ハリソン君の素晴らしいブログZ

新旧の刑事ドラマを中心に素晴らしい作品をご紹介する、実に素晴らしいブログです。

『刑事貴族』#02

2019-03-04 12:00:24 | 刑事ドラマ'90年代









 
『もっとあぶない刑事』から『ゴリラ/警視庁捜査第8班』そしてこの『刑事貴族』、さらに『代表取締役刑事』『愛しの刑事』と、あのころ実に5つの番組で、ほとんど立て続けに刑事を演じてた、人呼んで「全身刑事マシーン」の舘ひろしさん。

私としては、人情系に走っちゃった後半の2作には興味が無いもんで、『あぶない刑事』『ゴリラ』『刑事貴族』を「舘ひろし刑事アクション三部作」と呼びたいところです。

特に『刑事貴族』は、舘さん御本人が「一番のお気に入り」と公言されてました。当時40歳になられたばかりで、刑事役が最もサマになる年齢(と私は思う)だし、まさに舘ひろしアクション刑事ドラマの代表作、また集大成とも言えましょう。


☆第2話『その時 銃弾がワナを射抜いた』

(1990.4.27.OA/脚本=柏原寛司/監督=木下 亮)

覚醒剤密造組織アジトへの突入を前に、牧刑事(舘ひろし)の傍らで溜め息をつく泉刑事(布施 博)。

「仕事の前に溜め息なんかつくなよ」

「たまには溜め息つきたくなる時もあるんスよ、俺だって」

「オンナか」

「誕生日だったんスよ、彼女。牧さん、責任取って下さいよ」

「これから誕生日迎えるオンナ紹介してやる」

『あぶデカ』の流れを汲んだ、キザな(?)台詞の応酬。演じるのが舘ひろしでなければ成立しませんw いや、それも相手が柴田恭兵でなければ、どうしても歯が浮いちゃう。恭兵さんの軽さがあればこそ、言葉遊びにリアリティが生まれるんですよね。

アジト急襲に成功し、大量の覚醒剤を押収する代官署刑事課チーム。そこで牧刑事がまた、渋~く一言キメちゃいます。

「こいつはほんのオードブルだ。メインコースはこれからだ」

初めて観た人は、やっぱ歯が浮いちゃうだろうと思いますw けど、この感じにも徐々に慣れて行きますw

『あぶデカ』では冗談半分にやってたキザな台詞の応酬を、この『刑事貴族(舘ひろし編)』では徹底して大真面目にやってる。ある種のチャレンジですよね。日本で果たして正統派のハードボイルドが成立するのか?っていう。その答えは観た人の感じ方次第でしょうが、私はギリギリ成立してたように思います。

牧刑事とオトナの関係を匂わせる志村刑事(黒木 瞳)、職人刑事の味わいが光る武田刑事(地井武男)、そして器の大きさが全身から滲み出る宮本課長(松方弘樹)と、いずれもハードボイルドの名に恥じないキャラクターが揃ってました。新米の岩田刑事(布川敏和)はまぁ、シブがき隊って事でw それでも『ゴリラ』の谷川 竜よりはマシでしたw

この第2話は、覚醒剤組織の幹部役に錦野 旦、スナイパー役に遠藤憲一と、悪役ゲスト陣にもハードボイルドな顔が揃ってました。舘・錦野・遠藤で爬虫類トリオですよねw

それと、牧刑事の愛車=ムスタングの存在感。最初からボロボロにしてあるだけに、扱い方も実に手荒くて素晴らしい!w あんなスタイリッシュな車が狭い街中を飛ばしまくるチェイスシーンは、本当にカッコイイし爽快だし、何より作品に躍動感を与えてくれます。

舘さんの前作『ゴリラ』がイマイチだったのは、主役の刑事たちがスポンサー(マツダ)の高級車を、ぶつけないよう傷つけないよう気を遣いながら、後生大事に乗ってた事も原因の1つでしょう。

車だけじゃなくて、刑事たち自身も『ゴリラ』はあんまり走ってなかった印象があります。『あぶデカ』と『貴族』の刑事たちは、実によく走ってました。

アクションドラマに最も必要なのは、派手さじゃなくて躍動感です。その点において『あぶデカ』『貴族』にはケチのつけようがありません。

躍動感と言えば、スナイパー役の遠藤憲一さんも、出番こそ少ない(せっかくのワニ顔もあんまり映らないw)けど、舘さん相手の銃撃戦では実にシャープな身のこなしを披露されてます。

ストーリーは、代官署vs覚醒剤組織のハードな攻防戦を縦軸に、レギュラー刑事全員のアクティブな活躍をそつなく描き、牧刑事の情報屋(片岡弘貴)がピンチに陥るドラマも織り交ぜた、一切ダレ場の無い素晴らしい内容になってます。

やっぱり、最初の『刑事貴族』は良いですね。郷ひろみシリーズも悪くはないし、水谷 豊シリーズも楽しいんだけど、私は誰が何と言おうと舘ひろしシリーズを強く推します。さっさとDVD化して下さい。

なお、紅一点の黒木瞳さんは当時30歳。宝塚歌劇団の娘役スター出身で、’86年に映画『化身』、およびNHKの朝ドラ『都の風』出演でブレイク。その朝ドラでは『ゴリラ』の紅一点=加納みゆきさんと姉妹役で共演されてます。

刑事役だからと言って肩肘張らず、普通のアラサー女子が警察という職場で働いてるだけ、みたいなスタンスで演じておられるのが、当時とても新鮮でした。

好き嫌いが岐れる女優さんかと思いますが、私は好きです。だって可愛いからw
 
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『刑事貴族(舘ひろし編)』1990

2019-03-04 00:00:12 | 刑事ドラマ HISTORY







 
日本テレビ&東宝の制作による『刑事貴族』は1990年の4月から翌年3月まで、全37話が放映されました。が、舘ひろし主演によるシリーズは最初の16話のみ(’90年の9月まで)。

本来なら舘さんで最低半年は続ける予定だったと思われますが、石原プロモーションが自社制作の人情路線『代表取締役刑事』(テレビ朝日系列)に主演させる為、強引に降板させたという裏事情があった模様です。

他局の番組に主役を奪われた『刑事貴族』は、仕方なく舘ひろしに似た名前の(?)郷ひろみを主演に迎え、うまく継続させた後は水谷 豊 主演による新シリーズ『刑事貴族2』『刑事貴族3』をヒットさせ、最終的には’92年12月まで2年半に及ぶロングランを果たす事になります。

放映枠が金曜夜8時で、正統派の集団刑事ドラマという内容、キャストの配置やスタッフの顔ぶれから見ても、この番組は『太陽にほえろ!』の伝統をストレートに受け継いだ最後のTVシリーズと言えましょう。

ボスのポジションに松方弘樹(宮本課長)、山さんプラス長さん……ていうかトシさんwのポジションに地井武男(武田巡査部長)、そしてゴリさんが布施 博(泉刑事)、シンコが黒木 瞳(志村刑事)、マカロニが布川敏和(岩田刑事)。となると、舘さん扮する牧 俊介は(キャラは全然違うけど)殿下のポジションになります。何しろ「貴族」ですから。

「俊介」って名前が石原裕次郎さん演じる『太陽~』のボス(藤堂俊介)と同じである事からも、この新宿・代官署刑事課のメンバーが七曲署捜査第一係(の初期メンバー)をモデルにして構成されたのは、まず間違いないだろうと思います。

ただし、中心となるのは『太陽~』みたいに新人刑事ではなく、中堅で一匹狼キャラの牧刑事=舘さんですから、よりアダルトでハードボイルドな世界観が売りになってました。

それに伴い『あぶない刑事』や『ゴリラ/警視庁捜査第8班』で見せた軽いノリは封印し、ファッションショーみたいなダブルスーツや『西部警察』から続けて来た2丁拳銃スタイルも廃止、腰のホルスターにコルト・ガバメント1丁という、如何にも舘さんらしい「形から入る」役作りでw、それまでの刑事役とはひと味違ったキャラクターを構築されてました。

舘ひろしのトレードマークとも言えるバイクにも乗らず、傷だらけでボコボコに凹んだムスタングを乗り回すという凝りように、舘さんのこのドラマに賭ける意気込みが感じられます。

実際、後のインタビューで舘さんは、数ある刑事ドラマ出演作の中でも一番のお気に入りは『刑事貴族』だと明言されてます。コメディや人情路線は自分のキャラに合ってないって事を、当時から自覚されてたみたいですね。

そんな舘さんの個性を最大限に活かしつつ、厳しくも温かいボスの下でハミダシ刑事達が活躍する、刑事ドラマの原点に立ち帰った作風で『刑事貴族』はスタートしました。

松方弘樹さんは「裕次郎さんの役だと聞いたから」この番組の出演依頼をOKされたそうでw、確かに出番が少ない割にラストカットは必ずボスのストップモーションで終わるという、裕次郎さんの黄金パターンをしっかり踏襲されてました。

ただ、私個人としては、松方さんのボス役にはちょっと違和感を感じてました。裕次郎さんや渡 哲也さんには何となく少年の面影が残ってたのに対して、松方さんには大人のいやらしさが充満してる気がして……w

地井武男さんは『太陽にほえろ!』で担った役割をそのまま継続したような形だけど、今回は「タケさん」って呼び名に象徴されるように、地井さん御本人のキャラが色濃く反映されてるように感じました。

『太陽~』のトシさんはあくまでストイックな二枚目だったけど、タケさんはやたら口うるさかったりドジな面もあったり、シリーズが進むにつれて若手からイジられるようにもなり、より人間臭いキャラクターになってました。

布施博さん演じる泉刑事は、猪突猛進型の純情キャラで、若手のリーダーっていうポジションのみならず、キャラクターも『太陽~』のゴリさんを忠実に継承されてました。

私は『刑事貴族』シリーズの中で、この舘ひろし編が一番好きなんだけど、それは舘さんのクールさと布施さんの熱血さが、絶妙なバランスで互いを引き立て合ってるからだと思います。

郷ひろみさんはクールさが中途半端だったし、水谷豊さんのシリーズに至っては、まだまだ若い水谷さんの熱さに若手メンバー全員が引っ張られて、熱血一色になっちゃった。別に熱血が嫌いなワケじゃないけど、チームがそれ一色になっちゃうのは面白くない。コントラストがあって、色んな個性がぶつかり合う方が絶対面白いと私は思います。

最初のシリーズは舘さんのカラーに染まり過ぎてるってよく言われるけど、水谷さんのシリーズよりはよっぽど多彩と言えたんじゃないでしょうか? 中でも布施さんの存在は大きかった筈です。

黒木瞳さんも、従来の刑事ドラマにおける紅一点とは一線を画した存在感で、舘カラーにも布施カラーにも負けない、鮮やかな色を番組に添えておられました。

舘さんとお互い異性を意識しながら、進展しそうでしない微妙な関係性もドラマの彩りになってました。石原プロのせいで舘さんの殉職時期が早くなり、急いで2人の距離を縮める羽目になったのは残念でした。

新人刑事枠の布川さんは、ぶっちゃけ演技が下手でしたねw だけど、格好つけずに真っ直ぐな芝居をされてたのは良かったと思います。チームの足を引っ張りまくるドジっぷりには、ちょっとイライラしましたけどねw まるでマイコン刑事みたいな扱われ方で、よくジャニーズ事務所からクレームが入らなかったもんですw

あと、捜査課には「松野」と「北見」っていう中途半端イケメンの若手刑事がいるんだけど、なぜかこの2人はロクに台詞も与えられず、そこに「いるだけ」なんですよね。何も喋らないのに、いつも主役メンバー達の横に立ってるこの2人が、私は不憫に思えてなりませんでした。この演出だけは不思議でしたねぇ。『刑事貴族』シリーズ最大の謎です。演じた役者さん達、今はどうされてるんだろう……

それはともかく『刑事貴族』は、世の刑事ドラマがおしなべて人情路線に走っていく中、唯一のフィルム撮りアクションドラマとして、よくぞ最後まで奮闘してくれました。素晴らしい!

『西部警察』みたいに派手な爆破やカークラッシュは無いし、『あぶない刑事』ほどバカスカ撃ちまくらないけど、その分リアルさにこだわったガンアクションは見応えあるし、とても格好良かったです。

知り合いの『あぶデカ』ファンは「マジメ過ぎて面白くない」みたいなこと言ってたけど、オチャラケが過ぎて緊張感が無くなっちゃうより、よっぽど良いんじゃないかと私は思います。

この『刑事貴族』、なぜか『3』からDVD化されて後から『2』も発売されたけど、今のところ(2019年3月現在)舘&郷のオリジナルシリーズだけ商品化される気配がまったく無いんですよね。

『相棒』人気にあやかって水谷さん(と寺脇康文さんも出てる)シリーズなら商売になるって事なんでしょうけど、本当の『刑事貴族』は、この舘ひろし編だと私は思ってます。郷さんはまぁ、Go!Go!って事でw

DVD-BOXを買うほど思い入れがあるかどうかは微妙だけど、水谷さんシリーズが発売されて舘さんシリーズが無視されてるのは、刑事ドラマファンとして納得がいきません。是非とも、早急にDVDを焼いて頂きたいと思います。
 
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