脈再建して血流再開したところMEPが復活した経験を聞いたことがあります。
⑧ 血流改善が期待できる薬剤を使用:血圧を上昇させるための昇圧剤、輸液。有効性は不明ですがプロスタグランジンE1(PGE1)が脊髄血流を改善する可能性があります(この血流改善作用が脊柱管狭窄症の症状改善作用のメカニズムと言われています)。
⑨ 脊髄ドレナージ:虚血に伴う浮腫が原因で脊髄内圧の上昇を防止して、この圧上昇がさらに虚血を悪化させることを防止するために、閉鎖空間である脊髄腔から圧を逃がすためのドレナージチューブを留置して、脊髄腔圧を8~15cmH2O以下にして虚血の悪化を防止することが期待されます。
⑩ ナロキソン: 機序はしりませんが、脊髄腔圧を低下させることで効果があると言われています。
⑪ ステロイド: 脊髄浮腫の悪化防止に期待できる可能性があります。
⑫ 術中の内腸骨動脈の血流維持: 大腿動脈からの送血をしながら内腸骨動脈の血流維持をすることで、内腸骨動脈経由の脊髄血流を維持したまま手術することで脊髄血流が低下することを防止します。
これらの方策を駆使しても完全には予防できないかもしれませんが、外科医としてはこれらを十分考慮、準備して手術に向かわなければなりません。
① AKAの同定 造影CTやMRIで部位を同定しておけばどこを再建する、注意するか、または手順などを事前に検討することができます。
② 椎骨動脈、内腸骨動脈の血流支配の確認 こちらも造影CTやMRIで確認が必要です。特に椎骨動脈は左右差があることが多いのでどちらかの鎖骨下動脈を閉塞する手技を行う場合は注意が必要です。
③ 冷却 脳循環停止や頸動脈再建を伴う弓部大動脈手術の脳保護のように、冷却することで脊髄虚血のダメージを小さくすることができます。より低体温の方が有効性が高いのですが、その手術を脳循環停止を伴うような超低体温(20℃以下)とするのか、25℃程度の低体温とするのかは議論の余地がありますが、これらの低体温とするには心停止を伴うため、上半身の循環補助も考慮する必要もあります。心拍動下に下半身の循環遮断する場合は34~35℃くらいまでしか冷却することができないので、この範囲での対策となります。
④ 鎖骨下動脈の拍動血流維持したままの手術 十分な冷却はできませんが、鎖骨下動脈の拍動血流維持のままの手術は、椎骨動脈経由の前脊髄動脈への血流を維持したままの手術が可能です。この場合は冷却をあまりしないので、止血能が良いことが多く、多量の出血が脊髄虚血の一因と言われているので、こうした多量出血を予防できます。また、ステントグラフト留置は、心拍動下での手術である為、椎骨動脈血流を維持しながらの手術となり、このため人工血管置換術よりも対麻痺の発生頻度が低いと言われています。
⑤ 術中の血圧維持、貧血予防: 低血圧、貧血がより脊髄虚血を助長すると言われ、これを予防するような管理が重要です。MEPに異常が検出されたときに低血圧、貧血を改善することで虚血が改善したという報告もあります。ヘモグロビン値で10g/dl以上、平均血圧80mmHg以上を維持するように麻酔管理、術後管理します。
⑥ 大動脈解放時の肋間動脈の(一時的)閉塞による側副血行圧低下の防止:AKA血流はネットワーク支配されていると言われ、大動脈を解放して血圧が低下したところで、肋間動脈から大量のバックフローがあるとAKAに向かう血流を盗血(スティール)してしまうため、大動脈解放と同時に肋間動脈をA-Shield catheterで一時的に閉塞するか、結紮閉塞させることでAKAに向かう血流圧を低下させずに済みます。
⑦ 肋間動脈再建:同定されたAKAに繋がる肋間動脈に人工血管を縫着し、そこから分枝血流送血して脊髄血流を維持します。大動脈解放後にMEPが消失した症例で、肋間動脈再建して血流再開したところMEPが復活した経験を聞いたことがあります。
⑧ 血流改善が期待できる薬剤を使用:血圧を上昇させるための昇圧剤、輸液。有効性は不明ですがプロスタグランジンE1(PGE1)が脊髄血流を改善する可能性があります(この血流改善作用が脊柱管狭窄症の症状改善作用のメカニズムと言われています)。
⑨ 脊髄ドレナージ:虚血に伴う浮腫が原因で脊髄内圧の上昇を防止して、この圧上昇がさらに虚血を悪化させることを防止するために、閉鎖空間である脊髄腔から圧を逃がすためのドレナージチューブを留置して、脊髄腔圧を8~15cmH2O以下にして虚血の悪化を防止することが期待されます。
⑩ ナロキソン: 機序はしりませんが、脊髄腔圧を低下させることで効果があると言われています。
⑪ ステロイド: 脊髄浮腫の悪化防止に期待できる可能性があります。
⑫ 術中の内腸骨動脈の血流維持: 大腿動脈からの送血をしながら内腸骨動脈の血流維持をすることで、内腸骨動脈経由の脊髄血流を維持したまま手術することで脊髄血流が低下することを防止します。
これらの方策を駆使しても完全には予防できないかもしれませんが、外科医としてはこれらを十分考慮、準備して手術に向かわなければなりません。