新年初回に観るにしてはちょっと重い映画でしたけど、いい映画でした。
10年前に起きた金融危機で、それまで払っていた住宅ローンが無になり借家住まいが続いている一家。
お父さんはいろんな仕事をしながら一家を支えてきた、どこにでもいる我が家となんら変わらない普通の家庭なんですよね。
マイホームを持とうと一生懸命に働いているだけなのに、ぎりぎりの生活から抜け出せないどころか、どんどん身動きが取れなくなってくる毎日。
あぁ、こんなに生きるのってしんどいの?
働き者のお父さんと、介護ヘルパーとして働く優しいお母さんと、息子と娘がいて、なんでこんなにギューギューと苦しくなるの?
ひたすらそういう映画です。
お父さんは新規一転、フランチャイズの権利を買い、宅配ドライバー業を始めるんだけど、
個人事業です、あなたの頑張りで仕事も大きく展開できます、という契約だったのに、
実際はノルマに縛られ、搾取され、休むこともできずに、家族がバラバラになってく。
親がぎりぎりでいると子供も影響されるんですよね。
なんかもう、そこが身につまされて辛くて堪らなかった。
父親は好きだけど、人生のロールモデルとしてそういうあんなふうになりたくないって思うのは、そんなこと言われる親も辛いけど、子供だってさらに辛い。
でもさ、お母さんがひたすら優しい人で、あんな優しいお母さんを悲しませたりしたくないよね、ほんと。
ケンローチ監督、御年83才、お名前は聞いたことあったけど初見です。
労働者階級や移民や、弱い立場の方たちの暮らしを一貫して描いてきた監督さんだそうです。
原題は「Sorry we missed you」
宅配の不在票に書かれた「お届けにうかがいましたがご不在でした」という慣用句的な表現だそうです。
と、同時に「あなた方を見逃していてごめんなさい」という意味もあって、
必死に生きている市井の人々を見逃してはいけないということなのかな。
素敵なタイトルだけど、そのまま邦題に使いにくかったんでしょうね。
あなたたち、家族そろって天中殺なの?ってくらいに悲惨なことばかりが起きるんですけど、
でも根底にあるのが家族を愛していることで、子供たちを愛している両親がいるので
重いけど、でもあったかい気持ちで観てました。
最後も行く先を明確に示してはくれてないけれど、
そうやって家族で助け合っていけば、きっと将来はいいことがあるはず!!!
、、と信じたいラストでした。
ケンローチ監督の「わたしはダニエル・ブレイク」「麦の穂をゆらす風」 是非是非観たいと思います。
家族を想うとき(原題:Sorry we missed you) 2019年 ☆☆☆☆☆
監督:ケン・ローチ
出演:クリス・ヒッチェン、デビー・ハニーウッド、リス・ストーン、ケイティ・プロクター
マイホームを持ちたいと考えている父のリッキーは、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立する。母のアビーは、介護士として働いていた。夫婦は家族の幸せのために働く一方で子供たちと一緒に居る時間は少なくなり、高校生のセブと小学生のライザ・ジェーンはさみしさを募らせていた。ある日、リッキーが事件に巻き込まれる。