ツイッターでの評判があまりに良いのでね。
だって、「傑作」という言葉があちこちでポンポン出てくる。
感想の熱がびしびし伝わってくる。
で、観てきました。
「この世界の片隅に」
戦時中の広島の話なので、辛い話だと思ってたけど、そんなに泣かなかった。
印象は明るくて、微笑ましくて、クスって笑うところもたくさんあった。
あまりの絶賛に期待値MAXで観るからハードル高かったですよ。
でも観終った素直な感動は人に伝えにくい。
昨日からどうやって感想を書こうかなぁって考えてたんですよね。
すずという18才の絵を描くのが好きな女の子が広島から呉に嫁ぎ、戦時下を暮していく物語。
朝ドラを半年観終ったようなボリューム感あるんですよ、たった2時間ちょっとの上映だったのに。
これはちょっと凄いことかもと思った。
主人公のすずはとてものんびりした女の子で、ゆったりと過ぎていく日常なのに、
展開はとてもリズミカルでテンポがいいの。
私たちと変わらない日常が普通に過ぎていくんだけど、それがとてもリアルで半年間かけて追いかけたくらいの実感を伴う。
すずが限りなくチャーミングで、のんさんの声がぴったりで、すず=のん そのものだった。
彼女の描く絵は彼女の観ている世界。
どんなに過酷で辛い世界も、すずの目を通すと暖かで優しいんですよね。
すずと対照的に描かれるのが、すずの夫の姉の徑子さん。
彼女はモダンガールで自由恋愛で結婚し夫婦で時計店を営んでいたが夫の死で実家に戻ってきた。
すずは名前も知らない男性のところに嫁いできた封建制度の古めかしい制度に従って生きる女性で、
この二人の関係も面白い。
最後は一生懸命生きていく二人とも思い入れて応援したくなる。
原爆で孤児となった女の子を風呂に入れようとみんなが大騒ぎしているときに徑子さんが、
娘の服を出してきて「着れるかしら」って呟く場面は涙しました。
この作品を「一次資料の塊」と評した記事があったけど、
ものすごく丁寧に時間をかけて作られているそうです。
たった数秒の街の風景も、現実にあった街並みを正確に再現し、
街を歩く人たちも現実に存在した方を描いていて、
戦艦大和が呉に入港した日の天気まで調べて反映させてるんだそうです。
玉音放送後に呉の街に韓国の旗があがってたんですよね。
なんでかなーって思ったんだけど、調べてみるとそういうところにもエピソードがあるんだろうな。
おばあさんが「傘を持ってきたか」と聞かれたら「新しいのを持ってきました」
って答えなさい、って教えた話が謎だったので調べてみたら、
新婚初夜の合言葉みたいなものなんだって。
初めて知ったわ。
結婚式にお初にお目にかかります、っていう時代だからこその話なんでしょうかね。
この世界の片隅に 2016年 ☆☆☆☆☆
監督:片渕須直
1944年広島。18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。