なかなかの衝撃作でした。
LGBTの話ではあるけれど、それだけではない、観終わった後いろんな話をしたくなる。
バレリーナの話であることがいいなぁっ思った。
凪沙はニューハーフショーでバレエを踊っている。いわゆる、、なんていうか芸術性とは違うというか、、(言葉を選ぶ)
だから真夜中の白鳥なんだけど、でも本当は誰にでも綺麗って言われる白鳥になりたかったんだよね。
そこに、親戚の子で類まれなバレエの才能を持つ一果が登場する。
そこの対比の面白さよね。
でもなんといっても特筆は、親や親せきにも自分のトランスジェンダーをひた隠しにして生きてきた凪沙の孤独。
この作品はそれに尽きる。
望まなくても夜の世界しか彼女の生きる場所はなかった。
望まない性で生まれ、生業も選べない、「どうして私だけ、、」って泣きたくもなるよね。
閉塞だらけで生きてきた一果が言葉を出せずに自らの腕に噛みついた姿を見た瞬間に、自分を感じたんでしょうね。
二人が寄り添って暮らす姿につかの間ホッとしました。
母性というキーワードが使われるけど、私的にはちょっと印象は違う。
一果はネグレクトで実母に見放されたかというとそうではない気がするし、実母に対して凪沙が母になりたいと思ったかというとそれも違う気がする。
外国特派員協会の記者会見で草なぎくんが「何かを育てることは男性も女性も変わらない」と答えていたけれど、それが一番しっくりくる。
一果に自分の夢を重ねたのは間違いないだろうし、それが彼女の幸せだと信じてたんだと思う。
性転換手術とその後がリアルだったので驚いたけれど、生田斗真くんが演じた
『彼らが本気で編むときは、』を観たときに、手術後のケアのことを知って、なるほど大変なんだと思った記憶があるけれど、それはもう生半可なことじゃない。
最初の場面とラストが対になってるのよね、凪沙の命が一果に継承されてる。
生きた証ってそういうことかもしれないと、切なく、悲しく、凪沙を思ったラストでした。
ただラストのシーンは凪沙に見守って欲しかった。
親友の時もそうだったように、一果は感の鋭い子だからその姿を絶対に感じてたよね。
ミッドナイトスワン 2020年 ☆☆☆☆☆
監督:内田英治
出演:草なぎ剛、服部樹咲、 水川あさみ、田口トモロヲ、真飛聖
新宿のニューハーフショークラブのステージに立っては金を稼ぐトランスジェンダーの凪沙(草なぎ剛)は、養育費を当て込んで育児放棄された少女・一果を預かる。セクシャルマイノリティーとして生きてきた凪沙は、社会の片隅に追いやられる毎日を送ってきた一果と接するうちに、今まで抱いたことのない感情が生まれていることに気付く。