☆第9話『必殺!青きドラゴン』
(1975.5.30.OA/脚本=長坂秀佳&甲幸司/監督=田中秀夫)
10人近い若者グループによる金庫破りが多発し、彼らが武道に精通していることから、ゴリラ7は住み込みの未成年男子たちに武術鍛練を行う謎の施設「青雲寮」に眼をつけ、最年少でカラテの使い手であるミチ(志穂美悦子)を男装のうえ潜入させます。
男子にしては声が異常に高いワケだけどw、タッパがあってやたら喧嘩の強いミチは、みごとに青雲寮の面々を欺きます。
「お前、なぜ脱がぬ? 脱げっ!」
「え……でも……」
「家の中では帽子を脱ぐんだ! 常識だろう!」
……というようなピンチ(?)も切り抜け、集団入浴という修羅場も何とか誤魔化したミチだけど、寮生の中でも最年少の家出少年=ケンイチ(下沢宏之)に着替えを目撃されちゃいます。
だけど「黙っててあげるよ」と言う優しいケンイチと仲良くなったミチは、彼に色々と教わりながら青雲寮の活動に参加するうち、その組織の正体を知る事になります。
寮生たちは武道を教わりながら日々ボランティア活動に勤しみ、どうやら金庫破りも「日本の未来を守るため」に悪徳業者の資金を没収する、慈善事業の一環なんだと思い込まされ……つまり強欲な経営者たちに洗脳されてるのでした。
ミチはその事実を風見(千葉真一)らに報告しつつ、ゴリラ7が踏み込む前に少年たちを説得すべく、自ら正体を明かします。
「みんなは確かにいい事もしてるわ。でも若さはどこにあるの? 確かに立派なところもある。でも同じ気持ちで泥棒もやってるのよ?」
「泥棒だと!?」
「堅苦しくはない? 窮屈じゃない? 若さっていうのは、自分の考え通りに、思いっきり行動することよ!」
「やってるよ、そんなことは!」
「違うわ。知らない間に、誰かの考えを押し付けられてるのよ。ここでは自由にお喋り出来ないのはなぜ? 自由に辞められないのはなぜ? この中に恋人がいる人いる? ガールフレンドを持ってる人いる?」
「…………」
「もっと楽しくやるのが若さよ! 喋りたい時は喋る。デートしたい時にはデートする。踊りたい時には踊る!」
そう言ってミチは、柔道着姿のままゴーゴーを踊って見せますw
「さぁ、踊りましょ? みんな、踊るのよ! 自分の心はどこへ行っちゃったの!?」
いかにも'70年代らしい青春ドラマ演出にはちょっと笑っちゃうけど、ミチが言ってることは的を得てるし、後のオウム真理教やイスラム国問題にも通じるメッセージには心を揺さぶられます。
その甲斐あって少年たちは目覚め、駆けつけたゴリラ7と力を合わせて悪い大人たちをやっつけるのでした。
通常はアメリカ製アクションドラマ『スパイ大作戦(MISSION:IMPOSSIBLE)』やフランス映画の怪盗モノみたいな話が多い『ザ・ゴリラ7』ですが、今回は最年少のミチ=志穂美悦子さんが主役ということで、青春ドラマテイストのカラテ・アクション編となりました。
冒頭、格闘技に精通するには日々の鍛練が必要であることを説明する為に、わざわざ千葉真一さんが弟=矢吹二朗さんと志穂美さんを相手にスパーリングしたり、青雲寮のシーンではミチVSケンイチの回し蹴り対決まで見せてくれる大サービスぶり。
たかが少年相手と見くびるべからず。ケンイチを演じた下沢宏之さん(画像5枚目)は、後に「真田広之」と改名して日本アクション映画界のエースとなり、ハリウッドに拠点を移してジャッキー・チェンと対決する事にもなる、あのお方なんです。
当時14歳で、さすがに幼すぎてスターのオーラは感じられないけど、純朴なお人柄は伝わって来るし、動けばやっぱりシャープだし、何より志穂美悦子VS真田広之のカードが(テレビ番組ゆえ)タダで見られるという贅沢さは、アクション映画ファンならずとも垂涎モノかと思います。
さらに今回は夏八木 勲さんも華麗な格闘アクションを披露。千葉さんと共演の多い夏八木さんは公私共に仲が良かったそうで、普段からJACに出入りしてアクションを練習されてたんだそうです。
アクションはアクションでも、一流スターたちが自ら演じるアクションには格別の価値があります。こんなフィルムを毎週、しつこいようですが「タダで見られた」という夢のような時代。ほんと素晴らしい!の一言に尽きます。