横須賀うわまち病院心臓血管外科

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冠動脈病変のプラーク退縮と冠動脈バイパスの開存

2020-07-15 23:46:20 | 虚血性心疾患
 冠動脈バイパス術におけるグラフト(バイパス血管)の開存率は、長期的にはやはり内胸動脈が最も優れており、その他の下腿の静脈や右胃大網動脈、橈骨動脈などはほぼ同等とも言われています。これは全く同じ条件下で比較した場合はそうなのかもしれません。しかしながらこれは外科医のグラフト選択には有用であっても、リアルワールドでの開存率はグラフトの種類以上に、圧と血流の関係が大きく左右する場合もあります。すなわち狭窄度の強い病変血管にバイパスした方が流量が得られ、その血流量が多い方が長期の開存が期待できます。また、バイパスした血管の還流域が大きい方が大きな流量が得られ、これもまた長期開存が期待できる状態と言えます。

 さて、昨年から供血性心疾患の二次予防(冠動脈ステント挿入後や冠動脈バイパス術後の再発予防)のガイドラインが改訂され、より強力にLDL低下治療を実施されることが多くなり、実際に冠動脈プラークの退縮(リグレッション = Regression)が発生することが期待されています。冠動脈バイパス術後のTarget血管もこれによりプラークの退縮がおきた場合、Native(本来の血管)の血流が増えてバイパス血管が閉塞することが懸念されます。何例か冠動脈バイパス術後のグラフト閉塞または狭小化した症例で、冠動脈プラークのリグレッションが原因と思われる症例を最近数例証明しました。
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