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日本らしい自然と多様性 -身近な環境から考える-

2010年07月13日 21時24分56秒 | 
今年は国連の「国際生物多様性年」、そして10月には名古屋で生物多様性条約第10回締約国会議(cop10)も開催されます。これを機会に日本でも生物多様性に関する関心が高まり理解が深まるとよいですね。
生物多様性の理解には、まずは身近な自然を知ることが第一歩だと思います。

岩波ジュニア新書から、またまたよい本が出たので、紹介します。

      日本らしい自然と多様性  根本正之著
     

「1960年代まで日本各地に広がっていた手入れの行き届いた田畑や山林や集落の織りなす緑豊かな美しい田園風景は、今では人間と自然の不調和が目立つほどに荒れている。」
「昔の日本人誰もが田園で経験できた多様性に富んだ自然や生物たちを現在は経験することができない。人間も含めたごく一部の生物がわが世の春を謳歌する中で、ほかの多くの生き物が減少したり、絶滅の危機に追いやられている。」

江戸時代から1960年代までつづいてきた日本の豊かな田園風景は米生産を効率的に行うことだけを目的に推進された土地改良と機械化農業によって一変し、多くの生物がすみかを失いましたが、この時期は興味深いことに、日本人がキツネにだまされなくなった時期と重なります。この頃、日本人の「心」に大きな変化が生じたことは間違いないですね。

日本で「生物多様性」に関する正しい理解が進まない理由として著者は、多くの人が農業を経験したことがなくなり、雑草や野草の特性を知る必要がないこと、義務教育の現場で子供たちに昆虫や雑草の名前や生活史を教えていないこと、日本の自然特性から生まれた日本人の自然観などをあげています。
確かに、植物を単に「緑」と十把一絡げに捉えていたのでは、それぞれの生物相互作用も理解しようがありませんし、外来生物が侵入しても何の危機感を感じることがないでしょう。

NPOや行政が主体となり、里やまを昔ながらの管理により復活したり維持したりする取り組みが各地で行われていますが、このような方法でかろうじて伝統的な里やまの生物多様性を保全しても、日本の在来生物を国民誰もが身近に感じるようにすることは困難であると指摘し、秋の七草のような日本人が暮らしの中で親しんできた植物は必ずしも里やまのような伝統的な半自然生態系の中での保全にこだわらなくてもよいのではないかと述べています。具体的には植物の分布域内で他の目的で使われている半自然である大河川の堤防やゴルフ場をあげています。
河川堤防法面のチガヤ群落の入門コースで子供たちが草の名前や生態を知ったり草刈りのコツを身につけることにより、尾瀬の湿地などの原生自然の保護にも取り組みやすくなる。さらに持続的な管理が要求され、土地固有の歴史的、文化的背景がつきまとう里やまなどの上級コースの半自然生態系の保全につながると提言しています。

この他にも、色々参考になることが書かれているオススメの一冊です。

(目次)
はじめに 豊かな自然と出会った
1章 日本らしい自然ってどんなもの?
2章 美しいふるさとづくりの決め手
3章 日本人は自然をどのように利用したか
4章 多様性のエコロジー
5章 植物は人間の行為をどう受けとめたか
6章 半自然を再生して生物多様性をとりもどす


岩波ジュニア新書